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スクリーニング調査とは|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ:第一回

スクリーニング調査とは|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ:第一回

ユーザインタビュープラットフォーム「ユニーリサーチ」では、インタビュー対象のリクルーティング時にスクリーニングによる対象者選定が可能です。このスクリーナー機能を皆様によりご活用いただけるよう「スクリーニング調査の実施方法」を基礎から学べる記事シリーズ「プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ」を全3回の連載形式で発信します。

本稿は、リサーチャーで『ユーザーリサーチのすべて』の著者でもある菅原大介さんにご寄稿いただきました。マクロミルの定量調査ディレクターとしてリサーチのキャリアをスタートされ、現在はリサーチドリブンなプロダクトマネジメントを推進されている菅原さんの解説をぜひご覧ください。

1.スクリーニング調査とは

ユーザーリサーチにおけるスクリーニング調査とは、実施したい調査テーマに合致した対象者を抽出するための事前調査のことを言います。インタビューの実査やアンケートの本調査に先駆け、事前にアンケートを使って希望条件に当てはまる対象者を選別します。

調査対象者のリストアップには、メールやアプリなどを通じてユーザーに協力を呼びかける募集形式や、データベースから指定条件に合致するユーザーを抽出する方法がありますが、協力意向や登録情報は合致しても調査目的に対して適切かこの時点では定かではありません。

スクリーニング調査を実施すると、アンケートを通じてあらためて調査テーマについての立場や状況をモニターに入力してもらう機会を作ることができ、最新のステータス・詳細なステータスを参照しつつ優先順位に従って希望の対象者を選び出すことができます。

例えば、プロダクトリサーチの業務では、自社サービスの利用状況、競合他社の利用状況、特定カテゴリーの利用経験、特定機能や情報の利活用状況、詳細な世帯構成、ユーザーテストに必要なアプリやスマホ端末の所持状況などを特定するためによく使用します。

2.プロダクトリサーチでよくある失敗

オンラインインタビューの業務をしていれば、「今日は相手にあまり話してもらえなかった…」という状況は皆さん一度は経験しているでしょう。この原因は様々ですが、調査対象者のマッチングが上手く行っていないことが失敗の真因であることが少なくありません。

プロダクトリサーチの現場でよくある失敗は、①タスクと立場が噛み合わず発話が進まない 、②惰性的に使用している、自分の意見が無い、③既に退会していた、アプリを削除している、などの状況です。以下のような経験がないか、皆さんも振り返ってみてください。

<プロダクトリサーチでよくある失敗>

①タスクと立場が噛み合わず発話が進まない

②惰性的に使用している、自分の意見が無い

③既に退会していた、アプリを削除している

①タスクと立場が噛み合わず発話が進まない

・ユーザーテストのタスクと調査対象者の立場が実際には異なるケース

・普段取らない行動なのでテストが進まない、発話イメージが湧かない

・商品特性が人の属性を選んでしまう、テスト端末に慣れていないなど

⇒会員ステータスを持っていてもタスク環境が合わない状態

②惰性的に使用している、自分の意見が無い

・デプスインタビュー実施時に調査テーマに対する熱量が低いケース

・ほぼ毎日サービスを利用しているが、決まった使い方以外はしない

・利用のきっかけも、誰かが選んでくれたり、元々備わっていたなど

⇒行動ステータスの割にサービスへの関与が極端に低い状態

③既に退会していた、アプリを削除している

・既にサービスを退会していて、過去のログももう見れないケース

・アプリの印象評価について聞きたかったがアプリを削除している

・メルマガ登録は継続していて偶然インタビュー協力に応じたなど

⇒登録ステータスを当てにしていて最新の状況が異なる状態

いずれも、こうした不確実性に満ちたケースを想定した調査設計であればアリなのですが、通常のユーザーリサーチでは避けたい事態です。調査を実施する限り多かれ少なかれこうした状況には遭遇し続けますが、マッチングの精度を上げることで改善は可能です。

3.スクリーニング調査を実施するメリット

スクリーニング調査を実施するメリットは、事前調査を実施することで調査テーマに適合した立場や経験を有する調査協力者を確保できることにあります。特にオンラインインタビュー業務の文脈に照らすと、以下のようなメリットを期待することができます。

<スクリーニング調査を実施するメリット>

①質問に対する回答が充実する

②対象者に期待役割を見込める

③レアターゲットを確保できる

①質問に対する回答が充実する

スクリーニング調査を実施すると、ストレートにデータベースから候補者ユーザーを抽出するだけの方法より、はるかに質問に対する回答が充実することを期待できます。せっかくインタビューやアンケートを行うなら、できるだけ精度は高い方がよいものです。

例えば、基本属性でも「小学生のお子さんを育てている世帯」や「自社サービスと他社サービスを併用している人」いう条件設定は、通常はデータベースにその情報が無いものですし、もしあったとしても登録時とは最新のステータスが異なる懸念もあります。

ユーザーリサーチでは調査テーマのカテゴリーやフェーズを絞り込めるほど深い回答を期待できるため、スクリーニング調査を行うことで調査対象とする商品や場面の解像度は上がります。実施のために必要十分な人数を事前に確保することもまたメリットです。

②対象者に期待役割を見込める

スクリーニング調査はたった一名のために行うことは稀で、複数人の調査対象者あるいは複数のグループを選出するために行います。そうすると、スクリーニング調査の結果と事前の登録情報を組み合わせて、各対象者に期待する役割を見込むことができます。

例えば、女性4名から成るインタビュー対象者のグループ形成を目指す場合に、調査テーマについての基本条件の他に、子どものいる世帯と単身世帯の人の比率を考えることで、実査で出てくる意見の背景となる生活や立場の多様性を確保することができます。

③レアターゲットを確保できる

スクリーニング調査ではレアターゲットを確保しやすくなります。特にアイデア探索型のリサーチプロジェクトのような調査シーンでは、平均的な事例よりも稀少なユースケースを持っている人にアプローチできた方が良い示唆を得られる確率が上がります。

例えば、「新幹線を使って通勤している人」は社会人の中で珍しい方ですが、そうした人にインタビューを行うことで、移動空間での集中の仕方、移動前後の時間の使い方がよくわかりそうです。もちろん距離や頻度が影響するため、事前調査が必要です。

4.スクリーニング調査を実施するには

スクリーニング調査を実施するには、自社パネルで実施する方法と、外部パネルで実施する方法があります。前者は自社ユーザーを対象に、後者はリサーチプロジェクトを業務委託する形で調査会社が管理する(支援会社が提携している)モニターを対象に行います。

<スクリーニング調査の実施方法>

①自社パネルで行う場合

②外部パネルで行う場合:リサーチ支援会社に発注する方法

③外部パネルで行う場合:セルフリサーチツールを使う方法

※本稿で取り扱う「リサーチ支援会社」とは、マーケティングリサーチ会社、リクルーティング専門会社、広告代理店、コンサルティングファーム、UXリサーチ会社、プロダクト開発支援会社など、リサーチの業務を受託している会社の業種を総称して言います。

このうち、マーケティングリサーチ会社ではほぼ自前でパネルを保有しており、直接発注することでコストを抑制できます。リサーチのプロジェクトを各種支援会社に委託する場合も、委託先が提携している調査会社のモニター構成や特性に詳しいので安心です。

①自社パネルで行う場合

自社パネルに対して行う場合は、特別な費用をかけずに手軽に募集を開始できる良さが一番にあります。また、自社の商材や機能について意見を得られやすいことのほか、キャンペーン概要や画面操作について説明しなくても調査が成り立つこともメリットです。

注意点には、回答傾向(発話内容)が自社や自社が取扱う商材についてポジティブな方に上振れしやすいこと、母集団の数に限りがあるためあまり細かい抽出条件を設定することはできないこと、協力者としてのユーザーを管理する体制の難しさなどがあります。

このため、プロダクトの総合調査として実施するアンケートの中でインタビュー協力に応じてくれるユーザーをストックしたり、始めから調査目的を明かして個別テーマについてのアンケートを行う中でインタビューの募集を兼ねるなどの工夫が取られています。

②外部パネルで行う場合:リサーチ支援会社に発注する方法

スクリーニング調査はリサーチ支援会社に発注することもできます。むしろスクリーニング調査を計画するシーンでは、第一に検討するのは外部パネルの活用です。百万人規模の登録モニターがいるからこそ対象者の多様性と必要人数を確保することができます。

外部パネルに対して行う場合は、自由度の高い調査テーマを設定できる、目的に対して十分な人数を確保できる、自社に中立的な立場から意見を聞けるなど、内容面の充実を見込めるメリットが多数あり、コストをかけるだけの価値を実感することができます。

注意点には、自社の特徴を集中的に深掘りするには向かない時があること、発注時に一定のコストが発生することなどがあります(特に定量調査のプロジェクトでは質問数を厳選していないとスクリーニング費用が本調査並みに高騰してしまうので注意が必要です)。

③外部パネルで行う場合:セルフリサーチツールを使う方法

最後に、セルフリサーチツールを使って外部パネルに対して行う場合についても触れておきます。2024年現在、インタビューツール・アンケートツールともサービスの高品質化が進み、運営元が構築している回答者パネルを調査に利用できるツールもあります。

この方法を選択するメリットは、自社パネルで実施する方法とリサーチ支援会社に発注する方法のちょうど中間の運営形態を取れるところにあります。パネル(調査協力者)サービスの可能性が広がることで、業務体制や事業展開に活路を見出すことができます。

具体的には、調査にかけられる予算があまりない(とはいえゼロでもない)、サービス企画やプロダクト機能改善の機会が頻繁にある(いずれも急いでいる)、謝礼付与や募集連絡の対応負荷が高い(業務担当者はアサインできる)といった組織におすすめです。

5.スクリーニング調査の進め方

スクリーニング調査の基本的な業務フローは、調査の企画・承認を受けて、スクリーニング調査票の作成→ウェブ画面作成→事前アンケート実施→集計となります。その後、インタビューでは候補者リスト作成、アンケートでは本調査の実施という手順になります。

実際にはスクリーニング調査を単体で行うケースは無いので(※調査会社が計画段階で対象者の出現率予測のみを行うことはあります)、定性調査を母体とするプロジェクト、定量調査を母体とするプロジェクトに分けて、調査の進め方を少し補足していきます。

<スクリーニング調査の特性>

①定性調査のプロジェクトの場合

②定量調査のプロジェクトの場合

①定性調査のプロジェクトの場合

インタビュー調査ではスクリーニングを経て作成する候補者リストの中から適切な対象者を選定するために明確な判断基準を必要とします。候補者リストは多すぎても少なすぎても使い勝手が悪いので、優先度判断を段階的に行えるよう抽出条件を設定します。

また、定性調査の準備としては一定期間内で日程調整がつくよう、豊富な日程の選択肢と適時の連絡オペレーションが必要になります。リクルーティング活動全体の中でもスクリーニングの工程は単純に実査と集計に対応日数を要することを覚えておきましょう。

同じく運営準備に関して言えば、インタビュー当日のユーザー(モニター)の環境設定を確実なものにするのもスクリーニングの重要な役割です。プロダクトリサーチでは、アプリのインストールの有無やスマホの端末機種なども調査内容に応じて確認をします。

②定量調査のプロジェクトの場合

アンケート調査では任意のグループごとに目標数を決めて回収を行う「割付」(わりつけ)という方法がよく取られています。本調査を行う前に均等な回収を促す割付を整えたり、複雑な対象者要件に対応するために、スクリーニング調査は欠かせない工程です。

このほか、定量調査のプロジェクトでは回答者数の規模が万単位のスクリーニング調査の結果を、市場分析用のデータとして活用する使い方もよくされています。具体的には、市場規模(ターゲットボリューム)の算出や認知率・利用率の把握に使われています。

ただスクリーニング調査はあくまで母体となるリサーチプロジェクトの本調査対象者を抽出するための事前調査という位置づけで実施するものなので、おおよその市場傾向を知るためのデータとして捉えることが必要です(正確には本調査として実施すべき事案)。

次回『スクリーニング調査票(スクリーナー)の作り方』|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ

第一回では、スクリーニング調査の概要や実施方法、進め方などをご紹介いただきました。第二回は「スクリーニング調査票(スクリーナー)の作り方」について、引き続き菅原大介さんにご解説いただきます。そちらもぜひご覧ください。

スクリーニング調査票(スクリーナー)の作り方|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ:第二回
スクリーニング調査票(スクリーナー)の作り方|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ:第二回

定量・定性調査が可能なセルフ型リサーチツール『ユニーリサーチ』

国内最大級のインタビュープラットフォーム「ユニーリサーチ」は、2024年9月時点で2,230社の企業の皆様に累計42,000件のインタビューを実施いただいているセルフ型リサーチサービスです。 「最短当日・従来の調査コストの10分の1以下」でのユーザーインタビューやアンケート調査が可能で、スタートアップ企業や大企業の新規事業部門など、従来の調査サービスを利用できていなかった顧客層を中心に、ユーザーリサーチの機会提供を進めております。

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この記事を書いた人
【寄稿者】菅原 大介 氏
【寄稿者】菅原 大介 氏
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト・アプリを運営する企業でプロダクト戦略・リサーチ全般を担当する。デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量・定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。著書『ユーザーリサーチのすべて』(マイナビ出版)
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