スクリーニング調査票(スクリーナー)の作り方|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ:第二回
ユーザインタビュープラットフォーム「ユニーリサーチ」では、インタビュー対象のリクルーティング時にスクリーニングによる対象者選定が可能です。このスクリーナー機能を皆様によりご活用いただけるよう「スクリーニング調査の実施方法」を基礎から学べる記事シリーズ「プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ」を全3回の連載形式で発信します。
本稿はリサーチャーで『ユーザーリサーチのすべて』の著者でもある菅原大介さんにご寄稿いただきました。マクロミルの定量調査ディレクターとしてリサーチのキャリアをスタートされ、多種多様な調査シーンにおけるスクリーナーのレビュー経験も豊富な菅原さんの解説をぜひご覧ください。
- スクリーニング調査票(スクリーナー)とは
- スクリーニング調査の特性
- スクリーニング調査の質問数
- 2.アンケートで使う3つの質問タイプ
- ①単一回答:回答者の状態や程度を知る
- ②複数回答:意見や経験の広がりを知る
- ③自由回答:選択理由や体験内容を知る
- 3.質問文の書き方
- ①よくある失敗:ど直球な質問文
- ②よくある失敗:不完全な質問文
- ③よくある失敗:誘導的な質問文
- ④よくある失敗:消費や使用の主体を想定していない質問文
- ⑤よくある失敗:経験時期を特定していない質問文
- 4.選択肢の書き方
- ①よくある失敗:ダミーの選択肢が無い
- ②よくある失敗:逃げ道の選択肢が無い
- a.その他
- b.特にない(わからない・覚えていない)
- c.この中にあてはまるものはない
- ③よくある失敗:対象者条件を緩和できない
- ④よくある失敗:最新状況を確認していない
- 5.ロジックの設定
- ①よくある失敗:選択肢の表示順序の影響を受けてしまう
- ②よくある失敗:回答者指定を設定せずに回答ボリュームが多くなる
- ③よくある失敗:画面分岐が多すぎる・少なすぎる
- 6.アンケートタイトルの書き方
- ①厳密な対象者抽出のためのアンケート→生活に関する~と記載する
- ②対象者をある程度特定したアンケート→カテゴリー名称を記載する
- ③特定商品・特定機能を扱うアンケート→商品名・機能名を記載する
- ④非利用者も分析対象とするアンケート→告知文でフォロー記載する
- 次回『スクリーニング調査の実践例』|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ
- 定量・定性調査が可能なセルフ型リサーチツール『ユニーリサーチ』
スクリーニング調査票のチェックリスト
スクリーニング調査票(スクリーナー)とは
スクリーニング調査票とは、対象者抽出のために行う事前調査(スクリーニング調査)の調査票のことを言います。資料成果物の名称は、定量調査のプロジェクトではスクリーニング調査票、定性調査のプロジェクトではスクリーナーと慣例的に呼ばれています。 調査会社とのスクリーニング調査のやり取りでは、スクリーニングのことを指して「SC」「SCR」のような略称記号がよく使われています。調査票の質問番号も本調査と区別してSQ1・SC1のような書き方で付番されるのが通例です。 ※本稿では主にオンラインインタビューにおけるスクリーニング調査のユースケースを想定して書いていますが、アウトプットの名称は定性調査・定量調査とも万能に使用できる「スクリーニング調査票」という言い方を採用しています。
スクリーニング調査の特性
スクリーニング調査票の作り方は基本的には普段のアンケートと同じです。ただし、対象者を選定するための事前調査という位置づけから、実査本番(または本調査)の調査意図を推測されないような設計を心がける必要があります。 このため、あくまで実施後のアンケート集計により適格者を選び出すことを前提に、直接的な希望条件以外の選択肢項目も織り交ぜる、回答者全員が一通り答えられるようにする、などスクリーニング調査特有の設計が求められます。 ※もちろん、インタビュー協力者募集のために行うアンケートが本調査である場合は、本調査としてのデータの整合性が優先されるため、上記の限りではありません(自社パネルで運用する場合の業務特性は以降でもその都度触れます)
スクリーニング調査の質問数
スクリーニング調査の質問数は、調査会社では3問・5問・7問などの質問数レンジで管理されています。この区分は理に適っているので目安として意識しておくと良いでしょう。それぞれのレンジでできることのイメージは以下の通りです。 <質問数レンジごとにできることのイメージ>
3問→基本的な利用・所有・状態に関する質問で構成、回答負荷は低い
5問→上記に併せて、複数の利用ステータスや複合的な利用実績を問う質問で構成、回答負荷は普通
7問→上記に併せて、考え方や志向性などの意識面を問う質問で構成、回答負荷は高い もちろん、1問単位で最適なバランスを考えていくことが本筋であり、必ずしも上記の区分に囚われる必要はありません。ただ、順調にリサーチ業務を拡張していくと調査会社に発注するシーンが来ますから慣れておくと良いでしょう。
2.アンケートで使う3つの質問タイプ
アンケート調査では、単一回答・複数回答・自由回答、主にこの3つの質問タイプを駆使して調査票を作成します。本項ではスクリーニング調査でも重要なこの3つの質問タイプについて、それぞれの特徴と得られる情報の違いを解説します。 ※ウェブアンケートツールで使用できる質問タイプには、ほかに、マトリクス型・プルダウン型・数値入力型などがありますが、いずれも基本となる単一回答・複数回答・自由回答の応用に過ぎないので、まずはこの3つを押さえましょう。 <アンケートで使う3つの質問タイプ>
単一回答:回答者の状態や程度を知る
複数回答:意見や経験の広がりを知る
自由回答:選択理由や体験内容を知る
①単一回答:回答者の状態や程度を知る
単一回答はSA(シングルアンサー)とも呼ばれ、単一の選択肢を選んでもらう質問形式です。アンケート画面では丸いラジオボタンが選択肢の冒頭に表示されます。 質問文では、「ひとつだけお選びください」「最もあてはまるものをお選びください」などの尋ね方をします。 主な用途には、評価の尺度(満足度など)、意思の程度(好意度など)、利用や体験のステータス(経験の有無・回数・頻度・金額・契約状態など)、利用や体験の時期などがあります。
②複数回答:意見や経験の広がりを知る
複数回答はMA(マルチアンサー)とも呼ばれ、複数の選択肢を選んでもらう質問形式です。アンケート画面では四角いチェックボックスが選択肢の冒頭に表示されます。 質問文では、「いくつでもお選びください」「○個までお選びください」などの尋ね方をします。 主な用途には、利用や体験の種類(商品・場所・人物・行動など)、利用や体験の理由、調査対象物のイメージなどがあります。
③自由回答:選択理由や体験内容を知る
自由回答はFA(フリーアンサー)とも呼ばれ、自由にコメントを書いてもらう質問形式です。アンケート画面ではテキストボックスの枠が入力欄として表示されます。アンケートツールではボックスタイプが短文形式と長文形式の2種類用意されていることが多いです。 質問文では、「選んだ理由をご自由にお書きください」「エピソードをお聞かせください」などの尋ね方をします。 主な用途には、直前の質問の回答理由、利用や体験のエピソード、サービスに対する要望などがあります。
3.質問文の書き方
アンケートでは質問の仕方によって回答傾向が変わるということはよく言われている通りです。そしてスクリーニング調査では、作成者個人の感覚で書いた質問文が対象者選定に良くない影響を及ぼしてしまうことがあり、いっそうの注意を必要とします。 本項では、私がこれまでにスクリーニング調査票のレビュー(調査用語では「審査」と言いますが)を行ってきた中で、特に気をつけたい、ついやってしまう、5つの失敗例を取り上げます。皆さんも自分にあてはまる要件がないか見直してみてください。
よくある失敗:ど直球な質問文
よくある失敗:不完全な質問文
よくある失敗:誘導的な質問文
よくある失敗:消費や使用の主体を想定していない質問文
よくある失敗:経験時期を特定していない質問文
①よくある失敗:ど直球な質問文
事前調査の工程を重視していない人に多く見られるのが、質問文がど直球なケースです。例えば、「あなたはFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)が好きですか?」(はい・いいえ)のような、調査対象者の条件を特定している質問です。 上記の例では、トレンド性を強く含んだテーマであり調査意図がわかってしまう、好きかどうかの質問で対象者を判定しにかかっている、などの問題があります。興味本位の回答者も先に進めてしまう恐れがあるので良いスクリーニングとは言えません。 もちろんこの質問形式が有効な時もあります。好意度を対象者の選定要件に織り込みたい時、カテゴリーを正しく認識しているかあえて確認する時、スクリーニングの質問数に著しい制約がある時などがあり得ますが、できれば避けたい尋ね方です。 ※あくまで得られた回答データを集計して所定の希望条件に則り対象者を抽出するのがスクリーニング本来のあり方であるという立場に則っています。現実的にはアンケート実施環境における様々な制約により直球的な要素を含むこともあるでしょう。
②よくある失敗:不完全な質問文
アンケート業務を始めたての人に多く見られるのが、質問文が不完全なケースです。例えば、「次のうち、あなたが気になるのは?」というような、クイズのような表現になっていて、実質的な質問内容は選択肢側を見ないと判別できない質問です。 上記の例では、質問対象となっている物事がわからない、「気になる」とは良い意味か悪い意味かわからない、回答方法がわからないなど、憶測や不安を呼び込んでしまう表現になっています。質問の意図や解釈が不明瞭だと調査結果には影響が出ます。 昨今のアンケート回答モニター事情からは、質問文をあまり読まずにすぐ回答をチェックしてしまう傾向もあるため、選択肢側の情報がより整っていることが重要なのは間違いないのですが、それと質問文を端折ってしまうことは別なので注意しましょう。
③よくある失敗:誘導的な質問文
企画業務が好きな人のアンケートに多く見られるのが、質問文が誘導的なケースです。例えば、「○○といえば○○ですが、あなたもそう思いますか?」というような、その時々の世論や世相、自身の関心事が質問文内に情報として足されている質問です。 上記の例では、質問の前半部で情報を刷り込んでいるため、答えは「はい」に傾きやすくなります。また、質問の後半部では作成者がそう思っていて期待をかけているようにも捉えられます。この尋ね方はスクリーニング結果に影響を及ぼすでしょう。 スクリーニングでは評価や印象を尋ねるシーンが多いので、特に質問文で同調バイアスをかけないようにしなければいけません。このような誘導的な表現は口語体(親しい会話口調)の質問文を多用する癖がある人によく見られるので注意しましょう。
④よくある失敗:消費や使用の主体を想定していない質問文
アンケート作成を事務作業としてサポートしている人に見られるのが、消費や使用の主体想定していないケースです。例えば、「あなたが購入したことがあるものをお選びください」と尋ねるものの、実際は商品の消費者や使用者が異なる場合です。 具体的には、iPadを購入→主に配偶者(夫・妻)が使用、チョコを購入→主に子どもが喫食、というような関係性になっている場合です。もし調査の焦点が購入時点よりも使用体験に焦点が当たっている場合は完全にミスマッチな対象者になります。 購入者と使用者のミスマッチを防ぐには、購入経験を問う先ほどの質問文に「自身で使用しているものについてお答えください」(調査用語では「自購入・自使用」と言います)と補足するか、複数回答にして消費者・使用者を選択する設計にします。
⑤よくある失敗:経験時期を特定していない質問文
マーケティング施策を検証する案件でよく見られるのが、経験時期を特定していないケースです。例えば、「あなたが○○○○セールで購入したことがある商品をお選びください」と尋ねるものの、回答の基準となる時期の情報が不明瞭な場合です。 上記の例では、設計者は当然のように直近のセールのことを意図していても、回答者はこれまでのセールの中でいつも買うものを思い出しているかもしれません。このように、時期や場面を特定しておかないと集まる回答の傾向が不揃いになります。 設計者(自分)と回答者(相手)の観点を一致させるには、「これまでの経験すべて」「直近1年」「直近の利用」「○○の時点」のように、回答対象となる時期や場面を質問文で指定しましょう。以下の例文も参考にしながら見直してみてください。
これまでの経験を総合してお答えください
直近1年の経験についてお答えください
直近の利用のことについてお答えください
○○の時点のことについてお答えください
4.選択肢の書き方
調査票の選択肢設計において重要な概念が「MECE(ミーシー・Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」(漏れなくダブりなく)です。MECEは調査会社の新人研修でも初めに教わるほど調査業界で大切に受け継がれている論理的思考法です。 本項では、MECEの考え方を基礎に選択肢設計における4つの失敗例を取り上げます。特にスクリーニング調査として成り立つ設計は、実行者が持つ直接的な関心の外にある情報を足していく必要があるので、今一度セルフチェックしてみてください。
よくある失敗:ダミーの選択肢が無い
よくある失敗:逃げ道の選択肢が無い
よくある失敗:対象者条件を緩和できない
よくある失敗:最新状況を確認していない
①よくある失敗:ダミーの選択肢が無い
アンケート業務を始めたての人に多く見られるのが、ダミーの選択肢が無いケースです。例えば、「閲覧経験のある飲食店サイト」を尋ねる質問で、選択肢の並びが「食べログ」「楽天ぐるなび」「ホットペッパーグルメ」のみで構成されている設計がそうです。 もちろん主だった飲食店サイトは他にも存在するのでこの構成では選べない人が出てきますし(もしくは「その他」に集まる)、スクリーニングの観点では提示されているいずれかのサイトに焦点が当たっていることが回答者目線でも絞り込めてしまいます。 設計時に、最終的に調査対象者となるブランドやサービスの項目のみに関心が向いていると、自分が元々知っている項目を2~3組合せて完成させるだけの選択肢構成になりやすいので、いま一度MECE(漏れなくダブりなく)の原則に立ち返りましょう。
②よくある失敗:逃げ道の選択肢が無い
アンケート作成を体系的に学んでいない人に見られるのが、逃げ道の選択肢が無いケースです。例えば、経験内容を選ぶ質問で、「その他」「特にない(わからない・覚えていない)」「この中にあてはまるものはない」が提示されない設計がそうです。 スクリーニングでは回答者全員が一通り答えられるようにする原則があり、設計時に対象者を抽出することだけを念頭に置いていると逃げ道となる選択肢が無い選択肢構成になり、ある回答者にとっては行き詰って離脱してしまう状況を招いてしまいます。 そもそもアンケートの設計において、この逃げ道となる選択肢の区別があまり意識されておらず、それゆえに項目として無かったり、使い方が適当になっているケースも多くあります。以下に違いをまとめるので、ぜひ上手く使い分けてみてください。
a.その他
「その他」は、提示した選択肢のほかに思い当たる項目がある回答者向けの選択肢として用意します。通常の質問で、もし「その他」を置かず選択肢も少数構成だと、回答者はありものの中から選ぶことになり、結果データが上振れてしまう懸念があります。
b.特にない(わからない・覚えていない)
「特にない」は、その他も含めて該当する選択肢がまったくない回答者向けの選択肢として用意します。「特にない」は複数回答では特別な選択肢となり、他の選択肢と重複選択ができない排他性を持ちます。(「その他」は内容により重複選択があり得る)
c.この中にあてはまるものはない
「この中にあてはまるものはない」は、あくまで用意した選択肢項目間の割合を知りたい時、選択肢対象の項目が多くてある程度で区切りたい時などに、(「その他」と組合わせず)単独で使用します。(※使いどころの判断には一定の経験値が必要)
③よくある失敗:対象者条件を緩和できない
アンケート質問を使い回している人に見られるのが、対象者条件の緩和ができないケースです。例えば、SNSユーザーの動向を調査する目的で、自社または他社の「公式SNSアカウントをフォローしている」項目の選択者を絶対条件とする設計がそうです。 この設計の問題点は、スクリーニングで公式SNSのフォロワーが希望数に満たなかった場合、調査が企画倒れになってしまうことです。対策としては、選択肢に「閲覧している人」を入れたり、選択肢をSNSのメディアごとに分割する方法などがあります。 このほか対象者条件の緩和は、時期・頻度・金額などRFM(Recency・Frequency・Monetary)の項目を条件とする時に必要になります。スクリーニングの質問は使い回しできても、選択肢は案件特性に合わせて調節する必要があることを覚えておきましょう。
④よくある失敗:最新状況を確認していない
ユーザーテストやデプスインタビューの案件で見られるのが、最新の(現在の)状況を確認していないケースです。例えば、アプリを削除した、有料会員を退会した、プランが変わったなどの状況が、インタビューの当日になってわかる状況がそうです。 スクリーニングで利用経験のみを尋ねて「ユーザー」と判定していると、思わぬ形でインタビューの場で修正を迫られます。アプリやプランの最新状況は選択肢を提示して確認しましょう(調査用語では「現在使用・現在所有」という概念に当たります)。 スクリーニング調査というと特別な行動条件を満たすユーザーを抽出するイメージが強くありますが、実は調査会社でもシンプルに「最新のステータスを確認する」ことを大きな目的としています。自社パネルで運用する場合もこの方針に倣いましょう。
5.ロジックの設定
アンケート画面の表示や操作を回答者の状況に合わせて制御する機能を「ロジック」と言います。よくあるロジックの例には、前問の回答内容に応じて質問を出し分ける「セレクト」や、特にないを単一で選ばせる「排他」があります。 スクリーニングの観点で重要なのは、スクリーニング調査の原則の通り調査意図を推測されないようにするため効果的に用いること、全員が最後まで回答できる設計を基本としつつもその負荷を適切に下げるために用いることに尽きます。
よくある失敗:選択肢の表示順序の影響を受けてしまう
よくある失敗:回答者指定を設定せずに回答ボリュームが多くなる
よくある失敗:画面分岐が多すぎる・少なすぎる
①よくある失敗:選択肢の表示順序の影響を受けてしまう
複数回答の質問では、回答者本人の関心項目や調査対象物への評価理由を尋ねるケースが多くあります。こうした質問では選択肢数が必然的に多くなり、残念ながら上部に表示される選択肢番号が若い項目(1~4など)が選択されやすい傾向があります。 これを予防するのが選択肢を回答者ごとに不規則に表示する「選択肢のランダム表示」(ランダマイズ機能)です。ウェブアンケートツールでは標準実装されていることが多いので、適切に使用しましょう(その他・特にないには設定しないよう注意)。 ただし、選択肢の中でもグループの並びが存在する場合(たとえば雑誌タイトルにおける大ジャンルなど)、その並びを崩すと一気に可読性が落ちてしまうことがあります。その場合はグループごとのくくりで制御するか、難しい場合は設定しません。
②よくある失敗:回答者指定を設定せずに回答ボリュームが多くなる
スクリーニング調査には、調査意図を推測されないよう回答者全員が一通り答えられるようにする原則はあるものの、回答負荷には十分に気をつけなくてはいけません。選択肢で提示する調査項目すべてとの関わり方を回答させるのはかなり酷です。 例えば、自社と競合の併用ユーザーを抽出する調査目的があると、複数のブランドについて様々な観点から関わり方を尋ねる設計になりますが、ダミーの選択肢はあくまでダミーなので、ある程度関わりのあるブランドを中心に回答してもらいます。 ここで使うロジックが、前問の回答内容に応じて質問を出し分ける「回答者指定」機能(セレクト)です。回答対象とするブランドを主利用ブランドやベンチマーク、あるいは上限3つまでにするなどの措置を取れば後続の質問の負荷を低減できます。
③よくある失敗:画面分岐が多すぎる・少なすぎる
アンケート画面を進行に応じて分割する「画面分岐」機能も、重要なロジック設定の一つです(ウェブアンケートツール上は「改ページ」機能という名称であることもあります)。画面分岐は多すぎても少なすぎても不都合があります。 画面分岐が多すぎる場合、ページ送りの分だけ単純に回答負荷が上がります。同一のトピックスついての質問は1ページにまとめましょう。また、回答者指定のロジックを多用すると画面分岐が増える原因になるので注意してください。 画面分岐が少なすぎる場合、スクリーニング調査においては調査意図を推測されやすくなります。画面スクロールをすれば先の質問が見えている状態なので、本番の調査でどのような対象者を希望しているか目的が読めてしまいます。 最近ではアンケート調査に慣れているメンバーがあえて分岐を入れずにスマートなウェブ画面を作成しているケースもありますが、回答者に親切にしすぎてスクリーニングの原則を見失ってしまうのは本末転倒なので注意しましょう。 もちろんスクリーニング調査では5問前後で構成するのが普通なので、本調査ほど強く画面分岐の影響を受ける事態にはならないのですが、画面分岐は基本的なロジック設定だけにスクリーニング調査時点から意識しておくと良いです。
6.アンケートタイトルの書き方
アンケートのタイトルは、調査票の仮題がそのまま反映されたりと、要は「なんとなく」付いているケースが多いのですが、特にスクリーニング調査では回答者との最初の接点情報となるため、タイトルはとても重要な役割を担っています。 調査意図を推測させないスクリーニングの原則からは調査内容をぼかしたタイトルが有効であり、調査会社が運営するアンケートではよくこの手法が取られています。しかしこのやり方は回答者が豊富にいるからできる方法でもあります。 本項では、自社で調査運用をしていてインタビューの募集を兼ねてアンケートを実施するシーンも考慮して、目的や条件ごとに最適なアンケートタイトルの名付け方を説明します。 ※実際にはケースバイケースであることをご了承ください。 <アンケートタイトルの書き方>
厳密な対象者抽出のためのアンケート→生活に関する~と記載する
対象者をある程度特定したアンケート→カテゴリー名称を記載する
特定商品・特定機能を扱うアンケート→商品名・機能名を記載する
非利用者も分析対象とするアンケート→告知文でフォロー記載する
①厳密な対象者抽出のためのアンケート→生活に関する~と記載する
調査意図を推測させないスクリーニングの原則に則り、調査会社ではアンケートタイトルで本調査の対象者条件が推測されないよう、「生活に関するアンケート」「あなた自身についてのアンケート」のような抽象度を上げたタイトルで案内しています。 この方法は自社パネルで行う時も有効であり、厳密な対象者選定を行いたい時は「ライフスタイルに関するアンケート」のような表記にしておけば適用範囲を広く保てます。ただし毎回この表記だと、回答者も自社も案件の見分けがつかなくなります。
②対象者をある程度特定したアンケート→カテゴリー名称を記載する
テーマアンケートで対象者をある程度特定する場合、アンケートタイトルはカテゴリーレベルで記載します。ここで言うカテゴリーとは商品ジャンルや社会トレンドなどを指します。テーマを具体的に記載することで、開封率・回答率ともに上がります。 本項の中では最も万能な表現であり、意図したユーザーに協力を呼びかけつつ、詳細な条件までは推測できない、バランスの取れたタイトルになります。自社で行うにせよ調査会社に発注するにせよ、スクリーニング調査では慣れておきたい書き方です。
③特定商品・特定機能を扱うアンケート→商品名・機能名を記載する
自社のパネルで行うスクリーニングで、ピンポイントで特定商品・特定機能のことを尋ねる内容の時は、それ以上でも以下でもないので商品名や機能名をそのまま記載する直球タイトルでOKです。詳細を隠していても結局は離脱してしまいます。 アプリプロダクトのユーザーリサーチでは、アンケート告知の掲出場所もメルマガやSNSだけでなく、該当する機能や情報の真横や直下に配置するなどの工夫が取られています。例えば、問合せ機能や新機能の箇所で見かけることができます。
④非利用者も分析対象とするアンケート→告知文でフォロー記載する
アンケートは基本的に利用者(テーマについて回答できる経験値を持っている人)に対して実施することが多いですが、非利用者を含めた分析を計画している場合は告知文の中でノンユーザーも回答できる質問項目がある旨をフォローで記載します。 アンケートタイトルは基本的に利用者を前提とする表現のものが多いため、例えば、「このアンケートはサービスを利用したことがない方も対象にしております。ぜひ皆様からの声をお聞かせください」というような案内文を入れるとよいでしょう。 ※非経験者・非達成者を含めたい時も同じ要領です。 このほか、スタートアップのユーザーリサーチでは、そのまま「〇〇(プロダクト名称)に関するアンケート」という案内もよく見かけます。これは内容が総合調査であることと、スクリーニングというほどの選定意図は持っていないためでしょう。
次回『スクリーニング調査の実践例』|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ
第二回では、「スクリーニング調査票(スクリーナー)の作り方」をテーマに、スクリーニング調査票の特性や、よくある失敗を防ぐためのチェックポイントをご紹介いただきました。 第三回は「スクリーニング調査の実践例」について、引き続き菅原大介さんにご解説いただきます。そちらもぜひご覧ください。
前回の記事はこちら
定量・定性調査が可能なセルフ型リサーチツール『ユニーリサーチ』
国内最大級のインタビュープラットフォーム「ユニーリサーチ」は、2024年9月時点で2,230社の企業の皆様に累計42,000件のインタビューを実施いただいているセルフ型リサーチサービスです。 「最短当日・従来の調査コストの10分の1以下」でのユーザーインタビューやアンケート調査が可能で、スタートアップ企業や大企業の新規事業部門など、従来の調査サービスを利用できていなかった顧客層を中心に、ユーザーリサーチの機会提供を進めております。