インタビューもホームユーステストもAIも。生活者調査に必要な手段が揃うユニーリサーチ、アサヒグループ食品「AGS+ON」での実践
アサヒグループ食品株式会社は、粉ミルクやベビーフード、菓子、健康食品、フリーズドライ、介護・シニア向け商品など、赤ちゃんからシニアまで幅広い世代に向けた商品を展開する食品メーカーです。長期ビジョン「私たちは『おいしさ+α』を追求し、『心とからだの健やかさ』の実現に貢献する企業を目指します」の実現に向けた取り組みを進めています。
同社のビジョンを新規事業の側面から支えているのが、2023年に始まった事業創出プログラム「AGS+ON(エジソン)」です。アイデア公募だけではなく、顧客課題の検証からソリューション仮説の検証まで、段階的に事業案を育てていく設計が特徴です。
新規事業の検証には、フェーズごとに異なる手段が必要です。「AGS+ON」では、ユニーリサーチのオンラインインタビュー、アンケート、ホームユーステスト、そしてAIインタビューも取り入れながら、その時々で必要な検証手段を採用してきました。今回は、事務局の塚原 春香さんと、3期目起案者の長野 千勢さんに、それぞれの活用法について伺いました。
※本記事の内容は取材日2026年7月28日時点のものとなっています
"飛び地"の新規事業創出を目指す「AGS+ON」、初年度からユニーリサーチを導入
― 新規事業創出プログラム「AGS+ON」について教えてください。
塚原さん: 「AGS+ON」は、当社の次の事業の柱を生み出すための新規事業創出プログラムです。2023年に初めて実施し、今年で4期目を迎えました。書類選考を通過したチームは、複数回の審査(ゲート)を経ながら、顧客課題の検証、ソリューション仮説の検証、事業性の検証と、段階を踏んで事業化を目指していく設計です。アイデア募集だけではなく、実証実験を重ねながら事業案を育てる仕組みになっています。
当社は赤ちゃんからシニア層にむけた幅広い商品群を展開していますが、新規事業においては、既存事業から一歩離れた"飛び地"を目指す必要があります。長期ビジョンに掲げる「おいしさ+α」の「+α」をどこに見出すかを考えたとき、「AGS+ON」のコンセプトは当社のビジョン実現にも貢献できると考えています。
長期戦略事業企画部でAGS+ONの事務局を担当する塚原 春香さん― ユニーリサーチはどのような経緯で導入されたのでしょうか。
塚原さん: 新規事業では、生活者の声を聞くことが非常に重要です。ユニーリサーチは、「AGS+ON」の初年度から導入しています。新規事業支援会社からの紹介がきっかけでした。特に書類審査を通過してから次の審査までの期間が短い中で、なるべく早くターゲットとなる生活者にインタビューできる環境を整えたいという狙いがありました。費用を抑えながら、チーム自身の手で手軽にインタビューを実施できる点も、魅力に感じました。
見つかりにくい対象者も、話しにくかった本音も。ユニーリサーチが埋めた2つの隙間
― 実際にユニーリサーチを活用されて、いかがでしょうか。
長野さん: 私の事業案では、当初、社内でヒアリング先を探すつもりでした。しかし、案件の性質上、対象となりうる方が社内には数名しか見つかりませんでした。そこでユニーリサーチで募集したところ、あっという間に必要な人数が集まりました。
実際のヒアリング結果は、審査の場でも大きな説得材料になりました。課題を抱えている方が確かに存在し、悩みを持っているということを、自分の言葉で伝えられたからです。社内で聞くよりも信憑性がありますし、本当に困っている方の声を聞けたことで「事業案には価値がある」という手応えを得られました。
AGS+ON第3期で事業案を起案した長野 千勢さん塚原さん: テーマによっては、社内相手だと話しづらい内容もあります。ユニーリサーチであれば匿名性がある分、対象者の方が本音を話しやすいというメリットもあると思います。
プロトタイプ検証を後押ししたホームユーステスト。低コスト・低負担で実現
― ホームユーステストは、どんな場面で活用されたのでしょうか。
塚原さん: プロトタイプ検証のフェーズで活用しました。
あるチームでは、機能性食品の開発を目指し、数ヶ月にわたって試食を続けてもらう調査を実施しました。効果実感や実際の変化、継続意向などを確認する狙いでした。
他の調査会社に依頼すると費用も時間もかかります。プログラムの期間も予算も限られている中で、自分たちで調査設計から実施まで完結できる点は、大きな助けになったと聞いています。操作性もシンプルで、実施のハードルは低かったようです。
定量的な集計だけでは説得力に欠ける部分を、実際に使った方の生の声で補える点は、ホームユーステストならではの価値だと感じています。低コスト・低負担で実施できる方法があってよかった。今後はもっと活用していきたいと考えています。
試作品の利用や試食といったPoCも低コスト・短期間で実現「10点満点中9点」。AIインタビューで20名へのインタビューを1日で実施
― AIインタビューは、通常のオンラインインタビューと比べてどのような違いがあると思いますか。
長野さん: オンラインインタビューでは、応募自体はすぐに集まります。ただ、そこから課題感が深い方を見極める作業に時間がかかっていました。また、当社チームメンバーの空き時間を合わせてインタビューを実施すること自体に手間がかかっていました。
AIインタビューは、スクリーニングから日程調整までを自動で進めてくれるため、そうした調整の手間から解放される点が非常に大きかったです。実際、20名へのインタビュー調査が1日で完了しました。事前に設問を設計してターゲットを絞り込んでくれる点もあわせて、10点満点でいえば9点と言えるくらいありがたいです。
― 9点とのことですが、残り1点はどのような点でしょうか。
長野さん: 質問設計をAIに任せる機能(AI設問作成)は、短時間でたたき台として十分なクオリティのものを作ってくれる点でかなり助かっています。しかし、最初の指示が大まかだったこともあり、設問の個数やシナリオなどは手元で調整する部分もありました。慣れていけば精度が上がっていくと思うので、その伸びしろも込みでの9点、という感覚です。
― 回答集計の機能については、いかがでしたか?
長野さん: 発話内容が文章で要約されているので、要点がパッと頭に入ってきます。各項目ごとにも発話ボリュームがグラフ化されていて、一目瞭然。一件ずつ発話を読み込まなくても、全体傾向を素早くつかめ、示唆を得られます。細かく見ると整理が必要な部分はありますが、大変便利だと感じています。
AIによる回答結果の自動要約・集計機能検証を重ね、事業化へ。「AGS+ON」とユニーリサーチが描くこれから
― 事務局として、ユニーリサーチの活用をどのように評価していますか。
塚原さん: 起案チームの伴走をしていて感じるのは、課題感が深いテーマほど対象となる人数は少なくなる、ということです。それでもユニーリサーチで募集をかければすぐに対象者が集まり、その日のうちにインタビューを実施できることもあります。仮説が違うと分かればすぐに検証をやり直せる点も、非常にありがたいと感じています。
書類審査を通過したチームにとって、一般生活者に会いに行くこと自体がハードルに感じられる場合も少なくありません。ユニーリサーチを事務局から紹介することで、最初の一歩を踏み出しやすくなっていると思います。また、個人情報を自分たちで管理する必要がない点も、起案者の負担軽減という意味で大きいと感じています。
― 「AGS+ON」の今後の展望について教えてください。
塚原さん: 新規事業においては、生活者が抱える課題が本当に存在するのか、お金を払ってでも解決したいと思えるものなのか、その検証の重要性を年々強く感じています。
事務局としては、起案者が生活者と向き合いながら、事業開発に集中できる環境を整え続けたいと考えています。そして制度自体もブラッシュアップを続け、新たな価値創出につなげていきたいです。現業を抱えながら活動する起案者にとって、リサーチにかかる負担をどう軽減できるかは大きなテーマ。AIインタビューも手段の一つとして、大きな負担軽減につながることを期待しています。
「AGS+ON」発の事業化を実現し、既存事業を上回る成果を残せるチームが出てくることを後押ししていきたいです。



