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事業インパクトにつなげるリサーチ活用方法とは?リサーチ関連書籍の著者3名が語る実践的ノウハウbyユニーリサーチ イベントレポート

事業インパクトにつなげるリサーチ活用方法とは?リサーチ関連書籍の著者3名が語る実践的ノウハウbyユニーリサーチ イベントレポート

リサーチを取り入れる企業が拡大する一方、リサーチャーを他職種の方が担うケースも少なくありません。その中で、多くの方が直面するのが「周囲の信頼の構築」と「リサーチ目的を正しく保つ方法」の2つの課題。そこで、今回はリサーチ関連書籍を出版されている、スマートバンクのUXリサーチャー・瀧本はろか氏、リサーチャーの菅原 大介氏にリサーチで事業インパクトを生むために取り組んでいることをシェアいただきました。本記事では『はじめてのUXリサーチ』著者である草野孔希氏によるモデレーションに沿って当日の模様をご紹介します。

なお、以下から実際のイベント動画もご視聴いただけます。一部記事内で取り上げきれなかった部分もございますので、ぜひ合わせてご覧ください。

【無料】このイベントを動画で見る

登壇者紹介

草野 孔希氏/株式会社メルペイ UXリサーチャー

修士(工学)・博士(SDM)。通信事業会社の研究所に入社し、デザイン方法論の研究および研究知見を活かしたコンサルティングに従事。2018年11月にメルペイへ入社し、 UXリサーチを活用したサービスデザインに取り組む。

>著書:はじめてのUXリサーチ/翔泳社

瀧本 はろか氏/株式会社スマートバンク UXリサーチャー

校正・校閲担当者を経て、ベンチャー企業で新規事業の立ち上げやインタビューの企画執筆、人材会社で新規事業の UXリサーチを経験。2022年4月より株式会社スマートバンクに入社。年間 100件を超えるN1インタビューを担当し、経営・事業に伴走するリサーチを推進している。

>著書:UXリサーチの活かし方 ユーザーの声を意思決定につなげるためにできること/翔泳社

菅原 大介氏/リサーチャー

上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で出版社の学研を経て、株式会社マクロミルで月次500問以上を運用する定量調査ディレクター業務に従事。現在は国内有数規模の総合ECサイト‧アプリを運営する企業でプロダクト戦略‧リサーチ全般を担当する。デザインとマーケティングを横断するリサーチのトレンドウォッチャーとしてニュースレターの発行を行い、定量‧定性の調査実務に精通したリサーチのメンターとして各種リサーチプロジェクトの監修も行う。

>著書:ユーザーリサーチのすべて/マイナビ出版

Q1. リサーチャーとしてどのように周囲の信頼を構築しているか?

リサーチャーとして周囲の信頼を得ることで、リサーチを事業成果に結びつけやすくなるであろうということは想像に容易いかと思いますが、実際のところ社内でのコミュニケーションにはいくつも壁があります。そこで、この難しさを克服するアプローチ方法を3つの観点ごとに解説いただきました。

アプローチ1:チームやプロジェクトでのコミュニケーションスタイル

アウトプットのデザイン(成果物の使い分け)をする

ー菅原氏 私は定常的なチームの中で動くというよりは、プロジェクト単位でご一緒するため、それぞれの部門やチームにあった成果物を作ることを心がけています。

スライドに記載されている通り、プロダクト部門とのコミュニケーションであればユーザーストーリーマップを用いて要件定義をします。

一方、ビジネス部門を交えて話をするような場合は、ユーザー認知などより入り口に対する意識が強いこともあるため、まずカスタマージャーニーマップで認識を揃えます。そして、プロダクト部門には改めてユーザーストーリーマップで整理した情報を持っていくような形式をとっています。

ー草野氏 このような使い分けって、とても重要ですよね。私も社内で話を持っていく部門ごとにアウトプットだったりコミュニケーションスタイルだったりを変えるので大変共感するポイントです。

各職種の目標をリサーチを通じて達成する

ー瀧本氏 菅原さんのお話にも関連するのですが、部門や職種によって見せ方を変えるために、関わるメンバーがどのような目標を持っているのかに意識を向けると、コミュニケーションが取りやすいと思います。

私はUXリサーチ部という部署に所属していますが、部門・職種が異なれば目標も異なります。そこで、リサーチャーと各部門・職種のメンバーが交わる点を探し、メンバーがリサーチを通じて実現したいことをサポートできるよう心がけたいと思っているんです。

ー草野氏 確かに、目標がわかっていないとアウトプットの形式もうまく決められないですよね。

アプローチ2:リサーチ成果の共有方法

普段見るチャネルの活用と視覚化をする

ー瀧本氏 メンバーが情報にアクセスするための入り口には特に気を配っています。まず共有用ツールで言えば、リサーチャーだけが特別なものを使うのではなく、社内で標準利用しているSlackやFigJam、notionを活用するようにしています。

また、内容も途中から入ってきたメンバーでもモチベーション高く見てもらえるものにしたいですよね。全体像を視覚的に整理をして、リサーチに興味がなくても「ちょっと見てみるか」と思ってもらえるように意識しています。

ー菅原氏 Slackで告知してコミュニケーションをとるのよいですね。入り口作りの多様さ、僕も見習っていきたいなと思いました。

報告会参加者アンケートの活用をする

ー菅原氏 ご紹介したいのは、リサーチを終えるとみなさん報告会のようなものを実施し、参加者に対してアンケートを取ることも多いと思いますが、そちらを活用する手段です。

ここではイベントの満足度を問うのではなく、印象に残ったインサイトをアンケートの選択肢にして選んでもらったり、参加者に自由回答で記述してもらいます。そうすることで、情報や示唆を問うことができます。

ー瀧本氏 リサーチの質を高められる要因って振り返りのポイントをどこで設けるかだと思うんですよ。菅原さんはご経験の中から、仕組みで解決しているのがさすがです。

アプローチ3:リサーチャー個人のブランディング

“Harokaさん”と認知してもらう

ー瀧本氏 そもそもUXリサーチャーという職種がどのようなことを担っているのかってイメージしづらいと思うんです。そのような中で私としては、まず社内で「ユーザーのことを知りたいと思ったら声をかける人」という認知を得ることを一つのゴールとしてきました。

その際、一人ひとり深く向き合うことも大切だとは思うのですが、範囲も広げられるといいですよね。私の場合はそれを社外に向けた発信を通して実施している感覚があって、蓋を開けると一番の読み手はメンバーだったみたいなこともあると思っています。

メンター活動によるナレッジ‧スキルのキープアップ

ー菅原氏 若干真似しづらい内容かもしれないのですが、私自身メンターの活動もしていまして、そこでスキルやナレッジをキープアップできるようにしています。この経験を通して、様々なシーンに対応できるリサーチャーになること、そのものがブランディング上大切だと思っています。

ー草野氏 自分のことをあまり人の役には立たないと評価してしまっている方も少なくないように感じるんですが、意外とマッチング次第ですよね。ぜひ、自分の可能性を閉じてしまわずにコミュニケーションをすすめてほしいです。

Q2.リサーチの実施目的を正しく保つためにはどうしたらよいか?

リサーチの軸がブレてしまうという経験をされた方も多いことでしょう。組織で実施する以上、統一した認識を保つのは中々に難しいものです。こちらの課題についても3つのアプローチ観点から解説いただきました。

アプローチ1:リサーチを目的化させず、品質や倫理感を保つ

意思決定上の不確実さの洗い出しとリサーチの吟味

ー瀧本氏 リサーチをするとなったならば、まず「何がわかっていないのか」を明確にするのが重要です。新規事業であれば、図にある通り「Where(市場選定)」「What(提供する製品・技術)」「How(参入タイミング)」のフェーズにわけて探ります。

もちろん、新規事業の場合はわからない部分だらけなので、一度市場に出してみるのも方法としてあります。新規事業や既存事業など、性質によってリサーチの実施有無を判断します

ちなみにスマートバンクの場合は、金融系サービスということもあり度々法的な制約などで後戻りできない選択を強いられることがあります。その際には、やはりリサーチが必要であるという判断をすることが多いです。

ー草野氏 リサーチだけでホームランを打つのはすごく難しいかもしれないけれど、明らかな失敗を早めに洗い出すことは結構できているなと感じますね。

UXの5段階モデルによる役割設定

ー菅原氏 リサーチって言葉だけで見てしまうと正直なところ、周囲からは過小評価されがちなんですよね。その中で、リサーチの目的をはっきり整理する局面においては、UXの5段階モデルがすごく向いています。

UI改善を例に挙げると施策が一番表層にあるため、小さなことだけをやっているような見え方になることがあります。ここで、UXの5段階モデルを用いることで、あくまでも今回のリサーチがどの点を目的として実施されているものかを、共通認識を持ちながら連携しやすくなります。

アプローチ2:調査目的や成果の設定方法〜「思ったものと違った」の回避

インプットとアウトプットの関係性整理

ー菅原氏 部門ごとのカルチャーに合わせてアウトプットをデザインする重要性については前段でお話ししましたが、調査の目的においてはインプットも意識いただきたいです。

調査概要をまとめる際、インプットをドキュメントに明示することはあまりされないと思いますが、何を参照してリサーチを実行しようとしているのかを整理するうえでとても大事です。

ー草野氏 確かに、調査目的や背景は企画書に書くけれども、そもそもそのトレーサビリティがどこであるかは明確にしてないことが多いですよね。記載していないからか、メンバーも結構忘れていたりもしますよね。

アプローチ3:意思決定への寄与スタイル

言語化と可視化の行き来

ー菅原氏 リサーチ後のアウトプットは、意思決定を促す相手に合わせて言語化と可視化を行き来するようにしています。言語化だけであれば、エレベーターピッチを穴埋めしていきますが、これだけでは正直、経営レベルの方の意思決定への寄与には不十分です。

そこでエレベーターピッチの先にある要素を可視化した、いわゆるプロトタイプを作ることで、経営レベルの方にもイメージを持ってもらいやすくしています。

ー瀧本氏 プロトタイプのようなものがないと、確かに議論って空中分解してしまう感覚がありますよね。文章から自分が想像しているものと、相手が想像しているものとが合致しているかをすり合わせないまま議論が進行してしまうことも多いと思います。

みんなが同じものを描きながら話すことができるという点において、意思決定へのメリットが非常に大きいですね。

ー菅原氏 逆に制作開発側の方であれば、言語化をメインにする方が良かったりします。要件定義はされているものの、思考の余白を残してほしいパターンもあるので、うまく使い分けられるといいと思います。

目標の目線を揃えて、意思決定者と対話する

ー瀧本氏 意思決定する層がメインにはなってきますが、それ以外のメンバーにおいても要所要所で目線を揃えながら対話していく試みが大切だと思います。

それぞれの目線が合っていないと、チーム内での目的も正しく保てませんし、納得感も持ちづらくなってしまうものです。ましてやリサーチで扱うものは不確実性があったり非常に複雑だったりするので、この情報処理をリサーチャーが担うのが良いと思います。

ー菅原氏 リサーチャーが思考整理のサポートを担うというのは、デザイン的アプローチでとても良いですね。

まとめ

ー草野氏 事業インパクトにつなげるリサーチ活用方法をリサーチャーの視点で菅原さん・瀧本さんに解説いただきました。様々な具体例からヒントになることも、たくさんあったかと思いますので、ぜひ明日からの行動に生かしていただけると幸いです。

以下動画では記事内でご紹介しきれなかった内容やその他寄せられたQ&Aにについても回答しています。ぜひ、合わせてご覧ください。

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この記事を書いた人
ユニーリサーチ編集室
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