開発コストの大きい証券サービスの顧客調査にユニーリサーチを活用 提供価値の方向性決定とユニークな機能実装のきっかけに
ブルーモ証券は、簡単に米国株・ETFで資産運用できるアプリ「Bloomo(ブルーモ)」を提供する証券会社です。「投資をみんなのものに」をミッションに掲げる同社の「Bloomo」は、投資初心者でも使いやすいシンプルな操作性を特徴としています。設定した資産配分に沿って両替や買付を自動化する機能や、経験ある投資家のポートフォリオをワンクリックで真似て投資できる機能など、投資のハードルを引き下げるさまざまな機能を有しています。
今回は、「Bloomo」の開発に向け、提供価値の方向性決定のためにユニーリサーチをご活用いただいた同社代表 中村 仁さんに活用メリットなどをお伺いしました。
※本記事の内容は取材日2024年4月4日時点のものとなっています
ユニークな機能で資産形成を加速させる米国株の資産運用アプリ「Bloomo」
代表取締役CEO 中村 仁さん― 御社と、御社が手がける「Bloomo」について教えてください。
中村さん: ブルーモ証券は、米国株・ETF(上場投資信託)の資産運用アプリ「Bloomo」の開発・提供をしている証券会社のスタートアップです。「投資をみんなのものに」をミッションに、2022年6月に設立しました。2023年4月にはシードラウンドにて8億円の資金調達を発表させていただきました。当社が目指すのは、完全にお任せの資産運用を広めることではなく、一人ひとりが自分自身で資産管理できるような投資です。操作は簡単でも、お客様の「やりたいこと」を反映できるプロダクトの提供を通して、日本の資産形成を加速させていきたいと考えています。
「Bloomo」は、初心者から経験者の方まで、スマートフォンで手軽に投資できるアプリです。
いくつものユニークな機能がありますが、代表的なものは「目標ポートフォリオ機能」です。先に理想の資産配分を決めてから、投資を始めることができます。投資したい銘柄と比率を指定して入金するだけで、必要な両替・売買は設定した配分に沿ってアプリが自動で行います。
「目標ポートフォリオ機能」
また「ポートフォリオ共有機能」では、他の方がどんなポートフォリオで投資しているかを閲覧し、自分の「目標ポートフォリオ」にコピーすることが可能です。初心者の方でも有名投資家を真似て投資を始めることができますし、経験ある投資家の方も他の投資家との実績を比較し、今後の運用に対するヒントを得られます。
「ポートフォリオ共有機能」
「Bloomo」は、シンプルでわかりやすい操作性にこだわって開発しています。投資経験の無い方も、ぜひ使っていただきたいと思います。
https://bloomo.co.jp/
― 中村さんが、「Bloomo」を開発しようと思った経緯について教えてください。
中村さん: 私はファーストキャリアとして財務省に就職しました。しかし「少子高齢化に直面する日本が、明るい未来を掴むにはどうするべきか」という難問に対しては、政治や行政だけの力では十分に解決できないと感じました。では事業として何ができるか思案した際に、特に若い世代の資産形成を促して、将来の不安を払拭することが非常に重要だと考えました。
過去数年で国内マーケットは拡大しているものの、日本の個人投資比率はアメリカに比べて1/4程度とも言われています。アメリカでは古くから投資文化があり、使いやすいUIの投資アプリが数多く存在しています。一方、日本は最近まで投資が一般化していなかったことに加え、既存サービスの多くは使いにくいし、わかりにくい。金融リテラシーがあるはずの自分も、運用したいことを実現できずにペインを感じました。
「情報が多すぎてわからない」「単語レベルでわからない」といった、操作性や金融リテラシーの壁を「Bloomo」で越えていくことで、誰でも本格的な資産形成をできる世界を実現したいと思いました。
「このスピード感とコスト感なら、他には選択肢がない」
― 中村さんが、ユーザーリサーチを行う理由について教えてください。
中村さん: 2017年からアメリカのスタンフォード大学にMBA留学をしていたのですが、一部の授業で「デザイン思考」で有名なデザインスクールに通っていました。ユーザーの行動を観察することでニーズや根本的な課題を発見する、ということを2年間教え込まれ、ユーザーリサーチは自然と「やるべきことだ」という認識になっていました。
私自身が、インタビュー好きということもあります。大学の学部生時代から研究で途上国にてインタビュー調査を行ったり、コンサルタントとして働いていた時も日本の農家の方から海外の自動運転技術者まで幅広い方々にインタビューを実施したりと、人の話を聞くことを楽しんでいました。
― ユニーリサーチを選んでいただいたポイントについて、教えてください。
中村さん: 他サービスとも比較しましたが、最も低コストで簡単に始められそうだと思い、ユニーリサーチに決めました。
実際に使ってみたら、すごい早さで対象者が集まりました。スマートフォンで募集を出して、数時間後に外出から戻ったら既に期待以上の数の応募が来ていて、本当に驚きました。
このスピード感とコスト感なら、代わりとなるサービスは他にないですね。
後戻りの難しい分野、開発前に解像度を高める唯一の手段はユーザーリサーチだった
― 御社には既に100件以上ユーザーインタビューを実施いただいていますが、どんなシーンでユニーリサーチをご活用いただいたのでしょうか?
中村さん: 仮説検証の初期段階、「Bloomo」の提供価値の方向性を決める時に最も使いました。
投資アプリを開発することは決めていましたが、メインの提供価値をどんな点にするべきか、どうしたらお客様に使ってもらえるのかを検証しました。選択肢を提示して「この中ならどれが良いでしょうか?」という聞き方をしたこともありましたね。
証券サービスは、開発や組織構築に大きなコストがかかるヘビーな領域です。提供開始後の後戻りが難しく、たとえばゲームアプリならプロトタイプで市場の反応を確認することも可能ですが、証券サービスではそうもいきません。証券会社を設立し、サービス品質を万全にしたプロダクト開発を経て初めて、プロダクト検証が可能になります。
作るべきプロダクトの解像度を可能な限り高めてから動き出す必要がありますが、開発の手前で唯一できたのがユーザーリサーチによる事業検証。ユニーリサーチを活用し、徹底的にいろんな人に話を聞きました。
目的に関わらず全てのインタビューで、ファクトベースの行動情報を収集した
― ありがとうございます。インタビューでよく聞く質問はありますか?
中村さん: どんな目的のインタビューでも、ファクトベースの行動については、必ず聞くようにしています。
たとえば「何がきっかけで投資を始めたのか」「どんな投資を行っているのか」などを質問しています。プロダクトに対するご意見は貴重ですが、実際その場面にならないと分からない部分も多いものです。しかし、実際の行動は動かしがたい事実なので、行動に関連した事実情報を収集し続けることが大事だと考えています。
そのほかでは、マーケティングリサーチの一環として「どうやってサービスを知るのか」「どんな情報があると投資したくなるのか」ということもお伺いしています。
インタビューで得られた声は、「ポートフォリオ共有機能」の実装に繋がった
― インタビューで得られた結果は、プロダクト開発にも影響しましたか?
中村さん: はい。たとえば「投資を始める際に知り合いにネット証券の操作画面を見せてもらったが、家に帰ると内容を忘れてしまって結局できてない」「何を買ったらいいか分からないので、知り合いと同じ銘柄を買った」という声がありました。
「Bloomo」の「ポートフォリオ共有機能」で実現しようとしていたことを、既にアナログで行なっている方がいた、ということですね。
もともとポートフォリオをコピーするという構想自体は持っていたのですが、購入した銘柄をシェアできるようにするといったコミュニティ要素を持たせるかは悩みどころでした。しかし、ユーザーインタビューの結果もあるし、その後実際に機能を提案して反応も良かったので「ポートフォリオ共有機能」開発の意思決定に繋がりました。
ユーザーが極端な行動をとる時は、ニーズが顕在化するタイミングだと考えています。そうした行動をされる“エクストリームユーザー”の方と話すことは重要だと思います。
― インタビュー実施の体制について教えてください。
中村さん: セグメント設計や募集方法、インタビューの質問内容を管理する調査フォーマットを社内で用意し、対象者ごとに必要な情報を埋めるようにしています。あとはひたすらインタビューをこなしていきます。インターン生やデザイナーが同席することもありますが、多くは私自身が実施しています。
― 最後に、今後の展望について教えてください。
中村さん: 2024年2月から限定先行リリースとして、ご招待枠のみで公開していましたが、多くの皆様が実際に入金・運用いただき、好評の声を頂戴しました。チームとしても作っているものに自信が持てたので、2024年5月からは一般公開を始めました。一般公開後は積立入金機能を追加し、自分だけのオリジナルポートフォリオを使って、自動で積立投資もできるようする予定です。また、今年中には新NISAにも対応し、非課税口座を用いた資産形成にもご利用いただける予定です。
引き続き、誰でも本格的な資産形成を行うための新機能をリリースしていきます。ユーザーリサーチも活用し、「Bloomo」の世界観を広げていきたいと思います。