リサーチが特別なことから“当たり前”に。コスト負担少なくリクルーティングできるようになり「リサーチの民主化」が進んだ

パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社は、パナソニックグループのモビリティ関連事業を担う企業として、カーナビや車載カメラ、ヘッドアップディスプレイといった電子機器を開発・製造・販売しています。国内外の自動車メーカーを顧客に持ち、パナソニックならではの先進技術を提供。世界一の「移ごこちデザイン」カンパニー、という企業ビジョンを掲げ、豊かな移動体験の実現に取り組んでいます。
同社の新事業推進室では、新事業に向けた機会探索や、サービスローンチ前後の検証にユニーリサーチを活用いただいています。
今回は、UXデザインマネージャーの小林 広樹さんに、ユニーリサーチ導入の効果などを伺いました。
※本記事の内容は取材日2025年3月25日時点のものとなっています
企画〜開発〜営業まで、新規事業の創出とグロースを一気通貫で担う新事業推進室
― 新事業推進室について教えてください。また、小林さんが所属するUXデザインチームはどんなお仕事をされているのでしょうか?
小林さん: 新事業推進室は、その名の通り「新事業の創出と推進」をミッションとした社長直下の組織です。
現在は2024年にローンチしたばかりの、LPガス販売事業者様向け配送効率化サービス「DRIVEBOSS® LPガス」と、法人向けのカーナビアプリ「Gorillada PRO」の推進が主ですね。さまざまなスキルを持ったメンバーが集まり、企画から開発、営業活動までを新事業推進室内で一気通貫に行っています。
UXデザインチームでは、たとえばユーザーインタビューで課題やニーズを発掘する。開発要件を整理する。具体的なUIをデザインする。開発チームに引き渡して、できあがったものを「使いやすさ」や「わかりやすさ」の視点で評価する。お客様に届けて、ヒアリングやレクチャーを行う。といったように、プロダクトの最初から最後までを見届けています。また、WEBサイトやブランドデザインにもマーケティングメンバーと協力しながら取り組んでいます。

― 新事業創出に至るまで、どんなステップで進んでいくのでしょうか?
小林さん: 私たちは、「ステージゲート方式」を採用しています。各ゲートの定義に基づいて、進める・やり直す・撤退するという判断を、定期的に行う仕組みです。なるべく初期の段階ではコストをかけず、自分たちの手を動かしながら進めます。多くの試行錯誤を積み重ねて、いくつの事業を形にできるかが勝負だと思っています。
スタート地点にあるのは、「どんな課題に向き合いたいのか?」「なぜこれをやりたいのか?」といったメンバーそれぞれの想いです。熱がないと、どうしても途中で続かなくなってしまうので、想いの強さを確認するのが最初のゲートです。
そこから、課題の深さや重要性、そしてサービスニーズがあるかを探っていきます。最初のアプローチは、「探索」や「課題の仮説検証」をユニーリサーチを使いながら確認します。そして、ペーパープロトタイプ(紙や画面にサービスアイディアを書き出したもの)も活用し、更に深く検証を進めていきます。
ビジネスとしての可能性が見えてきた段階で、より確からしさを検証できるプロトタイプを作ります。その後は、マネタイズの方法も含めて、ひとつひとつのフェーズを進めていくかたちですね。
ローンチ前後の検証や新しいプロダクトの“芽”を探すためにユニーリサーチを活用
― ユニーリサーチは、どんな場面で活用いただいていますか?
小林さん: ユニーリサーチは、大きく3つの場面で活用しています。
まずは、新しいプロダクトの“芽”を探すフェーズ。メンバーそれぞれが挑戦したいテーマをいくつも持っていますが、それが本当に世の中に必要とされているのか、課題としての重要性があるのかを、ユニーリサーチで確かめています。
次に、ローンチ前の検証フェーズ。顧客の声を聞き、サービスの精度をあげていきます。
そして最後が、ローンチ後の検証。実際にプロダクトを使ってもらいながら、使い勝手を確認し、改善のヒントを探ります。新たな業界へ展開できないかといった機会探索にも活用しています。
結果として、課題の発見、ローンチ前の検証、ローンチ後の改善まで、プロダクトのライフサイクル全体を通してユニーリサーチを活用しています。
― ユニーリサーチを使い始めたきっかけについて教えて下さい。
小林さん: 最初にユニーリサーチのことを聞いたときは、「えっ、そんな価格で調査できるの!?」と正直驚きました。
グループ内では既に使われていたので、「これ、すごく安く調査できるらしいよ」という情報が私たちのところにも伝わってきました。「安いって、どれくらい?」と思って見てみたら、本当に「うそだろ...」というくらいの価格感でした。
それまでのリサーチといえば、調査会社に依頼して分析含めて1人あたり10万円...といった相場感が頭の中にあったので、かなりギャップがありました。
分析は自分たちで実施するので、この価格でリクルーティングできるなら、まずは試してみようと。入社して間もないタイミングでしたが、すぐに使い始めました。
リクルーティングのしやすさが最大の魅力 ハードルが引き下がり「リサーチの民主化」が進んだ

― ユニーリサーチを実際に使ってみて、一番気に入っているポイントはどんな点ですか?
小林さん: リクルーティングのしやすさが、やはり最大の魅力です。パナソニックグループ内で募集することもできますが、たとえば私たちが普段まったく接点のない方にも、条件を絞ってアプローチできるのは、率直にすごいなと感じます。
必要に応じてすぐに軌道修正できるのもありがたいです。時間もコストも抑えられるので、「AがうまくいかなければBを試してみよう」といった切り替えも柔軟にできる。大手の調査会社ではなかなか難しい動き方なので、そういった意味でも、本当に助かっています。
― 導入の効果として、感じていることはありますか?
一番大きかったのは、「リサーチのハードルがグッと下がったこと」だと思います。
必要な時、すぐにリサーチできる。コスト面でも負担が少ない。そうした手軽さがあることで、リサーチは“特別なこと”ではなく“当たり前の手段“になってきました。
これまでは、「リサーチは何百万円もかかるもの」というイメージがあって、正直、ハードルの高さがありました。でもユニーリサーチを導入して、「リサーチってこんなに手軽にできるんだ」という意識にチーム全体が変わっていきました。
こうした状況はまさに、「リサーチの民主化」が進んでいると言えるのではないでしょうか。
導入当初は私から積極的に声をかけていましたが、約2年が経った今では定着し、メンバーが自発的にリサーチを進めています。新事業推進室だけでも、これまでに150件以上のインタビューを実施しました。
BtoB事業においては「ターゲットを取り巻くステークホルダーまで含めて理解すること」が重要だった
― 事業開発を進める中、得られた気づきについて教えてください。
小林さん: 実は最近、大きな反省がありました。
配送効率化サービス「DRIVEBOSS™ LPガス」は、経験の浅い若手配送員の業務効率化を目指していて、リサーチでも若手の声を中心に集めようとしていました。しかし、いざ現場で使ってもらうと、フィードバックをくれたのは主にベテランの方々でした。
「今回のターゲットは若手だから…」と、正直最初はベテランの意見をあまり受け止められていませんでした。しかし、よく考えてみると、導入の判断をするのはベテランや管理職の方たちです。
「8割のベテランが納得しないと導入されない」というお客様もあり、自分は関係者全体をステークホルダーとして見る、BtoB事業に必要な視点が欠けていたと反省しました。
頭ではわかっていたはずなのに、リサーチを進める中で自然と「ターゲットの声を聞けば正解」という思い込みに引っ張られてしまっていたのだと思います...。
“ターゲット”だけでなく、その周囲の関係者も含めて理解することの大切さを痛感しました。
― 小林さんが今後実現したいことについて教えてください。
小林さん: 個人的な想いになりますが、世の中には日々、さまざまなことで困っている人がたくさんいます。すべての人を助けることはできなくても、一人でも多くの方が少しラクになれるようなプロダクトを届けたいと思っています。
そのためには、まず「自分の知らない世界を知ること」が大切だと感じています。ただ知識を得るだけでなく、実際の現場がどうなっているのかを体感することで、“自分ごと”として共感できるようになる。そうやって現場の困りごとをリアルに感じることで、本当の課題が見えてくると思います。
世の中を少しでも良くできたらという想いで、日々の活動に取り組んでいます。
