次世代事業は顧客の声から!社員発で新規事業を生み出す取り組みと、ユーザーインタビューで感じたこととは
出光興産株式会社 デジタル・DTK推進部事業変革課 佐野双美
出光興産株式会社 デジタル・DTK推進部事業変革課 高原雅代
出光興産の起業家マインドを備える人材育成の取り組みとは
― 最初に、佐野様の業務内容、ミッションについて教えてください。
佐野さん: 業務内容は大きく分けて二つあります。一つは次世代事業共創活動「SPARK」の運営です。こちらは全グループ社員が参加可能で部室を超えたオープンなワークショップやディスカッションを通じて、新しい社会価値・顧客価値を生み出すことを目指す取り組みです。主に企業文化・風土醸成を目的としています。もう一つは「ビジネスデザイン塾」という社会のニーズや課題を自発的にキャッチアップし、新規事業に繋げられるような人材育成を目的とした塾の企画、運営を行なっております。
会社としてのビジョンは脱炭素化の加速など外部環境が大きく変わる中、エネルギーの安定供給とともに、「カーボンニュートラル・循環型社会へのエネルギー・マテリアルトランジション」、「高齢化社会を見据えた次世代モビリティ&コミュニティ」、「これらの課題解決を可能にする先進マテリアル」の事業ドメインで責任を果たし社会課題の解決に貢献することを掲げています。私個人のミッションとしては、現在行なっている企業文化・風土醸成と人材育成を、次世代事業の創出に繋げ社会課題を解決していくことを目指しています。
― 会社のビジョンと、佐野さんご自身のミッションが繋がっているわけですね。
佐野さん: そうですね。もともと会社として人を育てることを非常に大切に考えているのもありますが、ビジョン実現のためにも人材育成は大事だと思っています。
実はそのために、ビジネスデザイン塾以外にも、カーボンニュートラル関連の「CNXセンター塾」、全国の支店担当者を対象にした「スマートよろずや塾」という三つの塾を開講しています。
― ビジネスデザイン塾は領域問わず社会課題に向き合っているので、多様性がありそうですね。具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。
佐野さん: 一言で言ってしまえば「顧客視点」の新規事業開発の仕方を座学とフィールドワークで学んでいます。自分たちで新規事業を検討していき、講師に検討している事業アイデアをメンタリングしてもらいブラッシュアップしていく形式です。
期間は6ヶ月間で、最終的にはアイデアを事業として提案することを目標とします。
つてに頼らない、新たなユーザーインタビューの手段としてuniiリサーチを導入。
― どのような方が塾生として参加されるのでしょうか。
佐野さん: 対象部署のメンバーに挙手制で参加してもらっています。現在は4チーム合計で12名います。
新しい取組をやっていかなければという想いを持っている人、新規事業について学びたいという人、新規事業の支援を強化したいというコーポレート部門の人などが参加しています。
ただ必ずしも新規事業だけではなく、顧客視点の課題解決は既存業務にも生かせる学びだという認識を塾生は持ってくれています。
― 塾生を支援していく上で、意識されていることはありますか。
佐野さん: 塾生にはその場の学びだけで終わって欲しくないので、学ぶ場ではあるけれどもその学びを自分だけに留めず、自分の部署に持ち帰って共有してほしい、部署内だけでなく全社的な組織文化醸成の力にもなってほしい、また、継続的に新規事業に挑戦をして欲しいということを伝えています。
― 6ヶ月という期間の中で、塾生がつまずきやすい点はありますか。
佐野さん: 講師の言うことを腹落ちさせ、学んだことをすぐに事業検討の行動に活かすのには、苦戦しているように感じます。座学で学ぶことと、それを実践できるようになるにはギャップがあり、実践に移す中で徐々にあの時講義で言っていたのはこういうことだったのか、と気づくこともあるようです。あとは顧客が本当に求めているものを、インタビューを通して何度も掘って見つけ出すのは、最初は難しく、経験を積んで慣れていくものだと思います。
― そのような中で、顧客ニーズの把握のためにuniiリサーチを活用いただいたわけですね。導入の経緯を教えていただけますでしょうか。
佐野さん: 顧客へのヒアリングでは、本当に話を聞きたい人、話を聞くべき人に出会えるかという点が一番の課題です。社内でのインタビューはもちろん、街頭に立ってキャッチしたりとか、個人的なつてを頼ったりすることもありますが、とにかく時間がかかったり、見つからなかったり、見つかっても知り合いだとバイアスが働いたりすることがあります。
そういった際に外部の第三者に気軽にインタビューが出来る手段として、uniiリサーチを導入しました。
社内インタビューで感じた違和感。社外の方にインタビューを行うことの意義とは。
― ここからは実際にuniiリサーチをご利用いただいた塾生の高原さんにもお話をお伺いさせてください。具体的にビジネスデザイン塾の中で、どのような事業を検討されたのですか。
高原さん: 私のチームは3名で構成されているのですが、まずは各々で課題を見つけてきて、講義を受けながら、ディスカッションを通して一つに絞っていきました。「食」に強いこだわりを持つメンバーが多かったので、最終的には「食と健康」についての事業をテーマにしました。
― 最初に課題の仮説検証はどのようにされたのですか。
高原さん: 最初は社内インタビューから始めました。課題がありそうなユーザーを決めて、3名の方に話を伺いました。対象者の条件としては夫婦共働きで小学校高学年~中学生のお子さんがいて多忙である、そんな方に声をかけてインタビューしました。
ただインタビューをする中で感じた課題があって、相手は社内の人なので生活スタイルや価値観が比較的似通っていたんです。得られたインサイトも我々の想定の範囲内というか。そのため、社外の方が相手だったらまた違ったインサイトの発見があるのではないか、という焦りや不安を感じていました。そこで、事務局と話し、異業種の人にもインタビューできたら、という流れでuniiリサーチを利用することになりました。
― 実際にどのような方にインタビューをされましたか。
高原さん: 社内インタビューと同様、お子さんがいる共働き夫婦で自炊されている方3名に、食事と健康についてインタビューさせていただきました。
― インタビューを実施してみていかがでしたか。
高原さん: 短いインタビュー時間にも関わらずテキパキと回答してくれたので、想定以上に我々が思ってもみなかった生の声をたくさん聞くことができたと思っています。食と健康の内容でのインタビューではありましたが、ユーザーさんからはそれ以外の生活の課題などについてもお聞きすることができました。あえて話を広げたり、違う視点で深堀を行うことも大事なんだと、気づきを得ることもできました。事前には全く想定していなかった大きな成果ですね。
― インタビューに同席された佐野様は、事務局の立場としていかがでしたか。
佐野さん: 私が同席したチームでは高齢者の方へインタビューをしていたのですが、本当に短期間で応募からインタビューが完結したので、もともと予定にはなかった高齢者のお子さんにもインタビュー対象を広げることができました。その結果、チームが当初考えていた課題やニーズが、高齢者ご本人だけではなく、お子さん側にもあるのだということがヒアリングの中で分かりました。uniiリサーチはインサイト収集の時間短縮を行いつつ、より多くの声を集め、アイデアのブラッシュアップに繋げることが可能なサービスだと感じています。
― ありがとうございます。それでは最後に今後の抱負について教えてください。
高原さん: 顧客の声を聴くことがとても大事だということが良く分かったので、こういったサービスを継続的に使い、ユーザーが欲しいと思えるサービス創りに活かせたらと思います。
佐野さん: ビジネスデザイン塾のアウトプットが、地域の方々の課題解決に繋がり、社会に貢献できたらと思っています。