『訪問調査』でユーザー宅での調査を実施 「蛇口一体型浄水器」のトップメーカーが挑むユーザーの声を重視した新規事業開発とは
タカギは「蛇口一体型浄水器」と「園芸散水用品」の2分野でトップシェアを誇るメーカー様です。福岡県北九州市に本社を置く同社は、九州ではまだ珍しかったプラスチック射出成形金型の設計・製作会社として1961年に創業。現在国内に22拠点、海外では2拠点を構えています。(2024年3月現在)
タカギの発展の原動力の一つは「挑戦する風土」にあります。10年以上にわたり新築マンション市場において蛇口採用率No.1(※タカギ調べ)を維持する「蛇口一体型浄水器」も、入社2年目の若手社員が顧客の声をもとに開発を担当しました。そして2022年には新規事業部を開設。今後の50年を見据えたビジネス創造に向けて力を入れています。
今回はユニーリサーチを活用し、訪問調査を実施された新規事業部 新規事業開発課 佐々木滋さん、栗原芽来美さん、早崎来未さんに実施後のご感想などをお伺いしました。
※本記事の内容は取材日2024年2月28日時点のものとなっています
「蛇口一体型浄水器」と「園芸散水用品」の2分野でトップシェアを誇る北九州市のメーカー
新規事業部 新規事業開発課 佐々木滋さん― 御社事業と、みなさまのお仕事について教えてください。
佐々木さん: 当社は、家庭用の浄水器と散水用品を手掛けるメーカーです。自社開発の「蛇口一体型浄水器」は、新築マンションの採用率でトップシェアとなっており、浄水カートリッジについても多くのお客様にご利用いただいています。
日本の全世帯数を考えれば、まだまだ巨大な市場が眠っています。しかし、50年先を考えると、人口減少も背景に住宅着工戸数は減少が見込まれており、企業として成長し続けるには新規事業の開発が必要。そこで「まずは動いてみよう!」と始まったのが、我々が所属する新規事業部 新規事業開発課です。
新規事業開発課では、浄水器事業と散水用品事業のアセットを活用しながら、既存事業とは異なるお客様層へアプローチ出来ないかを調査しています。メンバーは5人。新規事業開発については全員が未経験だったので、まさに手探り状態からのスタートでした。
「フラットな意見」を聞き、仮説の根拠とするためにユニーリサーチを活用
― ユーザーインタビューを取り入れたきっかけについて教えてください。
佐々木さん: 新規事業開発のノウハウを学ぶために人脈を広げる中で、ユーザーインタビューに積極的に取り組んでいる方の話を聞き、「当社でも試してみよう」と考えました。
以前は仮説を元に資料をまとめても、根拠がなく自分でも自信が持てませんでした。ユーザーインタビューの結果を元に、解像度を高める事でプレゼンの質も高める事ができると期待し、チームに提案しました。
― なぜユニーリサーチを選んでくださったのでしょうか?
佐々木さん: 大手の調査会社に依頼すると、何十、何百万円もの費用がかかってしまい、現実的ではありませんでした。
そこで、当初は既存のお客様に話を聞こうと考えていました。しかし当社製品に好意的な方に聞いても、新しいカテゴリの製品づくりに必要な「フラットな意見」を伺えるのだろうか、という懸念がありました。また対象者を集めるためには自社サイトに掲載する募集バナーを作成して...といった準備も必要だったので、そのプロセスに工数と時間がかかることも難点でした。
手頃に始められるサービスを探している中で、ユニーリサーチを見つけました。この費用感であれば、たくさんのインタビューを実施できると思い、導入しました。
生活シーンをダイレクトに感じ取れた訪問調査 事業判断に必要な情報量が増えた
新規事業部 新規事業開発課 栗原芽来美さん(左)、早崎来未さん(右)― 今回、ユニーリサーチの新機能の『訪問調査』(※1)を活用した目的を教えてください。また実施してみての感想はいかがでしょうか?
佐々木さん: 今回はユーザーの自宅での水の飲み方をテーマに、訪問調査を行いました。自宅での飲み水には、蛇口一体型浄水器以外にミネラルウォーターを購入している方やウォーターサーバーを自宅に設置している方など多くのパターンがあります。そのような中で、当社ならではのアセットを活かした課題解決の可能性を探るためには、実際にユーザーの自宅に伺い、生活そのものや製品・商品を使っている様子を見せてもらう必要があると、考えていました。
栗原さん: オンラインインタビューとは違って、訪問調査では様々な水の飲み方をしているユーザー様宅に訪問することで、その生活感をダイレクトに知ることができます。写真も撮らせていただき、「この家で住むとしたら、きっとこの部屋でご飯を食べて、このタイミングで製品や商品を使って...」と具体的な生活シーンが浮かびました。
例えばウォーターサーバーを利用していたユーザー様のケースでは、配置や仕様用途も家庭毎に様々であることが質問をする中でわかりました。こちらが想像する利用イメージとは違う、リアルな様子を知ることができました。部屋の印象も、かなり整頓されている方もいれば、そうでない人も。本当にいろんな方と話せて、楽しかったですね。
佐々木さん: 事業を考える上でのハードルとなる点が明確になり、解像度が上がってきました。訪問調査を通して、事業判断に必要な情報量を増やすことができたと思います。
※1 2023年11月にリリース。対象者の自宅に訪問し、行動観察や対面でのインタビューを25,000円から価格で最短数日で実施可能。
6人の訪問調査はトータル1ヶ月で完了 現地ではトークテーマに合わせて部屋を移動しながら深堀りした
― 訪問調査を実施するまでの準備期間はどれくらいでしたか?
栗原さん: 6人のお宅を訪問するにあたり、募集前の準備には1〜2週間。どんな方に、どんな目的で、どんな質問をするべきかをチームでじっくり検討しました。募集期間は2週間としました。集まった方の中から対象者を選定し、最初の調査は募集終了時点から1〜2週間後くらいに実施しました。
対象者選定については、何度かこなしているうちに自分でも対象者の解像度が上がり、レベルアップしていると思います。事前質問から得られた回答をもとに「この人は違うかも、この人がいいかも」といった勘所を掴めるようになったと感じています。
調査はとてもスムーズに進みました。当社は北九州市に本社があるため、訪問調査にあたっては出張タイミングに合わせてスケジュールを設定する必要があったのですが、こちらも問題なく調整できました。
現在は次の訪問調査に向けて準備をしているのですが、今日も日程調整のご連絡を送ったところ、1分程度で返事が戻ってきて驚きました...!
― 訪問調査の当日、具体的にはどんな流れで質問をされていたのでしょうか?
栗原さん: 手元には聞くべき質問メモを用意し、基本的にはメモに沿って質問をしていましたが、玄関からお部屋に移動する途中に気になる事があれば、臨機応変にお話を聞いていました。
席についてからは20分ほど基礎情報を伺った後、自宅での水の飲み方に関する話を具体的に聞きました。その後、利用している製品や商品を実際に見せてもらい、その場でお話する中で思い出した件があれば、移動を交えながらさらに深堀りをするといった流れで進めました。みなさん非常に真摯に答えてくださいました。
セルフ型でも求めていた対象者に問題なく出会えた 自らの調査スキルもアップ
― ユニーリサーチを気に入っているポイントがあれば教えてください。
佐々木さん: ユニーリサーチは、コストとスピードにおいて圧倒的な強さがあると思います。検討テーマや仮説がたくさん出たときに、インタビューの量をこなせるのはメリットです。また、一番大事なのは「会いたい人に会える」という点です。サポートなしでも、自分たちの力だけで、求めていた対象者の方に会える設計になっているのは有り難いと思います。
栗原さん: ユニーリサーチはセルフ型のサービスだからこそ、自分自身に調査スキルが身に付くのがいいですね。専門家に丸投げすれば楽ですが、自分のスキルアップにはなりません。対象者を募集して、インタビューを行い、データをまとめるところまで自分でできたのは良かったです。今のところ、社内の誰よりも使っているので、特に事前調査の設計精度は上がっていると思います!
早崎さん: インタビューの数をこなしていく中、臨機応変に質問内容をブラッシュアップできて良いなと思います。途中で「これを聞けばよかった」という質問が出てきても、次回調査から聞けば必要な情報は得られるので。また、同じ方に再度聞けるのも嬉しいです。モックアップができたタイミングで、もう一度聞いてみたいと思います。使い勝手が良くて助かっています。
― 今後の展望について教えてください。
佐々木さん: 新規事業開発課はまず、「事業検証ができる集団」になることを目指しています。
我々にとって最大のミッションは事業創造にありますが、その過程には自分たちでコントロールできない要素が多く存在します。しかし、顧客の声を聞いて仮説検証できるという確かな武器を獲得することはできます。自分たちがコントロールできる部分はしっかり抑えて、事業の成功率を高めていきたいと思います。