リサーチ期間は半分に、改善サイクルが高速化。定量×定性調査のUXリサーチで顧客インサイトを探る
結婚式や引越しなど、ライフイベントに寄り添ったWEBサービスを提供する株式会社エイチームライフデザイン。
同社は、これまで強みとしてきた定量分析にユーザーインタビューを掛け合わせることで、新サービスの開発や既存事業の改善に力を入れています。
「顧客体験向上のため、UXリサーチを企業文化として根付かせたい」と話すのは、次世代ライサポサービス研究開発部所属の村上奈緒美さん。研究開発部では、40人以上のユーザーインタビューをuniiリサーチにて実施されています。uniiリサーチを継続いただいている理由や、インタビューのコツをお伺いしました。
全社でのUXリサーチ普及プロジェクトを担う、次世代ライサポサービス研究開発部
― 最初に、村上さんのお仕事内容を教えてください。
所属する次世代ライサポサービス研究開発部では、当社サービス全体の顧客体験向上をミッションに、既存事業の改善提案や、新サービス開発のための研究を行っています。また、私自身は、エイチームライフデザイン全体にUXリサーチを広める部署横断プロジェクトも担当しています。
― UXリサーチに力を入れる理由を教えてください。
当社はWEBマーケティングに強みを持ち、「引越し侍」など業界をリードするサービスを提供してきました。しかし、さまざまな選択肢が増える中でも、お客様に選ばれ続け、長くご利用いただけるサービスであるためには、サービス横断で顧客体験を高め続ける必要があります。UXリサーチは、お客様のインサイトをより深く理解するための手法として取り入れました。
定量分析 → 定性分析 → プロダクト改善 → 定量分析のサイクルを高速で
― どのようにUXリサーチを推進しているのでしょうか?
“定量分析が得意なマーケティング会社”という当社の強みに、ユーザーインタビューをはじめとした定性調査のメリットを掛け合わせることで、お客様ニーズを立体的に捉えるようにしています。
― 定性調査のメリットはどんなところでしょうか?
社内メンバーの仮説だけで進めていくと、失敗に気づかない場合があります。一次情報としてのユーザーの声を直に聞き、ご意見を軸に議論することで、定量データだけでは測れない課題の本質や改善ポイントを発見できるのは魅力だと思います。
― 具体的には定量調査と定性調査を、どのように使い分けていますか?
まだトライ中の部分もありますが、定量調査で仮説を構築し、その要因分析や裏付けを、定性調査を通して行う。そしてインタビューで発見した課題を改善し、その評価をまた調査で把握する、といったサイクルを回すことができたら、理想だと思います。
導入前は自社メディアでリクルーティング。課題は「集客」と「ユーザーの偏り」
―uniiリサーチ導入以前、どのようにインタビューユーザーを募集されていたのでしょうか?
主に、①社内のスタッフでテスト②自社サイトに「アンケート募集」のお知らせを掲示③会員様向けのメールでアンケート募集といった、3つの方法でリクルーティングしていました。
―その際、課題に感じていたことはありましたか?
まず、社内スタッフですと、依頼自体は手軽でハードルが低い反面、自社サービスを使い慣れているので意見の偏りが発生してしまいます。案件によっては、リアルなユーザーの意見を聞いた方が良い、という判断になります。
一番多かったのは、②自社サイトに「アンケート募集」のお知らせ掲示、のパターンです。しかし、こちらも「自社サイトユーザー」というバイアスによりフラットな調査を行うことに課題がありました。また、案件によっては必要な対象者数が集まらない、もしくは実際にお会いしてみたら対象者ではなかった...という場面も多々ありました。
会員様向けのメール募集は、謝礼金をチューニングするなどの工夫は行なっていましたが、歩留まりも悪く、なかなか必要な数を集めることが難しかったです。
―uniiリサーチ導入の経緯を教えてください。他のサービスも検討されましたか?
新規サービスの開発にあたって、自社サイトや会員からの集客だと難しいということになり、外部のリクルーティングサービスを探し、uniiリサーチを見つけました。
インタビューのモデレートまで依頼できる調査会社も検討しましたが、コスト面と、もともと自社でインタビューをしていたので、集客のみ低コストで依頼できるサービスの方が当社には合っていました。外部に全てお願いしてしまうと、社内ナレッジが蓄積されないので。
気軽な気持ちで始めたのですが、初回からuniiリサーチの満足度は高く、気づけば40人以上のリサーチを実施してきました。
募集翌日には20人以上の応募 リサーチ期間も1ヶ月から2週間に短縮
―ありがとうございます!uniiリサーチを継続いただけているポイントはどこにあるのでしょうか?
事業分野に関わらず、ややニッチな内容でもたくさんのモニタの方に応募いただけるのが一番ありがたいですね。当社はライフイベントに関わる多様な事業を展開しているのですが、共通のプラットフォームでリサーチを行えるのは便利です。
集客力のほかには、スピードにも満足しています。
1回のリサーチでは、5人くらいの方にインタビューしているのですが、自社集客だと、2週間かかってしまうところ、uniiリサーチでは募集した次の日には、多いと条件にマッチする20〜30人くらいの方が集まっています。
リサーチにかかる期間は、以前は1ヶ月かかっていましたが、今は2週間程度で完了しています。1週間でリサーチ、改善してまたリサーチ、といった形でスプリント開発を進めることができています。
―uniiリサーチのモニタの印象はいかがでしょうか?
オンラインインタビューに慣れている方が多い印象で、お話が聞きやすいです。自社集客をしていた際は、オンラインMTGツールに慣れていない方も多く、接続までの説明に時間かかることもありました。スムーズに本題に入れるのは助かりますね。
表面的な言葉の裏に隠れた、ユーザーのインサイトを深掘るには?
―インタビューの際に心掛けていることを教えてください。
「なぜ?」を繰り返して、ユーザーのインサイトを探るようにしています。
実際に言葉で話されていることの裏側には、深く聞いてみないと気づけない、意外なインサイトが隠れていることがあります。喜んでいただけるプロダクトを作るためには、言葉をそのまま受け取るのではなく、課題の本質を吸い上げることが重要です。
―なるほど。しかし、実際にはかなりコツがいるかとも思います。インタビュースキルのトレーニングなどを実施しているのでしょうか?
トレーニングとしては、先輩のインタビューに同席させていただいたり、インタビュー動画をチームで振り返り、どうすればさらに深掘りできるのかをフィードバックしあったりと、日々効果の出るやり方を模索しています。
最初はみんな素人です。私も最初はダメダメでしたが、場数を踏んでようやくこなせるようになりました。uniiリサーチでは、1回のリサーチにかかる期間が短く、たくさんの経験を積めるので、自分自身の修行にもなりましたね。
UXカルチャー根付かせるためにも、社内をうまく巻き込むことが必要
―インタビュー結果はどのようにアウトプットすると良いでしょうか?
インタビュー後はすぐにチームで内容を確認し、発見事項や対応のまとめを行います。
新規開発の場合は、スピード優先であえて丁寧にアウトプットしないこともありますが、既存サービスの場合は、事業部への展開のためにレポート化したり、カスタマージャーニーに落とし込んだりして、誰が見ても改善点や、それに紐づくネクストアクション、スケジュールが分かるような資料作りを心がけています。
―インタビューに出ていない方々を巻き込むことが重要ですね。
そうですね。
現場担当者だけでなく、時には事業責任者にもインタビューに同席してもらうなど、意思決定層のメンバーの理解を得ることは、2回目3回目に繋げるためにも大事です。
ユーザーインタビューを活用することで、どんな改善が見込めるのか、意見と数字をセットで示すことで納得度を上げていく。一つずつ実績を積み重ね、ユーザーインタビューのメリットや価値を伝えることが必要だと考えています。
―今後の目標について教えてください。
会社全体では、まだまだUXリサーチが浸透しきっているとは言えないので、今後より当社の文化として根付かせていきたいです。
既存の強みである定量分析のノウハウと、ユーザーの声をきく定性調査を掛け合わせることで、よりよい顧客体験を提供できるプロダクト作りに活かすことができると思っています。ユーザーの声を聞く機会を増やし、また私自身のノウハウを社内に伝えていくことでも、ハードルを下げていきたいと思います。