AI × ユニーリサーチで「AIペルソナ」を起点に広がる生活者起点の企画づくり
株式会社NTTデータは、世界70か国以上で事業を展開し、社会インフラから民間企業まで多様な領域でビジネスを支えるITサービス企業です。アイデア段階から現場での運用まで一気通貫で伴走できることを強みに、蓄積した知見とグローバルネットワークを生かしながら、社会の変化に応じた価値創出に取り組んでいます。
同社では、ユニーリサーチで得た“実在する生活者の声”をもとに「AIペルソナ」を構築し、企画提案やクライアントとの議論に活用しています。急速に進化するAI技術と、必要な声をすぐに手にできるユニーリサーチ。この2つを掛け合わせることで、生活者理解はより深く、企画の精度も一段と高まっています。
今回は、流通・小売事業部 道下 良司さんと、コンサルティング事業部 昆野 正照さんに、ユニーリサーチを活用した「AIペルソナ」構築の背景と具体的な取り組みを伺いました。
※本記事の内容は取材日2025年12月3日時点のものとなっています
企画提案の出発点をアップデート 生活者理解を深めるAI×リサーチ
― お二人が所属されている事業部について教えてください。
道下さん: 私が所属する流通・小売事業部は、コンビニ、専門小売店、商業施設など、生活に身近な企業様をご支援する組織です。現場のオペレーションをしっかり理解したうえで、デジタルやデータ活用を組み合わせ、サービスの立ち上げから全国展開まで長く伴走できるのが強みです。オンラインとリアルをつなぐ新しい買い物体験の検討など、未来の購買行動を描くプロジェクトも増えています。
流通・小売事業部 道下 良司さん
昆野さん: コンサルティング事業部は、各領域の事業部がお客様と向き合う中で、戦略的なテーマが生じた際にプロジェクトを組成し、専門的に支援する役割を担っています。また、プロジェクト支援と並行して、「社内のアセット作り」を進めています。コンサルティングを属人的な知見にとどめず、領域横断・業界横断で活用できる仕組みとして再現性を持たせることを目指しています。
コンサルティング事業部 昆野 正照さん
― お二人の担当業務についても教えてください。
道下さん: 私は、サービスの構想段階からお客様と方向性を定め、企画を設計していく役割を担っています。近年は「そもそも何をすべきか」という最初の問いから試行錯誤されるお客様が増えており、とくに生活者向けのサービスでは、ニーズを丁寧に見極めることが欠かせません。
理解を深めるために、データやAIを使って生活者像を具体的に描き、それを起点に企画を組み立てることが重要だと考えています。今回の「AIペルソナ」も、そうした背景から生まれたもので、特定のサービスとして外部に提供・販売しているものではなく、お客様ごとの課題に向き合う中で活用している取り組みの一つです。
昆野さん: 私は、リサーチや社内ナレッジにAIを掛け合わせ、企画設計の前提となる生活者理解を深める仕組みづくりに取り組んでいます。人が何を考え、なぜその行動に至るのかを構造的に捉えるフレームとして「インサイトプロセス」を定義し、実際のプロジェクトで活用できるよう社内に浸透させることが主な役割です。
リサーチスキル研修や、ユニーリサーチをはじめとした外部パートナーとの連携など、事業領域を越えて知見を共有するための基盤づくりも進めています。
これまでは、プロジェクトごとに蓄積される情報を横串で活かすにはハードルがありましたが、AIの進化によってナレッジの整理・再利用が格段にしやすくなりました。
今はまさに、 “勝負時”だと感じています。
実在の生活者の声を土台に、「AIペルソナ」で企画精度を引き上げる
― 「AIペルソナ」の開発に、ユニーリサーチを活用された背景について教えてください。
道下さん: 店舗向けの新サービスを企画するにあたり、生活者がどんな場面で不便を感じ、どんな価値を求めているのかを把握する必要がありました。しかし、現場の感覚だけでは限界があり、企画の根拠がどうしても曖昧になってしまうという課題感がありました。
そこで、実在する生活者へのインタビューをもとに「AIペルソナ」を構築し、AIと対話しながらニーズを深掘りする方法を試しました。AIのみでペルソナを作ってしまうと根拠がはっきりせず、「どこまで信じてよいのか?」という疑念が残りがちです。一方で、ユニーリサーチで得た生声をインプットにすることで、実態に近いペルソナが作れると考えました。
私たちが目指したのは、「このサービスならいけるはずだ」という提供側の発想ではなく、生活者が本当に使いたくなるものをどう実現するか、という企画のあり方です。クライアントとの議論でも、「生活者はこれを求めている」という根拠を提示しながら話せるので合意形成がしやすくなり、実行スピードも上がったと実感しています。
― 「AIペルソナ」は、具体的にどのように作られているのでしょうか。
昆野さん: 「AIペルソナ」は、ChatGPTのカスタムGPT機能を使って作成しています。
制作方法は驚くほどシンプルです。ユニーリサーチで得た生活者インタビューをまとめてカスタムGPTに読み込ませ、「どんな目的のペルソナか」「どのような利用シーンを想定するか」を指定するだけで、短時間でベースが出来上がります。数時間あれば形になるほど手軽に始められるのが利点ですね。
実際には、AIの発言内容を確認し、企画の壁打ち相手として適したアウトプットになるよう数十回以上のチューニングを行うことで最終的なAIペルソナが完成します。
AIペルソナ制作のプロセス
スピーディーに声を集められるユニーリサーチが「AIペルソナ」を効率的にチューニング
― ユニーリサーチを導入して、よかった点を教えていただけますか。
道下さん: まずは、生活者の声をすぐに集められる点です。ターゲットの意見を一定数集めようとすると、これまではどうしても手間や時間がかかっていましたが、ユニーリサーチなら最短当日からインタビューまで進めます。価格もリーズナブルなので、「もう少しここを深掘りしたい」時にも追加調査を気軽に行うことができました。
声が蓄積されていくことで、企画段階から自然と生活者の視点でチェックが入るようになり、私たち提供側の思い込みによるリスクを早い段階で発見できた点も大きかったと感じています。
昆野さん: 日程調整などの手間がほぼツール化されているので、インタビューの本質的な部分に集中できます。本当に考えて作り込まれているツールだなと感じますね。
「AIペルソナ」の観点では、クイックに人の声を取りにいける仕組みが非常に効きました。構築を進める中で、「もっとこういう視点がほしい」と何度もアップデートを重ねる中、AIに読み込ませるインタビューデータを追加していく必要がありました。
ユニーリサーチなら、必要なタイミングですぐにインタビューできる。 「インタビュー → AI改善 → 追加インタビュー」のサイクルを高速で回せたことが、精度向上につながりました。もしインタビューの度に数週間のリクルーティングが必要だったら、このスピード感は絶対に生まれません。ユニーリサーチだからこそ実現できたプロセスだと思います。
何度でも遠慮なく質問を繰り返し、「気持ちの流れ」と「本音のニーズ」に迫る
― 「AIペルソナ」の活用で、どんな変化を実感していますか?
道下さん: これまでの企画では、アンケートから得られる傾向をもとに議論することが一般的でした。ただ、サマライズされたデータだけでは、生活者が本当に求めている価値が見えにくく、深く刺さるサービスにつながりにくい、あるいは競合と似たものになってしまうという課題を感じていました。
「AIペルソナ」により大きく変わったのは、生活者の「気持ちの流れ」を丁寧に追えるようになったことです。サービスニーズは、利用シーンや時間帯によって細かく変わり、一日の中で移り変わる気分を生身の人に繰り返し聞くのは難しい。一方で「AIペルソナ」なら、何度でも壁打ちができ、ためらわずに深い質問を重ねられます。
さらに、複数のペルソナを比較することで、同じテーマでも人によって重視するポイントがどう異なるのかも把握できるようになりました。「この人の、このシーンでは、このニーズが正しい」という実感をもった議論ができるようになりました。
また、「AIペルソナ」はニーズ発掘だけでなく、作ったコンセプトは生活者の目にどう映るか、どんな打ち出し方が効果的なのかの壁打ちにも使えます。企画プロセス全体の質を底上げしてくれていると感じています。
― 「AIペルソナ」に繰り返し質問をしていく中で、ほかに見えてきたものはありましたか?
道下さん: サービス企画では、ユーザーが「欲しい」と言ったものを形にしたのに使われない、ということがよくあります。たとえば「健康を意識している」と言いながら、実際はハイカロリーな商品を選んでしまう。
私自身も経験がありますし、世の中でも同じような事例をよく見かけます。言葉として表れるニーズと、実際の行動は必ずしも一致しないからです。
そんな“ギャップ”を捉えるには、角度を変えながら深い質問を何度も重ねる必要がありますが、「AIペルソナ」はこのプロセスを気兼ねなく繰り返せる点が非常に有効でした。やり取りを続けるうちに、表面的な言葉の奥にある本音や、生活者自身も気づきにくいニーズを深く検証することができます。
そうした気づきが積み上がることで、新しい視点を得やすくなり、ユーザーインサイトに根ざした企画の輪郭がよりはっきりと見えてくるようになりました。
― 「AIペルソナ」のインプットデータとして、どういったインタビューをされているのでしょうか。
道下さん: インタビューではまず、言葉と行動のズレを確かめるために、生活者が「実際に何をしているのか」を事実ベースで伺うところから始めています。「最近何を買いましたか」「どんな場面で、どの店舗を利用しますか」といった、実際の行動を丁寧に聞き、そのうえで「なぜそうしたのか」という背景に踏み込んでいきます。
そこから仮説を立て、「その理由をこうおっしゃっていますが、実は別のニーズもありませんか?」と、質問を重ねていきます。行動というブレない事実と、その裏側の動機を行ったり来たりしながら、さまざまな可能性を確かめていくイメージです。
インタビューを続ける中で「これは面白い兆しだ」と思える仮説が出てきたら、次の対象者にはその仮説をぶつけて確かめる、そんなサイクルを繰り返します。すると、一言目二言目には出てこないような発見が得られてくると感じています。
企画の主体性は人間に。“もう一人の生活者”と議論を進める
― 商談の場で、「AIペルソナ」はどのように使われるのでしょうか?
道下さん: たとえば「A案とB案のどちらが生活者に響くのか」と議論して行き詰まったとき、「AIペルソナ」に問いかけてみると、「そんな視点があるのか」という新しい糸口が見つかることがあります。
重要なのは、AIを“正解を出す装置”としてではなく、企画やアイデアづくりの触媒として使うこと。人間同士の議論では視点が固定されがちな場面でも、「AIペルソナ」という“第三の視点”が入ることで考えがほぐれ、会話が再び動き始めます。結果として、議論が前に進みやすくなると感じています。
企画の主体性はあくまで人間が持つべきです。そのうえで「AIペルソナ」は、商談の場に「もう一人の生活者」がそっと同席しているような、視点を広げてくれる存在だと捉えています。
「AIペルソナ」を当たり前の道具に、日本のものづくりプロセスをアップデート
― 最後に、今後の展望について教えていただけますか。
道下さん: 私は、「AIペルソナ」をもっと“当たり前の道具”として広げていきたいと考えています。生活者のニーズと少しずれたサービスが生まれてしまう背景には、初期の仮説検証が十分にできないまま企画が進んでしまう構造があります。「AIペルソナ」が一般化すれば、その初歩的なつまずきを防ぎ、より多くの企業が生活者に合ったサービスを低コストで形にできるはずです。
「まずAIペルソナで仮説を確かめてみよう」という文化が根づけば、投資判断の精度も上がり、良い企画が循環しやすくなる。そうした環境づくりに、NTTデータとして貢献していければと思っています。
昆野さん: リサーチの結果が本当に正しいのか、その確かさをどう担保するかは、今後ますます重要になる、注力すべき取り組みだと思います。ユニーリサーチのような質の高いインプットに加え、AIが「どの発言を根拠に答えているのか」を説明できるようになれば、「AIペルソナ」の信頼性も大きく高まります。
同時に、私が広げていきたいのが「インサイトプロセス」です。日本には優れた技術や製品がありながら、ユーザー理解が十分でないことで価値を届けきれないケースが多くあります。この“ものづくりとユーザー理解のギャップ”を埋めることが、私の大きなテーマです。
生活者の視点を当たり前に取り入れられる土台が整えば、良い企画が生まれる確率も、社会に届くスピードも確実に上がっていくはず。そんな生活者起点のものづくりが広がる未来に向けて取り組んでいきたいと思っています。



