アプリ利用とオフライン体験のPoCを実施 ユニーリサーチモニターを活用してプロダクトの体験価値を再定義し、尖らせることができた
エナフォワードは、美容師と顧客をつなぐアプリケーションサービス「ビーネ」を提供する2023年5月設立の企業です。「ビーネ」は、離職率の高さが大きな課題である美容業界に、エネルギーを届けるサービスです。美容師と顧客の関係構築を、感謝の気持ちが循環するさまざまなアプリ機能でサポート。美容師が顧客から継続指名をもらいやすい仕組みを整え、仕事を続けられる環境構築を目指しています。
今回は、「ユニーリサーチ モニター」の活用を通して美容師と顧客に実際に「ビーネ」を体験してもらい、プロダクトの価値検証(PoC)を実施した、エナフォワード CTO 須賀 祐介さんと、COO 小宮 暢朗さんに具体的な検証ステップや得られた結果などをお伺いしました。
※本記事の内容は取材日2024年4月15日時点のものとなっています
美容業界の離職率低下に向けて 美容師と顧客をつなぐアプリケーションサービス「ビーネ」
COO 小宮 暢朗さん― まずは、御社事業について教えてください。
小宮さん: エナフォワードでは、美容師と顧客をつなぐアプリケーションサービス「ビーネ」を提供しています。「ビーネ」は、ENEOS社の「新規事業開発プログラム」から生まれた事業であり、出島制度を活用して設立したエナフォワードから2023年10月に正式リリースされました。
美容師は「10年で1人前」とも言われるプロフェッショナルの世界ですが、毎年専門学校を卒業する約2万人のうち、1年で約半数が辞めてしまうなど、離職率の高さは業界全体の課題となっています。
「ビーネ」は、美容師と顧客の退店後から再来店までの顧客接点をDXすることで継続指名をもらいやすい仕組みを整え、まだ経験が浅い美容師でも、モチベーション高く仕事を続けられる環境を実現するためのアプリケーションです。予約や相談ができるチャット機能、ヘアスタイルの履歴を見られるアルバム機能や美容師と顧客が感謝の気持ちを交換できる機能、さらに顧客から美容師へコーヒーや軽食などの差し入れを贈ることのできる機能などを備えています。
また、美容室オーナーは「ビーネ」に蓄積されたデータを通じて、これまで目に見えなかった顧客と美容師との関係値を把握できるので、美容師の育成や評価に役立てていただけるというコンセプトです。
来店からアプリDL、再来店までの流れを体験してもらった上で、ユーザーインタビューを実施
― 「ユニーリサーチ モニター」をご活用いただいた目的について、教えてください。
CTO 須賀 祐介さん
須賀さん: 「ビーネ」は、美容師、顧客、美容室オーナーといった美容業界のステークホルダー3者それぞれにメリットを提供していますが、今回の検証では特に「美容師と顧客への提供価値」の検証が主な目的でした。
過去の検証を通して、美容室オーナーからの手応えは既に掴んでいました。しかし、美容室への導入にあたっては現場の満足度が鍵となるので、導入数拡大のためにも美容師と顧客への提供価値を明らかにする必要があったのです。
初めて来店した方が、初めて会う美容師からアプリの紹介を受け、再び来店するという一連の流れにおいて、美容師と顧客双方にどんな体験を提供できるのかを実際に検証したいと思いました。
また、関係性のある弊社のお客さんにお願いして美容師の方から「ビーネ」アプリを顧客にオススメしてもらったところ、「どう説明すれば良いのかわからない。紹介が難しい。」という声があがりました。我々側で顧客に強く刺さるメリットを洗い出し、簡潔な言葉でまとめる必要があったんです。
― 具体的にはどんなステップでPoCを行ったのでしょうか?
須賀さん: 今回は関係性のある美容室に協力いただき、ユニーリサーチ モニターで募集した8人のモニターに、美容室で施術を受けていただきました。
リクルーティングは、「今回PoCを行う美容室に過去通ったことがなく、今回のテスト期間中に2回以上通うことができる人」という条件募集しました。
美容師さんには、「このチラシを渡してアプリを紹介する」ということをお願いしました。我々が用意したトークスクリプトとチラシで、スムーズな案内が成り立つのかを検証しました。
モニターへの依頼内容は、「2回の美容室来店」と「2回のインタビュー」です。モニターの方には、事前にユニーリサーチ上でテスト参加において必要なガイダンスを行いました。初回来店時は私も店で待機し、施術前に美容師からアプリの紹介があることだけをお伝えしましたが、具体的な内容には触れず、フラットに紹介を受けてもらえるようにしました。
そして店舗内でアプリをダウンロードしていただき、退店後に近場のカフェでアプリや案内体験をどう感じたかを1時間ほどインタビューしました。またその場で、アプリから次回の施術予約をしてもらいました。2回目の来店の際は、通常どおり施術を受けていただき、この時は後日オンラインでインタビューをしました。
「期待値以上のインサイトを得られた」プロダクトの価値を改めて定義し、さらに尖らせることができた
― 今回の検証を振り返って、どんな結果が得られましたか?
須賀さん: 今回検証したポイントは、大きくは3つでした。
まずは、「ビーネ」に対して顧客がどんな価値を感じるのかという点。結論としては、ヘアアルバム機能が良い役割を果たしていました。美容室の予約は「そろそろ髪が伸びてきたから行かないと...」と必要に迫られて行うことが多く、自分の髪がどれほどのペースで伸びるか把握している人は、ほとんどいません。ヘアアルバムの記録を見れば、自分でペースを知ることができ、美容室でもカウンセリングがスムーズになります。
次に、「ビーネ」が店内での接客体験の向上にどれほど貢献し、リピート利用を促進できるかの検証です。残念ながらデジタルプロダクトである「ビーネ」は店内においては部分的な貢献に留まりました。やはり店内での接客体験は美容師のスキルに依るところが大きく、私たちが提供できるのはむしろ帰宅後に再来店を後押しするような、店外体験をデジタルで繋ぐことだと明確になりました。今後注力すべき力点が見えてきたと思います。
最後に、アプリを紹介しやすいトークスクリプトの検証です。当初は「あれもこれもできる」と詰め込んでチラシをデザインしていましたが、初めて会う美容師から知らないサービスを紹介されても、情報過多だと魅力を理解してもらえません。結果的に好評だったヘアアルバム機能についても、まったく新しい体験であるため、説明時には価値を伝えきれませんでした。訴求点はわかりやすくシンプルにするべきでした。
ユニーリサーチ モニターを通して、期待値以上のインサイトが得られました。3つのポイントの検証以外にも普段の美容室体験について聞くことができ、プロダクトの価値を改めて定義し、さらに尖らせることができたと思います。
導入のきっかけとなる価値(フック)と、結果的に受け入れられる価値(ロック)が両面でクリアに
― ありがとうございます。「ユニーリサーチ モニター」をご活用いただいた感想や、気に入っているポイントがあれば教えてください。
須賀さん: 単発のインタビューやアンケートではなく、長期で検証しないと明らかにならないことは、多いと思います。
たとえば今回は2度の来店とアプリの利用を依頼できたので、アプリダウンロードのきっかけとなる価値(フック)、体験を通して結果的に良いと思ってもらえる価値(ロック)が見えてきました。社内ではこれらの価値を「フック」と「ロック」と呼んでいますが、両面でクリアになったのは非常に大きいです。
対象者との連絡もユニーリサーチ上のメッセージ機能でやりとりできて、スムーズでした。それにスピード感も。希望人数を余裕で超える応募があっという間に集まったのは、驚きでしたね。
小宮さん: コストについても驚きました。他社さんとは桁が1つ違って、比較にならなかったです...。
調査会社さんに依頼すると、2、3ヶ月ほどのスケジュールを引かなければなりませんし、それでも対象者が集まるか分からないということでした。調査会社の安心感はあるかもしれませんが、本質的に必要なことを考えると、ユニーリサーチだなと思いました。
ユニーリサーチは不要なオプションのない、シンプルなプラットフォームであることが魅力ですが、必要なことは自由度高く設計できるので、いくらでもカスタマイズ可能です。
検証目的さえ定まっていれば、ユニーリサーチがベスト。追加でやりたいことが増えても柔軟に調整できるので、特にアジャイル開発を進めるスタートアップには向いていると思います。
― 最後に、今後の展望について教えてください。
須賀さん: 美容業界における最大の課題は、離職率の高さです。せっかく採用して1年以上教育しても、日の目を浴びる前に大多数が退職して業界を離れてしまう状況。美容師にとっても、美容室オーナーにとっても、誰にとっても不幸なのです。
まずは「ビーネ」の提供を通してロイヤルカスタマーの獲得をサポートし、美容師の方には長く仕事を楽しんでいただきたいですね。
美容師は施術を通してとんでもない量の、"あなたの情報”を持っています。たとえば物販やパーソナライズなサービスにも繋げることで、今後は美容師という職業の社会的価値をもっと、ぐっと引き上げたいと考えています。
小宮さん: 「エネルギーをつくっていく」という意味を持つエナフォワードは、今後も美容業界に対してエネルギーを届けていきたいと思います。
社会課題を解決して、ちょっとでもポジティブに変えていく。そうした事例を積み上げ、広げていくことでビジネス的にも大きな領域を狙いながら、「このサービスがあって良かった」と価値を感じていただける方々を増やしていきたいです。