スクリーニング調査の実践例|プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ:第三回
ユーザインタビュープラットフォーム「ユニーリサーチ」では、インタビュー対象のリクルーティング時にスクリーニングによる対象者選定が可能です。このスクリーナー機能を皆様によりご活用いただけるよう「スクリーニング調査の実施方法」を基礎から学べる記事シリーズ「プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ」を全3回の連載形式で発信します。 最終回は『スクリーニング調査の実践例』がテーマです。 本稿はリサーチャーで『ユーザーリサーチのすべて』の著者でもある菅原大介さんにご寄稿いただきました。マクロミルの定量調査ディレクターとしてリサーチのキャリアをスタートされ、多種多様な調査シーンにおいてスクリーナーのレビュー経験も豊富な菅原さんの解説をぜひご覧ください。
1.プロダクト利用実態の把握
プロダクトの利用実態を把握するユーザー調査では、ユーザーを利用実績の多寡により分類する方法を取ります。よく使う質問項目には、利用頻度・利用回数・利用金額があります。利用の程度により行動や意識にも差が生まれやすく、いかなる調査目的の場合もスタンダードなスクリーニング方法です。
<プロダクトの利用実績による分類>
①利用頻度(ヘビーユーザー/ミドルユーザー/ライトユーザー)
②利用回数(ヘビーユーザー/ミドルユーザー/ライトユーザー)
③利用金額(ヘビーユーザー/ミドルユーザー/ライトユーザー)
①利用頻度
【利用頻度】あなたは[○○○○](商品・サービスの名称)をどれくらいの頻度で利用していますか(単一回答) |
利用頻度の質問は、ユーザーの悩みの周期・消費量の間隔を理解することに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、皆さんが担当する商材の生活における周期・間隔を読み取ることができます。
回答データから利用頻度の多寡に応じて、ヘビーユーザー・ミドルユーザー・ライトユーザーのグループに分類します。例えば、月1回以上、2~3ヶ月に1回以上、それ以下、というようになります。
この時の分類基準は自社で設定している顧客分類の基準(RFM分析など)と同一にしておくとわかりやすくなります。ただ、特に外部パネルを使用するスクリーニング調査での利用頻度はデータベース分析よりもかなり低めに出る傾向があります。
一般的には、自社の基準でヘビーユーザーに相当するモニターが少なくてグループとして成り立たないという状況が発生しやすいので、その時はヘビー・ミドル・ライトの基準をユーザー調査用に緩和して定義を柔軟に運用するようにしましょう。
利用頻度の選択肢レンジは、「週1回以上」を最も高い項目として設定することが多いですが、日常利用のアプリサービスなどを展開している場合は、1週間の中でも、「2日に1回」「週2-3回」など、少し細かめに設定しておきます。
②利用回数
【利用回数】あなたは[○○○○](商品・サービスの名称)を年間で何回くらい利用していますか(単一回答) |
利用回数の質問は、ユーザーのブランドロイヤルティ・消費のバリエーションを理解するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、ユーザーの商材に対する熱量・規則性を読み取ることができます。
回答データから利用回数の多寡に応じて、ヘビーユーザー・ミドルユーザー・ライトユーザーのグループに分類します。例えば、5回以上、3~4回、2回以下、というようになります。
質問文は回答基準となる期間を自社商材の特性に合わせてチューニングしましょう。以下の図表の見本では、商品・サービスの利用期間を「年間」にしていますが、商材の特性に応じて、任意の期間(コンビニのように接触頻度が高い業態の場合は「週間」)、生涯の累計(引っ越しのように回数が限られる業態の場合は「累計」)にアレンジしてみてください。
③利用金額
【利用金額】あなたは[○○○○](商品・サービスの名称)をどれくらいの金額で利用していますか(単一回答) |
利用金額の質問は、ユーザーの欲求のレベル・悩みの程度を理解することに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、皆さんが担当する商材への欲求のレベル・悩みの程度を読み取ることができます。
回答データから利用金額の多寡に応じて、ヘビーユーザー・ミドルユーザー・ライトユーザーのグループに分類します。例えば、3,000円未満、3,000円以上~8,000円未満、8,000円以上というようになります。
この時の分類基準はやはり自社で設定している顧客分類の基準(RFM分析など)と同じほどわかりやすいです。しかしスクリーニング調査での利用金額は金額帯を一定幅で尋ねる質問方法を取っているため、ヘビーあるいはライトの基準が自社のデータベースよりもやや粗めに出る傾向があります。その時はユーザー調査用に金額区分の基準を再調節しましょう。
利用金額の選択肢レンジは、自社商材の価格帯を反映します。見本では1,000円刻みのモデルを用意しましたが、データの精度を上げるには、取り扱う商品・サービスに合わせて中心となる価格帯を細かく刻むようにします。
※回答金額の精度を上げるには数値入力(自由回答で整数を入力させる形式)もありますが、回答範囲を制御したり集計判断を伴ったりと、手間を要する複雑な運用になります。
2.カテゴリー購買傾向の分析
カテゴリーの購買傾向を分析するユーザー調査では、ユーザーを購入商品や決裁内容の種別により分類する方法を取ります。よく使う質問項目には、購入商品を大カテゴリー・中カテゴリー・小カテゴリーで選んでもらう方法があります(スクリーニングで大〜小まで一度に尋ねるケースは稀で、実際にはいずれかにフォーカスして他質問と組み合わせて質問を構成することが多いでしょう)。購入商品の種類により行動や意識にも差が生まれやすく、商品企画・サービス企画を目的とする調査ではスタンダードなスクリーニング方法です。
<購入カテゴリーによる分類>
①大カテゴリー(食品購入者/飲料購入者/日用品購入者…)
②中カテゴリー(肉購入者/野菜購入者/果物購入者…)
③小カテゴリー(りんご購入者/みかん購入者/バナナ購入者…)
※本項では食品ECをモデルに説明を行いますが、物販に限らずカテゴリーの概念が存在するビジネス全般で有効です。販売管理システムの階層構造を形成する項目を想定してご覧ください。
①大カテゴリー
【大カテゴリー】あなたはこれまでに[○○○○](プロダクトの名称)でどのような商品を購入したことがありますか(複数回答) |
大カテゴリーの質問は、ユーザーの消費支出の全体像を理解するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、ユーザーの支出分野(ジャンル単位)を特定することができます。
回答データから購入商品の種別に応じて、例えば、食品購入者・飲料購入者・日用品購入者それぞれのグループに分類します。経営方針や事業方針を司る部門では、こうした大カテゴリー単位での調査が分析の粒度に合っています。
この質問を自社ユーザーに行う場合、自社が取り扱う範囲の全カテゴリーを尋ねる方法を基本としますが、総合力を競合と比較する目的であれば、図表の見本のように業界一般で販売されているカテゴリーを網羅する選択肢構成にします。
②中カテゴリー
【中カテゴリー】あなたはこれまでに[○○○○](プロダクトの名称)でどのような[○○○○](調査対象カテゴリーの名称)の商品を購入したことがありますか(複数回答) |
中カテゴリーの質問は、特定カテゴリーにおけるユーザーの購買行動・購入理由を理解するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、任意のカテゴリー(ゾーン単位)におけるユーザーの購入品目を具体的に特定することができます。
回答データから購入商品の種別に応じて、例えば、肉購入者・野菜購入者・果物購入者それぞれのグループに分類します。製造方針や販売方針を司る部門ではこうした中カテゴリー単位での調査が分析の粒度に合っています。
※専門店あるいは専業ECのように、取り扱い商品の範囲をある程度特定した形でサービスを運営している場合は、この区分が大カテゴリーに相当することになります。
③小カテゴリー
【小カテゴリー】あなたはこれまでに[○○○○](プロダクトの名称)でどのような[○○○○](調査対象カテゴリーの名称)の商品を購入したことがありますか(複数回答) |
小カテゴリーの質問は、詳細な品目レベルでユーザーの購買行動・購入理由を理解するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、任意のカテゴリー(商品棚単位)におけるユーザーの購入品目を具体的に特定することができます。
回答データから購入商品の種別に応じて、例えば、りんご購入者・みかん購入者・バナナ購入者それぞれのグループに分類します。事業部門や商材担当者の単位ではこうした小カテゴリー単位での調査が分析の粒度に合っています。
3.プロダクト競合環境の分析
プロダクトの競合環境の分析のためのユーザー調査では、自社または他社のユーザーをマーケティングファネル(漏斗の形状をモデルイメージとした、利用段階がどの程度進んでいるかを分類した図)の種別により分類する方法をよく取ります。その中でもよく使う質問項目には、認知状況・購入状況・併用状況があります。認知状況や購入経験などにより行動や意識にも差が生まれやすく、マーケティング強化を目的とする調査ではスタンダードなスクリーニング方法です。
<マーケティングファネルによる分類>
①認知状況(名称認知者/内容認知者/非認知者)
②購入状況(直近購入者/購入経験者/非購入者)
③併用状況(競合A社併用ユーザー/競合B社併用ユーザー/競合C社併用ユーザー/競合D社併用ユーザー…)
※「購入」状況に関しては、ご自身が担当しているサービスモデルに応じて、購入・予約・契約・閲覧・体験・訪問などのアクション名に読み替えてご覧ください。
①認知状況
【認知状況】あなたは以下の[○○○○](ビジネスカテゴリーの名称)の[○○○○](ブランド・サービス)のことをご存じですか(単一回答) |
認知状況の質問は、調査対象者のブランド・サービスとの接触度合いを把握するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、任意のカテゴリーにおいてユーザーが認知しているブランド・サービスを具体的に特定することができます。
回答データからそれぞれのブランド・サービスの認知ステータスに応じて、名称認知者・内容認知者・非認知者のグループに分類します。
表頭の選択肢は、「名称認知」と「内容認知」を区分することがポイントです。この違いはマーケティング分析において重要な概念であり、広告宣伝活動では名称認知が、販売促進や利用促進では内容認知が、それぞれ特に活動の検証指標として有効です。
用意する選択肢が単に「知っている」だけだと、通常は名称認知を取得することになりますが、事業の成長期には内容認知が実質的な課題となっているケースも多くあるので、できるだけ分けて実態を把握するアプローチが望ましいです。
②購入状況
【購入状況】あなたは以下の[○○○○](ビジネスカテゴリーの名称)の[○○○○](ブランド・サービス)で商品を購入したことがありますか(単一回答) |
購入状況の質問は、調査対象者のブランド・サービスの購入状況を把握するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、任意のカテゴリーにおいてユーザーが購入しているブランド・サービスを具体的に特定することができます。
※前出の認知状況を確認する質問と一度に聴取することも可能ですが、質問事項を購入状況にフォーカスすることで「直近の購入時期」によって対象者を選別しやすくなるので、段階的に聴取することをおすすめします。
回答データからそれぞれのブランド・サービスの購入ステータスに応じて、直近購入者・購入経験者・非購入者のグループに分類します。
通常は「直近購入者」をその後のインタビュー実査(アンケート本調査)の対象者として設定します。そして人数の集まりが悪い場合に「(時期の条件を緩和した)購入経験者」も含めた構成にします。これは、できるだけ購入時点から記憶がフレッシュな対象者、現在と近い時点の商品やサービスに触れている対象者を選び出す方がより充実した回答を得られるためです。
なおスクリーニング調査における「直近購入者」は、「直近3ヵ月以内の購入者」を優先的に定義するのが慣例です。データアナリティクスの概念(RFM分析など)の観点で見ると、「直近3ヵ月以内」ではやや範囲が広く、リレーションも薄れ始めている可能性もあるステータスという印象があるかもしれません。ただ、アンケート調査でこれより直近の期間に定めようとすると対象者がかなり少なくなってしまうことが多く、結果的に「直近3ヵ月以内」を最も近い接点と捉えることが多いです。
※素早い検証を信条とするアジャイル開発体制を採用している場合はさらに折り合いが悪いため、新規ユーザーの出現に強い自社パネルを充実させる、1回あたりの対象者人数をセーブして実施するなどの形式で運用すると良いでしょう。
③併用状況
【併用状況】あなたが利用したことがある以下の[○○○○](ビジネスカテゴリーの名称)のうち、直近1年以内で主に利用している(利用頻度が多い)サービスを【2つまで】お選びください。(複数回答 ※2つまで) また、そのうちメインで利用している(最も利用頻度が多い)サービスを【1つだけ】お選びください。(単一回答) |
併用状況の質問は、事業ドメインにおける調査対象者の競合他社との接触度合いを把握するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、任意のカテゴリーにおいてユーザーが併用しているブランド・サービスを具体的に特定することができます。
市場規模が大きい業界や成長産業の業界では自社を専用で使ってもらうのは難しく、他社との併用が事業運営の前提になってきます。本件はこの状況を踏まえたインタビュー実査やアンケート本調査を行うためのスクリーニング調査になります。
表側選択肢「メインで利用しているサービス」の回答データから、それぞれのブランド・サービスの利用ステータスに応じて、競合A社併用ユーザー・競合B社併用ユーザー・競合C社併用ユーザー・競合D社併用ユーザーというように利用者のグループに分類します。
自社の商品・サービスが市場で一定の利用率を持っている場合、自社ユーザーかつ任意の競合他社いずれかのユーザーを抽出して、自社と他社の使い分けや印象評価を聞き出す調査が可能になります。
逆に、自社の商品・サービスがスクリーニング調査ではあまり出現しない場合、メインで利用しているサービスに焦点を当てて抽出し、確実に1つのブランドについて聞き出すようにします。
また、ブランド併用状況を問うスクリーニング調査の抽出方法では、複数回答質問の回答個数(いくつ選択しているか)を基準に選び出す方法もよく取ります。例えば動画サブスクサービスのユーザーは複数のサービスを並行利用する傾向があるため、より多くの経験を聞き出すために3個以上のブランドを選択している人などを指定することがあります。
4.プロダクトアイデアの探索
プロダクトのアイデアを探索するためのユーザー調査では、生活や仕事における立場の種別により分類する方法を取ります。よく使う質問項目には、経験年数・職種・役職があります。それぞれの立場は生活行動や人生観に大きく影響しており、ビジネスパーソンに焦点を当てる調査ではスタンダードなスクリーニング方法です。
<生活や仕事での立場による分類>
①経験年数(1年未満/1~2年/3~5年/6~9年/10年以上)
②職種(サービス企画/マーケティング/セールス/デザイン/エンジニアリング/その他)
③役職(経営層/マネージャー/リーダー/一般社員)
※本項はBtoBプロダクトのユーザー調査を意識した質問構成にしていますが、このスクリーニングのモデルは社会人向けのサービスや趣味系のサービスでも応用が利きます。
①経験年数
【経験年数】あなたが[○○○○](調査対象となる物事)に[○○○○](従事・関与)している経験年数をお選びください(単一回答) |
経験年数の質問は、仕事や趣味の習熟度ごとの傾向分析をするのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、トレンド及び定番活動に対するユーザーの経験分布を把握することができます。
回答データから経験年数に応じて、1年未満・1~2年・3~5年・6~9年・10年以上というように経験した期間によるグループに分類します。
ビジネスパーソン向け(BtoB)にこのスクリーニング調査を行うと、その後に続くインタビュー実査やアンケート本調査で知識や技能の深まり方を見ることができます。例えば、マーケティング業務では、経験年数が少ないほどウェブ広告運用など組織内でもワークフローが盤石なルーティン業務から始まる傾向があります。
※ビジネスパーソン向け(BtoB)調査では、「前問でお選びになった業務【前問回答参照】の経験年数(通算)をお選びください」のような質問文で、この後に紹介する「職種」の質問に続けて提示する順序関係になるのが一般的です。
生活者一般向けにこのスクリーニング調査を行うと、その後に続くインタビュー実査やアンケート本調査で領域や範囲の広がり方を見ることができます。例えば、登山を趣味としている人は、経験年数が上がるほど登る対象となる地域が日本全国に広がっていくという傾向があります。
②職種
【職種】あなたの職種または組織の所属部門として最もあてはまるものをお選びください(単一回答) ※直近で異動や転職で変更があった方は、ご経歴の中で最も長く従事している仕事内容を選択ください。 |
職種(部門)の質問は、生活時間・持ち物・仕事観などを把握するのに向いています。選択肢の職業情報そのままに、その後に続くインタビュー実査やアンケート本調査で、例えば次のような情報を得られます。
・販売の仕事はランチ時間が不規則になる→手軽さを最重視(生活時間)
・営業の仕事では顧客用のペンを持ち歩く→相手への心配り(持ち物)
・経理の仕事は全部門との関わりを持てる→誇りややりがい(仕事観)
この質問では集計作業は特に発生しません。回答データをそのまま職種ごとのグループに分類しましょう。
選択肢について、以下の見本の図表では主にプロダクトに関与する職種を厳選して記載しています。もし包括的に職種を聴取したい場合は図表の補足箇所をご覧ください(ただし分析軸を増やすと個々の回収が難しくなったり集計表が複雑になるリスクもあります)
また、「学生」の扱い方も検討しておきます。外部パネルで配信リストから除外できたり、そもそもリストに学生を含まない場合は構わないのですが、もしメルマガ会員リストなどで配信対象者に学生がいる場合は、選択肢「その他」の中に含む表記を捕捉するか、告知メールなどで社会人向けの調査であることを明記するようにします。
③役職
【役職】あなたのお仕事での立場にあてはまるものをお選びください(単一回答) |
役職(仕事上の立場)の質問は、問題意識や課題意識を把握するのに向いています。選択肢の役職情報そのままに、その後に続くインタビュー実査やアンケート本調査で、例えば次のような情報を得られます。※経営層向けの調査は少し特殊なので例示から割愛します。
・マネージャー→ビジネスモデルを踏まえた方針意見、活動フェーズ単位での課題の指摘、各種機能を効率的に運用する提案など
・リーダー→クロスセル・アップセルの視点、KPIにつながる施策や機能のアイデア、他業界のケーススタディなど
・一般社員→目に見える競合比較視点、小カテゴリーの深い情報、消費者に近い素朴な意見や疑問など
この質問では集計作業は特に発生しません。回答データをそのまま役職ごとのグループに分類しましょう。
選択肢について、以下の見本の図表ではシンプルな四階層で構成しています。もし包括的に職種を聴取したい場合は図表の補足箇所をご覧ください(ただし、分析軸を増やすと個々の回収が難しくなったり集計表が複雑になるリスクもあります)。
5.プロダクト表示改善の検証
プロダクトの表示改善のためのユーザー調査では、ユーザーを利用環境の種別により分類する方法を取ります。よく使う質問項目には、加入期間・利用機能・閲覧環境があります。テストやヒアリングを行う前提環境を正しく整えることができるので、プロダクトの表示改善を目的とする調査では文字通りスタンダードなスクリーニング方法です。
<プロダクトの利用環境による分類>
①加入期間(無料会員1年未満/無料会員1年以上/有料会員1年未満/有料会員1年以上)
②利用機能(基本機能使用者/高度機能使用者/付加機能使用者)
③閲覧環境(ネイティブアプリユーザー/スマホブラウザユーザー/PCブラウザユーザー)
①加入期間
【加入期間】[○○○○](プロダクトの名称)でご利用中のプランと加入期間の組合せについて、あなたの状況にあてはまるものをお選びください(単一回答) |
加入期間の質問は、その後に続くインタビュー実査やアンケート本調査の中で、プロダクトの付加価値を把握するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、加入期間を軸としたロイヤルティを把握することができます。
また、調査目的がBefore〜Afterを検証するユーザーテストである場合、Beforeの状態を対象者が認識(体験)していないと効果を測定しづらいため、スクリーニングがテスト環境の設定で重要な役割を果たします。
回答データから加入期間のステータスに応じて、無料会員1年未満・無料会員1年以上・有料会員1年未満・有料会員1年以上のグループに分類します。
選択肢では、「1年を境に利用期間を区切る」ことがポイントです。ウェブサービスでは、1年以内に利用メリットを訴求できているかが一つのヤマになるので、無料プラン・有料プランに分けて、それぞれ1年を境に選択肢を構成します。
※アジャイルな運営形態を取っている場合は90日などが目安になりますが、スクリーニングを含めアンケートの調査手法は中長期トレンドを分析するところにメリットがあるため、うまく取り入れてみてください。
②利用機能
【利用機能】[○○○○](プロダクトの名称)では、現在どの機能を使用していますか(複数回答) |
利用機能の質問は、プロダクトを構成する各機能がもたらす提供価値を把握するのに向いています。選択肢の回答傾向を通じて、各機能の活性度を把握することができます。
回答データから利用機能の種別とそのグレードに応じて、基本機能使用者・高度機能使用者・付加機能使用者のグループに分類します。―と言っても、実際にはいずれか1つのグループ、または特定の機能に焦点を当ててユーザー調査を計画することがほとんどでしょう。選択肢グループの意味合いは以下の通りです。
・基本機能→ベーシックなタスクを実現する機能(総合調査向け)
・高度機能→上級者向けあるいは上位プラン機能(高機能開発調査向け)
・付帯機能→運営上で必要とする細かな便利機能(改善調査向け)
この質問の注意点として、選択肢の字面からは該当するプロダクトの表示箇所が伝わらないことも懸念されます。アンケートのウェブ画面上で取れる対策としては、固定のリンクがあればURLを記載する、実際の画面キャプチャを掲載する、などの方法があります(この場合は提示する選択肢を一定数に絞り込むことをお薦めします)
③閲覧環境
【閲覧環境】あなたは今現在、[○○○○](プロダクトの名称)をどのような端末で(方法で)閲覧していますか(複数回答) |
閲覧環境の質問は、その後に続くインタビュー実査の中で確実に指定の閲覧端末や閲覧方法で画面を操作してもらう環境を担保するために行います。スクリーニングでは選択肢の回答傾向を通じて、全体の割合及びユーザーの基本属性ごとの微細な傾向を見ることができます。
回答データから閲覧端末と閲覧方法の組合せに応じて、ネイティブアプリユーザー・スマホブラウザユーザー・PCブラウザユーザーなどのグループに分類します(タブレットなどは対応優先順位が落ちるはずなので必要に応じて。モバイル端末としてスマホと一緒に括る方法も取られています)。※実際にはこの条件単独でリクルーティングすることはほとんど無く、他の条件との組合せになることでしょう。
ユーザーインタビューでは画面を見ながらユーザーと会話をすることでより正確な経験や状況を確認でき、特にアプリのユーザーテストではタスク(作業)を実行してもらうために正しい環境設定が必須になります。サービスの利用者であることを判定できていても、ユーザーによって閲覧環境は異なるものなので注意しましょう。
<最終回> プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ
第三回では、「スクリーニング調査の実践例」として、ユーザー調査の目的に応じた分類方法を詳しくご紹介いただきました。
「スクリーニング調査の実施方法」を基礎から学べる全3回の記事シリーズ「プロダクトリサーチを成功に導く!スクリーニング調査のコツ」は今回で終了です。本シリーズでご紹介いただいた菅原大介さんの知見を、ぜひ皆様の調査実施にお役立てください!
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