インタビューの全工程はわずか2時間20分、社内調整の負担もぐっと軽く。AIインタビューで進める、貝印の新商品コンセプト検証
岐阜県関市で刃物づくりから始まり、1908年の創業から118年を迎える貝印株式会社。調理用品からカミソリ、化粧小物まで、刃物を中心におよそ1万点の製品を国内外に展開しています。
同社 マーケティング部では、新商品開発のヒントを得るためのリサーチ業務を担っており、これまでは定性調査に週末をまるごと費やすことも少なくありませんでした。今回、コンセプト検証のためにユニーリサーチのAIインタビューをトライアル導入したところ、全体工数は10分の1以下となり、実施に向けた社内調整の負担も大きく軽減されました。
同部の安西さん、杉田さんに、AIインタビュー導入の手応えを伺いました。
※本記事の内容は取材日2026年8月10日時点のものとなっています
118年、良質な刃物を世界に展開する貝印が向き合う新商品開発
― 御社の事業と、お二人のご所属部門について教えてください。
安西さん: 貝印は岐阜県関市で始まった刃物の会社です。商品の企画開発から生産、物流、販売までを一貫して手がけており、カミソリや化粧小物、包丁をはじめとする調理用品などを製造・販売しています。今年で118年になりますが、絶えず新しい商品や市場のチャンスを探っています。
杉田さん: マーケティング部の中で、安西は化粧小物と包丁の調査を担当。私は包丁以外の調理用品や海外調査、また最近京都にオープンした直営店のマーケティングを担当しています。
週末を費やしていた定性調査。コンセプト検証にAIインタビューをトライアル導入
― AIインタビューを導入した背景を教えてください。
安西さん: 普段の定性調査は、調査会社に依頼して会場で実施するのが基本です。しかし、社員がインタビュアー役を担うにしても金土日をまるごと使うなど、手間のかかる作業でした。
そんな中、ユニーリサーチを上司から紹介されました。新商品のコンセプトについて「仮説の方向性が正しいか、答え合わせをしたい」というタイミングとも合致して、トライアル導入を決めました。
貝印株式会社 マーケティング部 安西 詩乃さん杉田さん: 「AIでインタビューができる時代になったのか」という驚きがありました。商品企画では、コンセプトや世界観を大事にしたいので、情緒的な部分は定性調査のほうが引き出しやすい。ちょうどそうしたニーズにも合っていました。
対象者募集からレポート生成まで、2時間20分。"終わりました"の一言に、上司も驚いた
― 実際にAIインタビューを活用されて、手応えはいかがでしょうか。
安西さん: 募集開始から数分で最初の一人が集まり、インタビューの実施からレポートの自動生成まで、調査はわずか2時間20分で完了しました。上司に報告したときも「こんなに早いとは」と驚いていました。
スピード感だけでなく、回答内容も想像以上に確度の高い答えを得られました。AI相手だと「支離滅裂になってしまうのではないか...」という心配は全くの杞憂でした。インタビューは一問一答だけで展開されるものと思っていましたが、回答者の言葉を受けて理由や背景までAIが掘り下げて聞いてくれる。人間同士のインタビューに近い、深い受け答えができることに感心しました。また、対人だと少し話しづらいようなテーマでも、AI相手ならかえって率直に答えていただけるという発見もありました。
杉田さん: 回答の質の見極めには普段から工夫をしています。たとえば「使ったことのあるブランドは?」といった設問に架空のブランド名の選択肢を混ぜておき、それに反応した人を除外するといったことですね。今回もそうした目線でチェックしましたが、十分に質の高い回答が集まっていると感じました。
貝印株式会社 マーケティング部 杉田 美穂さんチーム総動員だった調査が、二人で完結。稟議も資料づくりも、負担が軽くなった
― AIインタビュー導入の効果をどのように感じていますか。
安西さん: 社内調整にかかる負担がぐっと軽くなりました。通常、外部の調査会社に依頼するとなると金額も大きくなるため、稟議書に費用感や得られる成果の見通しを記載する必要があり、それだけでも相応の時間がかかります。対象者を集めるのも一苦労で、直前でキャンセルになったりということもありました。
今回はそうした調整がほとんど発生しませんでした。私と杉田の二人だけで、他の業務のかたわらに完結できてしまいました。通常であれば、チームメンバーを総動員するような一大プロジェクトになる定性調査が、これだけコンパクトに実施できました。工数の面でも、調査会社に依頼する場合と比べて、少なくとも10分の1以下には抑えられていると思います。費用感や手間の発生が抑えられたことで、社内説明や稟議を通す際の心理的なハードルも大きく下がりました。
生成されたレポートやグラフ画像、CSVデータはそのまま上司に共有できるので、報告に必要な資料をつくり直す手間も省けています。
従来の工程をAIインタビューで効率化「気持ちが上がる」アンケートで拾いきれない情緒的な生の声と、想定外の答え
― AIインタビューを通して、どんな結果が得られましたか。
安西さん: 定量調査では数字上での傾向が見えても、回答の背景まではわかりません。単純な「はい」「いいえ」ではなく、そう思った理由まで深く聞くことができ、新商品のコンセプト検証に活用できました。
意外な答えが得られたのも収穫です。インタビューを通して、想定を上回る反応をいただいた検証項目がありました。使用している製品についても「これはこのメーカーのものを使っている」と、詳細まで具体的に答えてくださる方が多かったです。アンケートの自由回答では拾いきれない、消費者のリアルな使用実態を知ることができました。
杉田さん: 情緒的な部分を聞く質問をいくつか用意していました。定量調査だと一つの選択肢にまとまってしまうような回答が、「気持ちが上がる」「人に会いたくなる」といった多様な言葉で返ってきたのが印象的でした。同時に、回答傾向はグラフにまとめてくれるので、使い勝手も良かったです。
回答結果の背景にある情緒的価値までとらえる。海外売上比率はすでに半数超えの貝印。次の期待は、AIインタビューでの海外調査
― 今後、どのようなシーンでAIインタビューを活用していきたいですか。
杉田さん: AIインタビューは、調査会社に依頼するほどではないものの、判断の材料が欲しいという場面には、とても使いやすいと感じています。壁打ちのような感覚で気軽に使えるのも、大きな魅力です。
安西さん: 個人的には、海外調査で使えたら心強いと思っています。海外での定性調査は大規模になりがちで、現地に行かなければならないなど、実施のハードルが高いのが実情です。オンラインで、しかも定量調査よりも顔が見える形で深掘りができるとなれば、大きな価値があると感じています。
当社の海外売上比率は約50%あり、今後は人口増加が見込まれる新興地域へのマーケティングにも力を入れていく方針です。国内での活用実績を積みながら、海外調査にも広げていければと考えています。



