定量×定性の顧客理解でマーケティング戦略を精緻化。「攻めのリサーチ」で市場にアプローチする、TOTO「あんしんリモデル」の挑戦
TOTO株式会社は、累計出荷台数7,000万台を突破した「ウォシュレット」をはじめ、トイレ・バスルーム・キッチン・洗面化粧台などの水まわり住宅設備機器を国内外に展開しています。1993年には時代に先駆けて「リモデル宣言」を行い、リフォーム需要の開拓を牽引。2018年からは、はじめての方でも安心してリフォームを進められるよう、お客様が知りたい情報を「みえる」「わかる」ようにする「あんしんリモデル」を掲げています。
「あんしんリモデル」の実現に向け、お客様接点での価値提供を企画する販売統括本部 リモデル営業企画グループでは、ユニーリサーチのアンケートとユーザーインタビューを組み合わせて活用。市場構造を捉える定量データと、お客様一人ひとりのリアルな声を掛け合わせ、マーケティング戦略の解像度を高めています。
今回は、グループリーダーの岡 真弓子さんと、マーケティング戦略チームの岡崎 藍さん、眞鍋 尚司さんに、ユニーリサーチ活用の背景と、そこから見えてきたお客様理解の変化について伺いました。
※本記事の内容は取材日2026年6月17日時点のものとなっています
「どうしても親切が第一」を続けた110年 住宅リモデル市場と向き合う、守りと攻めのマーケティング組織
― 御社は長い歴史を持つ企業です。ぜひ、これまでの歩みについて教えてください。
岡さん: TOTOは創立からまもなく110年を迎えます。独自の衛生技術と環境性能を核に、水まわりの製品を通じて世界中の暮らしを支えてきました。1993年には新築住宅市場のピークを見据え、いち早く既存住宅のリフォーム需要に着目。時代に先駆けて「リモデル宣言」を行い、リフォーム市場を切り拓いてきました。
初代社長の大倉和親が2代社長の百木三郎に送った書簡には、「どうしても親切が第一」という言葉が残されています。「良品と均質」を徹底的に追求し、お客様にご満足いただくことを第一に考える。そうすれば利益や報酬は、後から影のようについてくるものだから、順番を間違えてはいけない、という教えです。私たちはこの言葉を脈々と受け継ぎ、お客様に寄り添う誠実なものづくりを貫いてきました。真面目で真摯な企業姿勢を、これからも守っていきたいと思っています。
リモデル営業企画グループ グループリーダー 岡 真弓子さん
― リモデル営業企画グループはどのような役割を担っていますか?
岡さん:
TOTOでは、リフォームを単なる取り替えではなく、生活をよりよく変える価値を提供するという意思を込めて「リモデル」と呼んでいます。リフォームはお客様にとって人生で何度も経験するものではありません。一連の流れに不安が多いからこそ、その不安を「あんしん」に変えることで、お客様との絆をつなぎ続けたい。その思いのもと、2018年からは「あんしんリモデル」という考え方にもとづき、公式サイト・ショールーム・コールセンターなど各お客様接点での価値提供に取り組んできました。
そんな中で私たちのミッションは、TOTOが住宅リモデル市場で継続して価値を創出・提供していくための戦略を策定することです。
眞鍋さん: リモデル営業企画グループには、デジタル戦略や外部パートナーとの連携を主とするチームがありますが、私たちが所属するマーケティング戦略チームは分野を問わず市場全体を見据え、リサーチ機能も担っています。
当社における従来の調査チームは、事業の確実な推進を支える役割が中心でした。今年からはその役割を一歩進め、調査によって得られたインサイトを実際の戦略に落とし込む体制へとシフト。「リサーチを起点に、自ら戦略を立案する」という意思を打ち出しています。たとえば市場調査の結果を活かして「こういう製品が必要とされている」と、商品企画側にフィードバックすることも目指しています。
リモデル営業企画グループ マーケティング戦略チーム 眞鍋 尚司さん
ショールームでのインタビューの限界 ユニーリサーチでリサーチのハードルを越える
― ユニーリサーチ導入のきっかけについて教えてください。
岡さん: これまでお客様の声を聞く場合、ショールームにご来館された方にその場でご都合を伺ってお時間をいただく、というのが基本でした。対面なので言葉以外の情報も含めて深く聞ける利点はありますが、お客様の詳しい状況が事前にわからないので、セグメントを分けて対象者を選定することも難しく、属性に偏りが生じてしまうこともありました。また、ショールームの責任者にも「こんな目的で、誰が、いつ行きます」と説明して許可を取るところから始めていました。社内は皆協力的ではあるが、時間と工数がかかり、調査はまさに一大事でしたが、「事実に基づいているかどうかわからない計画は、実行に移せない」と思い、なんとか客観的データを集めようとしていた状況です。
岡崎さん: コールセンターなどお客様の声を集める接点では、「入ってきた声」しか拾えません。TOTOとまだ関わりをお持ちでない方の声をタイムリーに聞く方法が不足していると感じていました。
そうした課題を感じていたところ、弊社の別部署が先行してユニーリサーチを活用しており、紹介してもらいました。こんなに容易にお客様とつながれて、お話を聞けるツールがあるのかと驚きました。許可取りや日程調整に時間がかかっていたインタビューも、今では即日で予定が組めるようになっています。
インタビュー対象者のセグメントを精緻化 調査期間とコストも削減
― ありがとうございます。実際に導入いただき、具体的にどんな課題が解決されましたか?
岡さん: 一つは、お客様の属性やスクリーニング調査の結果をもとに、個別の状況をあらかじめ把握すること。これにより、特定の属性に偏ることなく、適切にセグメント化された幅広い層の声を収集することができるようになりました。たとえば、以前は、「住宅リフォームをした方」にまるっとお話を伺っていましたが、今はお住まいの地域、年齢層、といった軸でセグメントを分けられます。それぞれのお客様がどんな購買行動をとるのか、その理由まで含めて理解できるようになり、より具体的な方向性を示しやすくなりました。
もう一つは、調査期間の短縮とコスト削減です。調査会社に業務委託する場合、調査企画から結果納品まで、アンケート・インタビューともに約3〜4ヶ月が必要になります。しっかり腰を据えて調査するものもありますが、そうこうしている間に世の中が変わってしまうこともある。さっと調査して結果から深掘りするスピード感が必要な内容には、ユニーリサーチのクイックな調査が適しています。今でも調査会社に委託する調査はありますが、徐々に使い分けが進んでいます。
岡崎さん: ユニーリサーチは驚くほど操作が簡単です。特別なセミナーや説明を受ける必要もなく、直感的に使い始められました。定量調査で回答が集まっていく様子をリアルタイムで見られるのも、新鮮な体験でした。
ユニーリサーチのアンケート集計機能
エビデンスになる定量データ 「お客様のひと言」から見えてくるカスタマージャーニー
― アンケート調査は、どんな場面で活用されているのでしょうか?
岡崎さん: 現状把握に使う事が多いです。たとえば、社内の会議で「これって本当にそうなの?」と指摘が入ったときに、定量的なエビデンスを集める目的でアンケート調査を行います。以前なら、営業支社に連絡して、担当者が現場で得ている情報を定量的にまとめてもらう、というプロセスでした。今は、2〜3日で数百人規模の声が集まります。最初に使ったときは、そのスピードとボリュームに衝撃を受けました。翌週の社内会議で、「実際に聞きました」と報告し、企画を進めやすくなりました。
リモデル営業企画グループ マーケティング戦略チーム 企画主査 岡崎 藍さん
岡さん: リフォーム店など、リフォーム関係商品を取り扱う会社に所属し、お客様にメーカーを紹介する立場の方々を対象にアンケート調査を行ったことがあります。対象者条件は厳しいと思われたものの想定以上の回答が得られました。結果が集まってきたときは、驚きと感動が混ざった気持ちでしたね。
― アンケートとインタビューを併せてお使いになって、どんなメリットを感じていますか?
岡さん: リサーチが気軽にできるようになったことで、顧客理解そのものが進んだ実感があります。まずアンケートを実施して全体傾向を掴んだ後、深掘りしたいセグメントごとのカスタマージャーニーをインタビューで具体化していく。この組み合わせによって、マーケティング戦略をより解像度高く描けるようになったと感じています。
アンケートとインタビューを組み合わせたアプローチ
― インタビューの結果、印象的な気づきはありましたか?
岡崎さん: 特に印象に残っているのは、「ショールームでいろんなメーカーの商品を見たけれど、正直、違いがよくわからなかった」というお声です。品質に徹底してこだわり、ものづくりに心を込めてきたメーカーとして、大変衝撃的でした。
「最初はワクワクしていたけれど、比較検討する中で疲れてしまった」という声もありました。接客へのお客様満足度は高いのに、なぜこうしたギャップが生まれるのか。お話をひも解いていくと、リフォームにおいて住宅設備機器は決して「主役」ではなく、お客様が理想とする空間を実現するための一つの要素にすぎないことに気づきました。
眞鍋さん:
私がインタビューした方は、TOTO製品をご購入いただいているものの、メーカーへの興味はあまりお持ちでない方でした。お客様がTOTOを選ぶ強い理由がなくても、リフォーム店の「TOTOが良いですよ」という何気ない一言が力になっているのだと気づきました。
お客様が自発的にメーカーを選んでいるとは限らない。その背景を「なぜ選んだのか」「なぜ選ばなかったのか」と深掘りしていくのが楽しかったですね。お客様のジャーニーの中で、接点となるステークホルダーとの関係性を理解することは、戦略にもはね返ってきます。
常にアップデートを続ける機能 ユニーリサーチ開発チームは「一緒にビジネスを良くしていく」パートナー
― ユニーリサーチの、どんな点を気に入っていただけていますか?
岡崎さん: ツール上で簡単に応募者とやり取りできるメッセージ機能は気に入っています。個別にメールでやり取りする必要がなく、履歴を一元管理して他のメンバーとも共有できます。ビデオ通話のリンクが埋もれないような設計など、機能がどんどん改善されていくことにも驚いています。また、同じ対象者の方に、もう一度お話を伺えるのもありがたいですね。一度きりの関係で終わらず、必要なときに改めて聞き直せる安心感があります。
同一ユーザーに再度調査協力を依頼できるリピートオファー機能
岡さん: 機能面以外でも、私たちのような利用企業とプロダクトフォースの開発チームとの心理的距離が近いことが嬉しいです。こまめなアップデートも都度わかりやすく発信していたり、こんな機能があったらいいなという要望を出したら、スピーディーに対応いただけたり。「一緒に互いのビジネスをより良くしていこう」というスタンスに今後も期待しています。
岡崎さん: インタビュー対象者の質の高さも実感しています。話しにくいことにも、真摯に答えていただける方が多いです。今後も対象者の方々に率直なご意見を提供し続けてもらえたら嬉しいです。
「親切が第一」を体現する原動力に
― リモデル営業推進部 リモデル営業企画グループとして、今後の展望を教えてください。
岡さん: リモデル営業推進部は、TOTOのマーケットイン活動のプラットフォームとして機能を強めていきたいと考えています。企画・推進のメンバー全員が提供価値の解像度を揃えて言語化し、明確なカスタマージャーニーをベースに検討した事柄を、素早くPDCAサイクルを回しお客様にお届けしていきたいです。
ステークホルダーに対して、「どうしても親切が第一」という創業時からの考えを、会社ぐるみでもっと体現していきたいとも考えています。TOTOが社会の発展に貢献し、世界中のみなさまから信頼される企業として成長していく。その原動力のひとつに、私たちリモデル営業推進部がなっていきたいと思います。



