募集からインタビューまで1週間で完結 継続的なユーザーリサーチが可能になり顧客理解はチームのDNAに
カケハシは、「日本の医療体験を、しなやかに」をミッションに掲げる2016年創業のスタートアップです。医薬品産業・医療産業全体における課題解決や体験のアップデートを目指す同社は、その入り口はコンビニエンスストアより多い約6万店が存在する調剤薬局での「薬局DX」にあると考えています。
現在同社では、薬局のあり方そのものの変革に向けて、市場シェア10%を超える電子薬歴・服薬指導ツールの薬局体験アシスタント「Musubi」のほか、薬局向けデータプラットフォーム「Musubi Insight」、医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」、患者フォローシステム「Pocket Musubi」などを展開。最新テクノロジーを活かした複合プロダクトで「薬局DX」をトータルサポートしています。
今回は、「Pocket Musubi」のプロダクトマネージャー 三宅 史生さんに、ユニーリサーチ導入の目的やメリットなどをお伺いしました。
※本記事の内容は取材日2023年6月13日時点のものとなっています
最新テクノロジーで「薬局DX」を推進し、「日本の医療体験を、しなやかに。」
― まずは、御社の事業について教えてください。
三宅さん: 当社では、「薬局DX」を加速する調剤薬局向けのSaaSプロダクトをさまざまなアプローチで展開しています。
たとえば2017年8月に提供開始した薬局体験アシスタント「Musubi」は"薬局版のカルテ”を、効率的に作成できるものです。薬歴の記入や服薬指導における薬剤師の業務負担を大幅に削減しています。この「Musubi」を皮切りに、周辺領域をサポートするものとして、薬局向けデータプラットフォーム「Musubi Insight」、医薬品在庫管理・発注システム「Musubi AI在庫管理」、そして患者フォローシステム「Pocket Musubi」などのサービスをリリースしました。
服薬をフォローする「Pocket Musubi」は薬剤師と患者、双方の課題解決に貢献
― ユニーリサーチを導入いただいている「Pocket Musubi」について、詳しく教えてください。
三宅さん: 「Pocket Musubi」のコア機能は、LINEミニアプリを利用した「おくすり連絡帳」です。調剤薬局はLINE公式アカウントを通して、最小限の業務負荷で患者さんへの服薬フォローを行うことができます。
実は調剤薬局で薬を受け取る患者さんの7〜8割程は慢性疾患をお持ちで、毎月薬の処方を受けることがルーティーンになっている方です。しかし、月に1度の口頭確認を除いて、薬剤師が途中経過を把握する術がないという状況。つまり、患者さんに投薬による不調がある場合でも、すぐに察知できないという課題が生じています。
そこで「Pocket Musubi」では、服用薬データとその薬剤の副作用・飲み方などを踏まえた上での簡単な質問を週1回、患者さんに自動送信します。不調がある場合は担当薬局にアラートが通知されるので、WEBアプリの管理画面上で患者さんの状況をすぐに把握できます。また医師に状況を伝えて薬の変更を提案できるなど、これまでノータッチだった投薬期間中のフォロー自動化と、必要な場合には薬剤師が患者さんの問題解決を行うことが可能となりました。
Pocket Musubiサービス図:株式会社カケハシ様作成飲み方を間違えて薬の効果を十分に得られていなかったり、副作用に気づいていなかったりと、全患者の10パーセント程度で何らかの問題が起きていることがわかっています。たとえば薬の副作用で起きる不調を「病気だから」と思い込んであきらめている方は想像以上に多いのです。「Pocket Musubi」を通して原因が薬の飲み合わせにあると分かれば改善でき、患者さんの医療体験は大きく向上するはずです。
またプロダクトの提供を通じ、薬剤師の方から「患者さんに感謝されることが増えた」との言葉を頂けたのは嬉しいことでした。同じ医療現場でも医師は医療のプロとして認識されている一方で、薬剤師は「薬をわたす人」というシンプルなイメージを持つ患者さんは多いとのこと。薬剤師が高い専門性と幅広い薬の知識を活かして患者さんに貢献できる場として「Pocket Musubi」に価値を感じてくださっているのは、大変ありがたいことです。
「対象者が集まらない」課題をユニーリサーチが解消し、約70名にインタビュー
― ありがとうございます。「Pocket Musubi」の事業において、ユニーリサーチを導入いただいた背景を教えてください。
三宅さん: 「Pocket Musubi」にとって重要なステークホルダーは、実際にコストをかけて導入する調剤薬局と、ユーザーである患者さんです。
サービス開発の初期は薬局側での体験向上にフォーカスしていました。薬局に現場訪問して薬剤師の方の声を直接聞かせていただくなど、たくさんのご協力のおかげで、プロダクト改善が進みました。
そして現在取り組みを始めているのは、患者さん側の体験のアップデートです。その際に有益だと考えたのがオンラインインタビューでした。当初は薬局を通して対象となる方を募集していたのですが、謝礼を用意しても人数がなかなか集まらず十分なデータが得られませんでした。
そこでユニーリサーチなら、対象者募集の手段になりうるのではないかと思いトライしてみました。
― 実際にユニーリサーチを導入し、課題は解決されましたか?
三宅さん: はい。毎回たくさんの人数が集まり、十分な調査ができるようになりました。特定の疾病やシチュエーションなど、一見厳しいかなと思う条件でも問題なく、実施できています。
さまざまな切り口で、これまでに約70人ほどの方にインタビューさせていただきました。毎月10人弱くらいの方へのインタビューを継続的に実施している状況ですね。
毎回インプットがあり、次に繋がっている感覚を得られているので、「やることが当たり前」になったと思います。
ユニーリサーチ導入のメリットは、「手軽さ」「スピード感」「インタビューモニタの回答の質」
― ご利用いただく中でメリットに感じているポイントがあれば教えてください。
1点目は手軽さですね。調査会社に依頼した場合は高額になってしまうので、毎回のROIを考え慎重に実施せざるを得ないので回数をこなすことが難しい。でもユニーリサーチならコストを抑えたインタビューが可能なので、毎回切り口を変えながらインタビューを手軽に行うことができています。
実施までのスピード感もメリットです。月曜日に募集開始したら、その週にはインタビューできるという早さには助かっています。
またインタビュー対象者の方にも、毎回真摯に回答いただいています。プロダクトの性質上、薬局の利用状況だけでなく、病歴や症状などデリケートな内容の質問も含まれることが多いので、インタビュー冒頭では毎回「答えにくい質問は気にせずスキップして問題ないですよ」とお伝えしています。もちろん、今後も無理のない範囲でお伺いできればと思うのですが、過去に話す内容についてNGをいただいたことはほとんどなく、非常に円滑にリサーチができています。
短期的な改善よりも、中長期的な意思決定に必要な情報収集が目的
― ユニーリサーチでのインタビューは、どんな目的で実施しているのしょうか?
三宅さん: 多様な切り口でのインタビューを通して、患者さんについての理解やインサイトの発見が目的です。ただし、「得られたインサイトを次にどう繋げるか」といった具体的な目的設定はあえてしていません。
クリエイティブ作成のプロトタイピングなどに活用することはありますが、「Pocket Musubi」そのもののUIUX改善に直接繋げることは、インタビューの目的ではないのです。
常にさまざまな患者さんの声を聞くことで総合的な患者様の理解や発見したインサイトは、中長期的なプロダクトの方針や、事業活動での意思決定に繋がるはずだ、と考えて進めています。
― インタビューを通して、チームに変化はありましたか?
三宅さん: 最初はPMの3人でインタビューをしていたのですが、今はエンジニアや社内の薬剤師経験があるメンバー等のカレンダーにもインタビュー予定を登録して、任意参加出来るようにしています。
各メンバーの患者さんの理解が進んだ状態なので、以前よりリアリティーをもって会話できていると思います。具体的に「あの時、あの女性はこういっていたよね...」といったように実際の患者さんの顔を思い浮かべながら話せるか否かでは全然解像度が違います。そういった感性を参加メンバーは持ち始めているなと思います。
ユーザーの理解はチームのDNA 継続的に実施し、事業成長に繋げる
― ありがとうございます。最後に、今後の展望について教えてください。
三宅さん: ユニーリサーチを利用し、患者さんへのインタビューを始めてから半年以上が経ちました。今後もインタビューはチームのDNAとして継続して、事業成長に繋げていきたいと思います。患者さんの理解やインサイト発見は、1回知って終わりではありません。状況に応じて患者さんの置かれた状況は変化していくので、それを捉え続けることが大事です。
「Pocket Musubi」はビジネスモデルとしてはBtoBですが、エンドユーザーである患者さんに直接リーチできるサービスです。今よりさらに満足できる、医療現場に貢献していると自信を持って言えるプロダクトに育てていきたいです。