サービス愛に偏らない“フラットな声”を最短当日で。『家族アルバム みてね』がユニーリサーチで、ユーザー理解を“共通言語”にするまで
株式会社MIXIが提供する、ママ・パパが撮影した子どもの写真や動画を家族で共有できるアプリ「家族アルバム みてね」(以下「みてね」)。「世界中の家族の“こころのインフラ”をつくる」というミッションを掲げ、国内外で累計2,700万人以上のユーザーに愛されています。
一方で、規模が大きくなるほど、プロダクト開発の意思決定は難しくなります。そうした課題感から、2024年2月にUXリサーチチームが発足。そしてユニーリサーチの活用により、“フラットな声”を最短当日に集められる体制を整えたことで、ユーザー理解を共通言語化する仕組みが組織に根づき始めています。
今回は、UXリサーチチームのマネージャーを務める佐久間 由太加さん、同チームの上田 利瑳子さん、北嶋 日斗美さん、新井 まり子さんの4名に、ユニーリサーチ導入の背景と成果についてお話を伺いました。
※本記事の内容は取材日2025年12月16日時点のものとなっています
累計2,700万人に広がる「みてね」 ユーザー解像度を高めるUXリサーチチームが発足
― まずは「みてね」について教えてください。
佐久間さん: 「みてね」は、スマホで撮ったお子さまの写真や動画を共有できる家族アルバムサービスです。写真・動画は無料で無制限にアップロードでき、お子さまの成長にコメントし合いながら、家族みんながコミュニケーションを楽しめる場になっています。
また近年、フォトブックや写真プリント、デジタルフォトフレームなど「みてね」内の写真を活用したサービスを複数展開するほか、「みてねみまもりGPS」の提供を開始するなど、写真共有に限らず家族ニーズに応える形で事業領域を広げています。
2015年のリリース以降、累計利用者数は全世界で2,700万人を突破。現在は7言語に対応し、175の国と地域で提供しています。
― UXリサーチチームの役割について教えていただけますか?
佐久間さん: UXリサーチチームは、横断組織として2024年2月に発足しました。本日参加している4名がメンバーです。新規開発や機能拡張などのタイミングでリサーチの依頼を受け、調査設計から実施までをサポートしています。
インタビュー等の定性調査から、アンケートによる定量調査も含めて、ありとあらゆる調査が行われています。当初は社内的に、「UXリサーチチームって何するんだ?」という反応もありましたが、案件を重ねる中で信頼を得て、今では多くの相談が寄せられています。
― UXリサーチチーム発足には、どんな背景があったのでしょうか?
佐久間さん: 「みてね」は、事業責任者である笠原自身の「自分の両親や他の家族に、どう子どもの写真を共有するか」という原体験から始まったサービスです。
初期メンバーは数名でしたが、いまは正社員だけでも110名を超える組織になりました。その過程で、チームメンバーがそれぞれのユーザー理解・使い方のイメージを持つようになり、会議での議論がメンバーの主観に引っ張られてしまう場面もありました。メンバー自身もユーザーとして使い込んでいる分、プロダクトへのこだわりも強いんです。
だからこそ、お客様が本当は何を考え、どう行動しているのかを俯瞰して捉えるために、UXリサーチの手法が必要だと考えました。組織全体でユーザー解像度を上げるために立ち上がったのがUXリサーチチームです。
上田さん: 施策の成功を一過性で終わらせず、「再現性」を高めていこうという狙いもありました。UXリサーチチーム発足以前から、デザイナーやビジネス職のメンバーがアンケートやインタビューを実施することはありましたが、知見が特定のチームに偏り、スキルや情報が属人化している状態だったと聞きました。ユーザー数も組織も拡大するなか、一つひとつの施策を確かな成功につなげ、その成功を再現可能な形で積み上げていくためのリサーチの重要性が、これまで以上に高まっていました。
“フラットな声”を、もっと早く集めるためにユニーリサーチを導入
― ユニーリサーチ導入の背景を教えてください。
佐久間さん: これまでは、社内のユーザーヒアリングや、「みてね」アプリ経由でのユーザーインタビューを中心に行っていました。ただアプリ経由で募集をかけると、どうしても「みてね愛」が強い方に偏ってしまいます。結果として、いわゆる“ポジティブな声”ばかりを聞く状態になっていました。
新規事業を検討するうえでも、もっとフラットな層の声を聞きたい。もちろん愛用いただいている方の声も大切ですが、より広いユーザーが「みてね」をどう捉え、何を期待しているのかを知る必要があると感じていました。
北嶋さん: そのための手段を考えたときに、私が前職で使っていたユニーリサーチが思い当たりました。使い勝手もメリットも分かっていたので、他サービスはほとんど比較検討せずに導入を決めました。
上田さん: それ以外にも「みてね」アプリ経由だと、個人情報取得の同意フローや管理等に関わる社内手続きも含めて、調整が大変でどうしてもリードタイムが長くなってしまいます。インタビュー実施までに1ヶ月程度かかることもありますね。対象者募集のアンケート配信においては、アプリ通知やユーザーコミュニケーションを統括してくださっているマーケティング担当者との連携も重要なため、配信枠の都合で時期調整も毎回必要です。
「まず募集してみよう」ですぐに集まる。ユニーリサーチの瞬発力と安心感
― 使い勝手の面で、特に気に入っているポイントはありますか?
上田さん: 例えば「来週ユーザーの声が聞きたい」と依頼があったとき、以前は「それは無理です」と断らざるを得ない状況でした。でもユニーリサーチなら、最短当日、もしくは翌日には実施できます。これまでは諦めていたユーザーの声も、必要なタイミングで取り入れられるようになりました。
北嶋さん: 対象者募集の観点で、たとえば利用頻度が高くない方の話を聞きたいとき、アプリ経由ではなかなか集まらないだろうと思います。でもユニーリサーチなら、「もしかしたら答えてくれるかも」という感覚で、気軽に募集を出せます。実際に沢山の方が応募してくださり、インタビューも実施できました。募集自体には費用が発生しないので、集まるか分からなくても、「まず募集してみよう」と思える気軽さがすごく良いですね。
また、アンケート画面の工夫を自分たちでできる点も良いですね。PC画面では作成中のアンケートがプレビュー表示されるため、それを見ながら「文字が長すぎる」「選択肢を工夫しよう」と、その場で調整できます。
新井さん: あとは、対象者のレスポンスがとにかく早い印象です。対象者がLINEで気軽に情報を受け取れる仕組みがあるからこそだと思っていて、安心感がありますね。前職でも活用していたのですが、その時はクライアントワークだったので、対象者が来ないとクライアントにも申し訳ないことになってしまう。だからこそ、すぐにお相手とやりとりができるという信頼感はとても大きかったです。
また、「こういう機能があったらいいのに」と思っていたら、ユニーリサーチさんは開発が早いので少し経つとその機能が追加されていたりします。サービスが進化し続けているので、使い続けるほど良くなっていく期待感がありますね。
佐久間さん: 私が最も良いと思うのは、社内手続きがすごく簡略化できることですね。瞬発力という面でも最高のサービスだと思っています。協力者さんへのパーミッションを適切に取れる安心感があり、見積もりのやり取りも自動化できる。Webサービスとしてスムーズに使える点が便利ですね。
30分インタビューで社内を巻き込む。参加ハードルが下がり、見に来る人が増えた
― インタビューの進め方や、社内の巻き込み方に変化はありましたか?
北嶋さん: インタビューは普段60分で実施することが多いのですが、30分インタビューを試したことがありました。短い枠でも実施できるようになったことで、インタビュー設計の自由度が広がったのは大きかったですね。
社内では、さまざまな職種のメンバーにインタビューを見てほしくて情報を共有しています。30分枠だと「ミーティングの合間に少しだけ聞ける」と参加してくれるエンジニアもいて好評です。
上田さん: 30分にすることで、インタビューに参加してもらうユーザー側・それを見に来る社員側の両方で参加のハードルが下がった感覚があります。ユーザー側で言うと、たとえば仕事中のパパが、お仕事の合間を縫って車の中から30分だけ参加してくださったケースもありました。
― ユニーリサーチに対して、今後のご要望はありますか?
北嶋さん: 海外のユーザーにも、国内と同じくらいの気軽さでインタビューができるようになると嬉しいですね。海外ユーザー比率も高まっているので、より解像度を上げていきたいと感じています。
― ありがとうございます。海外ユーザーの声をより深く捉えるためのプロダクト開発も、今後の検討テーマとして進めています。ぜひご期待ください!
「コメントするの気恥ずかしい」想定外の発見が新たな議論を生む
― みなさんが、印象に残っているインタビューがあれば教えていただけますか?
北嶋さん: 私が印象に残っているのは、写真のアップロード頻度が低い方へのインタビューです。頻度が高い方とは、「みてね」をどう捉えているかが少し違っていて、それが面白かったですね。
たとえば、自分が利用主体ではなく「みてねはおじいちゃんや、おばあちゃんのため」と考えている方がいたり、「利用頻度の高いママの意向に合わせて使う」というスタンスのパパもいました。誰のために、どう使いたいのかによって、利用の背景が変わることが見えてきました。
上田さん: 以前社内でも話題になったのが、ある方がぽろっと言った「コメントが恥ずかしい」という言葉です。
「みてね」はコメント機能があり、家族内のクローズドなSNSのように使える側面もあるため、企画側では「より活発なコミュニケーションを促したい」という議論がありました。そうした中で、アップロード頻度が低い方へのインタビューを通じて、コメント機能が使われない理由として「家族とニコニコやりとりするのが、なんだか気恥ずかしい」というインサイトがあることに、改めて気づかされました。熱量高く使っている方からは出てこない発言だったので、そうした方にとっても使いやすいサービスになるにはどうすればいいのか、議論のきっかけになりましたね。
佐久間さん: まさに、想定外のところから新しいアイデアや議論が始まるというのが、インタビューの価値ですよね。
上田さん: インタビューを重ねる中で、「みてね」が実際にどんな関係性の中で、どう使われているのかを仮説として立てられるようになってきました。「コミュニケーション」という軸でも、まだ伸ばせる可能性があると感じています。
移り変わる「マインド」を捉える「みてねUXすごろく」が社内の“共通言語”に
― 先日の「RESEARCH Conference 2025」では、「みてねUXすごろく」を発表されていました。一般的なペルソナとは、また違うアプローチですよね。
佐久間さん: 「みてねUXすごろく」は、これまでのリサーチの集大成です。調査ごとに得られたユーザー理解を統合し、社内で共有・議論しやすい形にまとめました。
発表内容やカンファレンスの様子は、「みてねのデザイン」noteでも公開しています。
https://note.com/mitene_design/n/nc783c1c8c6a0
上田さん: 当初は、いわゆるペルソナの形で「『みてね』の代表的なユーザー像」を作ろうとしていました。ただ、お子さまの成長や家族の状況によって使い方が大きく変わるサービスなので、ひとりの人物像として固定するのが難しかった。
そこで、インタビューを重ねる中で見えてきた、感情や行動の変化をもとに、ユーザーの“心の動き”を4つの「マインド」として整理しました。重要なのは、これが段階的に進むものではなく、状況に応じて行き来する“状態”として捉えるようにしました。
たとえば、生まれてすぐ家族にかわいい我が子をたくさん見てほしい「見て見て!マインド」から、「親族気遣いマインド」「義務感マインド」へと移っていくこともあれば、溜まった写真や動画を見て「ほっこりマインド」に進むこともある。そうした“行き来する気持ちの変化”を捉え直した形です。
さらに、その変化を誰でもイメージしやすいように「すごろく」という形に落とし込み、社内のユーザー理解を底上げするための「共通言語」として使えるようにしています。
世界中の家族の“こころのインフラ”へ UXリサーチチームの次の挑戦
― 最後に、今後の展望について教えてください。
佐久間さん: 事業部全体としては「世界中の家族のこころのインフラをつくる」をミッションとして掲げています。
その中でUXリサーチチームとしては、これまで「きっとこうだろう」という仮説で進めてきた部分を、ユーザーの声を通じて可視化し、確かな意思決定につなげていきたいです。
たとえば、おじいちゃん、おばあちゃんやパパなど、まだ十分に解像度を上げきれていないユーザー像をより深く理解することに、チームとして主体的にチャレンジしていきたいと思っています。また、175の国と地域で展開する中で、海外ユーザーについて文化背景を含めた理解がまだ十分ではないと感じています。海外のユーザーの声も丁寧に捉えながら、解像度を高めていきたいです。
新井さん: 私も、海外でのユーザー理解をもっと深めていきたいです。文化や宗教、家族のあり方によって使い方も大きく変わると思うので、そうした違いを丁寧に紐解きながら、より幅広いユーザーに愛されるプロダクトにつなげていけたらと思っています。
また、高齢の方など、オンラインのインタビューだけでは捉えづらいユーザーもいると思うので、必要に応じて訪問調査なども活用しながら、日常の中でどう使われているのかを明らかにしていきたいですね。
上田さん: 私自身が「みてね」にジョインした動機でもあるのですが、もっと「みてね」を多様な家族にとって、より使いやすく、愛されるサービスにしていきたいと思っています。そのためのデザインやリサーチに取り組んでいきたいです。
最近のインタビューでも感じたのですが、現状はどうしても“子どもが小さい時期のサービス”になりやすい。そうではなく、たとえば成人した時にその子にアルバムを受け継いでいくとか、子の世代、孫の世代でも永続的に使い続けられるような形など、もっと長い時間軸で家族に寄り添えるサービスにしていけたらと考えています。
― 貴重なお話をありがとうございました!



