代替ではなく、補完。圧倒的な効率化で調査業務は2ヶ月から2日に。フリューのマーケティングリサーチャーが、AIで得た"本質に向き合う時間"
フリュー株式会社は、「人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!」という企業理念のもと、プリントシール機の企画・開発・販売等を手がける「ガールズトレンドビジネス」と、クレーンゲーム景品やホビー物販などキャラクター商品を展開する「世界観ビジネス」を両輪とする総合エンタテインメント企業です。また、長年にわたり蓄積してきた若年女性層への知見を体系化している社内研究機関が「ガールズ総合研究所」です。
同社では、ユニーリサーチのAIインタビューをトライアル導入。実査を大幅にスピードアップしました。当初は、AIがインタビューを担うことへの不安の声もありましたが、導入後に見えてきたのは、代替ではなく、本質的な業務により多くの時間を使うための効率化でした。今回は、ガールズ総合研究所リサーチ部の林 佑樹さんと村木 宏壽さんに、その経緯と実感を伺いました。
※本記事の内容は取材日2026年8月4日時点のものとなっています。
"作り手"と"使い手"のずれから始まった。20年以上、顧客の声を聞き続ける理由
― 「ガールズ総合研究所」と、御社内でのリサーチ体制について教えてください。
林さん: 「ガールズ総合研究所」は、長年培ってきた若年女性層への知見を体系化し、生活者理解を深めるためのフリューの社内研究機関です。調査結果は自社事業のマーケティングや商品開発に活用するだけでなく、社外にも積極的に発信しています。
専任リサーチャーは10名ほど在籍しており、生活者調査を通じた示唆を事業部に向けて提供する役割を担っています。社内にはインタビューに適した会議室も備えており、約1,000名の女子高生モニターの協力も得られています。
ガールズ総合研究所リサーチ部 林 佑樹さん― 御社がリサーチに力を入れている背景について教えてください。
林さん: プリントシール機事業を始めた当初、実は思うような成果につながりませんでした。開発担当は技術力のあるベテラン社員たちでしたが、作り手が考えるニーズと、実際にプリントシール機を使う女子高生が求めるものの間には、大きなずれがありました。
この経験から、顧客の声を聞くことの大切さを痛感し、20年以上にわたってガールズマーケティングに取り組んできました。「ガールズ総合研究所」は、その積み重ねの先にあります。生活者と同じ目線に立って共感すること、それが日々のトレンドづくりにもつながっています。確かな"ワクワク"を届けるためには、本気のリサーチが必要だという考えがあります。
― AIインタビュー導入のきっかけを教えてください。
林さん: 自社でモニターパネルを運用しているものの、リクルーティングや日程調整、実査、分析まで含めると、どうしても時間とリソースの負担があります。特に新規事業や体制が小規模な商品では、リサーチに人を割ききれません。クイックに調査を回す必要があるなか、AIインタビューに注目しました。
リサーチにおけるAIには、インタビューの受け手がAIのパターン(AIペルソナ)と、聞き手がAIというパターン(AIインタビュー)の2種類があります。私たちは生活者の声を大切にしたいという思いから、インタビュイーはやはり人であるべきだと考えていました。複数サービスとの比較検討の上、使いやすさやコストの観点から、ユニーリサーチに決めました。
AIペルソナとAIインタビューの主な特徴トライアル導入では、プリントシール機が一定の年齢で"卒業"されやすいという課題感を踏まえ、20代の大学生を対象に調査を実施。自社の知見とずれていないか、また新しい知見が得られるかを確認することが目的でした。
導入前の不安は払拭 効率化と機動性を実感
― AIインタビューの導入にあたって、不安はありませんでしたか?
村木さん: 正直に言うと、私はどちらかといえば慎重な立場でした。
インタビューはコミュニケーションの一種であるとも考えているので、AIによって会話のキャッチボールが途絶えたり、想定外の方向に会話が進んでしまうと、得たい情報にたどり着けないのではないかと感じていました。
しかし、実際のコミュニケーションは思ったより自然で、印象は変わってきました。
「自分のスキルが陳腐化してしまうのではないか」と不安を抱くリサーチャーもいるはずですし、AIインタビューに対して、どこか物足りなさや信用できないという反応もあると思います。しかし、AIは既存のリサーチスキルの代替ではなく、スキルや機動性を補完するものだと考えています。「AIがインタビューなんて」と思っていた分、これだけのことができるのであれば、必要な情報収集プロセスを効率的、機動的に達成できると感じました。
ガールズ総合研究所リサーチ部 部長 村木 宏壽さん2ヶ月が2日に スピーディーなだけでなく情報量も用途としては十分だった
― AIインタビューの導入効果を教えてください。
林さん: 実査から分析・集計まで、非常にクイックに終えられました。通常、自社のユーザーにインタビューする場合は、実査の約1ヶ月前には起案をする必要があり、リクルーティングだけで1ヶ月ほどかかります。分析まで含めると、短くても数週間、案件によっては2ヶ月ほど要することもあります。
今回は、それだけの時間をかけていた業務が、実質2日ほどで完了しました。文字起こしとレポートもその場で得られます。スピードが速いというだけでなく、得られる情報量とのバランスが非常によかったと感じています。部内で共有する際、「ちゃんと深掘りできました?」と聞かれましたが、深掘り設定の機能があることを説明すると、驚かれました。聞き方のフォーマット化など、さらなる機能の進化への期待はありつつも、満足度が高かったポイントです。
AIインタビューにおける自動深掘り機能気負わず話せる対話環境。若年女性理解を深める、AIという新しい選択肢
― AIインタビューならではの利点は、どんなところに感じていますか?
村木さん: 若年女性層の対象者にとって、大人、まして企業の人間と話すことには心理的なハードルがあります。当然ながらテーマ、対象者によって一律ではないですが、AIが相手であれば、かえって気楽に話せる面もあるのではないかと感じています。
インタビューでの対象者の緊張をほぐす工夫自体は、フリューにとって目新しいものではありません。一人だと緊張してしまうからと友人と一緒に呼ぶ、会話しやすいようヒアリング中はタメ口で話す、会場のBGMをあえてゲームセンター風にする、そうした緊張させない工夫や試行錯誤を、長年積み重ねてきました。AIインタビューは、その延長線上に加わった新しい選択肢です。
また、情報の質という点でも利点はあると思います。インタビューを実際に行うのは、事業部の企画者自身であることが多いです。商品やサービスを深く理解しているからこそ聞ける質問がある一方で、思い入れが強すぎて生活者目線に立ちきれない、ということも立場上どうしても起きてしまうことがあります。AIであれば、そうした思い入れや対象者との距離の近さに左右されず、フラットに話を聞けるのではないでしょうか。
林さん: 顧客の生の声を聞きたいという想いは、事業に関わる多くの方が持っていると思います。しかし、誰もがそれを聞き出せるスキルを持っているわけではありません。スキルを補完する存在としてもAIインタビューを位置づけると、より多くの人がリサーチに関われるようになる。そんなダイナミックな変化が起きているのではないかと感じています。
AIが担う「場回し」、人が担う「根回し」
― 人によるインタビューとAIインタビューをどのように使い分けていく予定ですか?
村木さん: 大事なのは「場回し」と「根回し」。つまりインタビューの場を回す部分と、その前後の設計・分析や伝えていくプロセスだと考えています。人間が集中すべきなのは「根回し」の部分で、「場回し」の一部はAIに任せられると考えています。
効率化によって、調査の本質的な設計や分析、それを事業につなげていくための時間を、より多く確保できるようになると感じています。特に新規事業のようにスピード感が求められる場面で、仮説づくりと検証を素早く回していくには、AIインタビューは相性が良い。すでに別のテーマでの本格導入も予定しています。
林さん: AIやオンラインインタビューが効率化される一方、対面インタビューは今後も必要不可欠だと考えています。表情や仕草、目線といった非言語の情報は、対面でなければ得られません。たとえば、私自身はインタビューの際には対象者のつま先の向きを見るようにしています。気持ちがどちらに向いているかは、実はつま先に表れることが多いのです。
― 最後に、今後の展望をお聞かせください。
林さん: 若年女性層への理解を継続的に深めながら、柔軟なリサーチ体制を整えていきたいと考えています。従来の対面インタビューも大切にしながら、AIインタビューも活用し、得られた知見を新しいエンタテインメントとして届けていきたいです。
村木さん: これまで培ってきた"かわいい"のプロデュース力を、国内だけでなく海外にどう展開していくか。グローバルでも、挑戦の試行回数を増やしていくことが必要だと考えています。AIには、全自動でインタビューを完結させるというより、インタビューの試行回数を増やすことを期待したいです。海外でのアンケートやインタビューも行いたいと思いますので、その点でもユニーリサーチのアップデートを楽しみにしています。



