「おしゃべり」から気軽に始められるUXリサーチ 「UX成熟度」のレベルアップに貢献!
LIFULLは、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」をはじめ、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」など、幅広い領域の事業を通して社会課題解決に取り組む企業です。「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、ソーシャルエンタープライズとして一人ひとりの暮らしや人生が安心と喜びで満たされる社会の実現を目指しています。
同社ではサービスの品質管理に力を入れています。障害対応はもちろん、品質保証(QA)やセキュリティ分野だけでなく、ユーザビリティにも着目。2017年にはユーザーファースト推進グループを新設し、UXリサーチを積極的に推進する中、ユニーリサーチもツールの一つとしてご導入いただいています。
今回は、部署新設の立役者であり、同社一人目のUXリサーチャーであるテクノロジー本部ユーザーファースト推進ユニットの小川美樹子さんにユニーリサーチの貢献ポイントや他部門へ提案する際の工夫などをお伺いしました。
※本記事の内容は取材日2023年4月13日時点のものとなっています
ユーザーファーストな開発に向けてUXリサーチを活用する、ユーザーファースト推進ユニット
― 御社の事業と、小川さんのお仕事内容を教えてください。
LIFULLは、ソーシャルエンタープライズとして事業を通じた社会課題の解決に取り組んでいる企業です。主力事業は、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」の運営ですが、地方創生、介護など、さまざまな領域でサービスを展開しています。
私はテクノロジー本部ユーザーファースト推進ユニットの所属です。特定サービスを担当するのではなく、全社が展開するあらゆるサービスの開発をサポートし、文字通りユーザーファーストな開発を推進しています。たとえば、サービス開発担当部門からの依頼を受けてUXリサーチを実施したり、各サービスのユーザービリティ指標の計測を行ったり、といったことを実施しています。
― 小川さんが、UXリサーチに関わることになったきっかけを教えてください。
入社当初は、Webサイトのコーディングを主に担当していました。企画担当が仕様を作成し、デザイナーがUIを考え、その内容をWebサイトにしていたのですが、企画やデザイン段階では気にならなかったことが、使いにくさとして感じることがありました。サービスを開発しているみんなで頑張っているのに、最終的になぜか使いにくくなってしまう。でもその違和感を伝える言葉さえわからないことがもどかしくて...。何とかしたいと思い勉強を始めたところ、ユーザビリティやHCD(人間中心デザイン)といった、UXリサーチにつながっていく世界に辿り着きました。
しばらく草の根活動的に社内の有志メンバーとHCDやUXの勉強会を実施していたのですが、会社としても品質管理の部署がユーザビリティ向上に取り組むことになり、私は開発部門から異動。ユーザーファースト推進グループが新設されることになりました。
「UX成熟度」を導入し、組織におけるUX活動の浸透度合いを可視化
― 現在、ご相談の多い分野や特に力を入れていることはありますか?
開発に着手する前の仮説検証には力を入れています。開発後やリリース後のユーザビリティ評価は引き続き実施しているのですが、何を作るか決める段階や課題を解決する案を考えていく段階で、仮説検証していくことで、施策における不安要素を少しでも小さくしていこうとしています。最近は、企画立案をするための調査も増えてきています。全体的に前工程からUXリサーチを導入することが多くなっていると思いますね。
「UX成熟度」の導入も特徴的かなと思います。「UX成熟度」は、組織におけるUX活動の浸透度合いを示したモデルで、本来であれば組織全体の成熟度を見ていくものだと思いますが、私たちは開発チームごとに成熟度を可視化しています。成熟度の項目ごとに、できていない項目はフォローを行い、できている項目は次の成熟度に引き上げるなど積極的に成熟度を上げるためのサポートをしています。
出典:ニールセンThe 6 Levels of UX Maturity(nngroup.com)をもとに(株)プロダクトフォースが作成
― 「UX成熟度」が高いチームには、どんな特徴がありますか?また、成熟度によって小川さんが気をつけていることはありますか?
「UX成熟度」が高いチームでは、ユーザーを中心に据えた会話が自然になされています。また、リサーチを実施して、自分たちの仮説を後押しするような結果が得られなかった場合も素直に受け入れ、開発に繋げられていると思います。ユーザー課題と真摯に向き合っているリーダーのいる組織では、「UX成熟度」はどんどん上がっていくなとも感じています。UX成熟度のレベルごとに、受け止めやすいユーザーからのフィードバック内容も異なってきます。 各開発チームの状況を鑑みて、学びに繋がる最適なUXリサーチの提案を心がけています。
ユニーリサーチは、リサーチのハードルを下げ、ユーザーをより身近に感じられるツール
― ユニーリサーチは「UX成熟度」を上げるために、貢献できていますか?
はい。ユニーリサーチは、ユーザーを身近に感じられるという点で、とてもよくできていると思います。
従来の調査会社主体の調査では、応募者全員の募集が終わってから対象者をピックアップし、日付を調整し...となりますので、どうしても期間が長くかかってしまうことで大掛かりになり「ちょっと聞いてみたいな」くらいの気軽な調査を実施することは難しいです。大掛かりな調査の場合、「かけた工数分は、回収しないと!」とつい気負ってしまいますよね。
でも、ユニーリサーチは時間をかけずに手早く実施できるので、開発チームの方への提案も気軽です。「UXリサーチってハードルが高い」と感じているような成熟度が低いチームであっても、ユニーリサーチの手軽さであれば「ちょっと利用者の話を聞いてみましょう!」と提案できるのが良いですね。その結果を見て、本格的なリサーチを実施するかしないかの判断に使ってもらうこともできますし。
― リサーチのハードルを下げることができているようで、とても嬉しいです。
そうですね、ユニーリサーチは「調査」というより「おしゃべり」をする感覚に近いのかもと思います。その人が日常の中でどのようにサービスを使っているかだったり、その時の自然な気持ちを、普段通りに話してもらえていると感じています。実際、ある開発チームでは、ユーザーと触れ合う取り組みとして「ユーザー1on1」を実施しています。これは今まで直接ユーザーと接点を持ちづらかった企画やデザイナー、エンジニアとユーザーが話す場を設けて、開発チームのユーザー理解を促す取り組みです。 リサーチとは別のアプローチですが、とても活発にお話できていて、ユーザーとの距離感が近づいているようです。
― 実際に使う中で、便利だなと思う点はありますか?
応募者を五月雨式に確認できることが、一番ですね。募集開始して、その日の夕方にはインタビュー対象者を確認できるのでぜひインタビューしたいと思った方には、すぐにインタビューの候補日が送れます。次の日にはまたインタビュー対象者が増えているのでさらに確認して、といったサイクルを回すことができます。
また、同じ方に何回もインタビューできるのは大変ありがたいです(※)。正直リクルーティングは難しくて、どんなに事前質問を工夫しても「この方の体験は、今回の調査で伺いたい内容と違ったな」という場面はあると思います。ですので、私の場合は一旦30分のインタビューを実施し、もしぴったりの方なら深掘りのためのインタビューを追加でお願いする、といったこともしています。そうすることで、自分達が知りたい利用者の体験や状況を確実に見つけられていると思います。
※ユニーリサーチでは「リピート機能」で過去インタビュー実施したユーザーに再度調査を申込むことができる。
UXリサーチを導入しやすいよう、個人情報の取り扱いなどの事務処理をサポート
― ユニーリサーチを開発チームの方が利用される場合に、ユーザーファースト推進ユニットでは、どんなサポートを行っていますか?
募集内容やリクルーティング項目の確認は少なくともお手伝いしています。インタビューに同席して開発チームのメンバーが深掘りしきれなかった部分を、追加で質問することもありますね。また、個人情報の取り扱いについては、特に慎重になるべきポイントだと思いますので、インタビュー動画の管理など含めてユーザーファースト推進ユニットが一括で行っています。
開発チームには「ユーザーを理解する」といったような本質的な部分に集中してもらうため、事務処理は私たちの方で巻き取るようにしています。開発チームにも、ユニーリサーチを通じてUXリサーチを気軽なものに感じてもらい、UXリサーチの文化をもっと浸透させていけたらなと思います。
― 今後、ユニーリサーチでやってみたいことはありますか?
リサーチ手法としてトライしてみたいのは、継続調査です。同じ方に何回も聞けるというメリットを活かして、定期的にお話をうかがえたらいいですね。たとえば、「LIFULL HOME'S」では、家を探し始めた段階から内見、契約までのフェーズごとにインタビューできると、線で捉えられるので、より発見があるのではないかと思います。
また、現在はオンラインインタビューですが、今後は対面でのインタビューを実施したり内見に同行させていただいたり、ということも面白いかなと思います。