リリース前に課題を見つけるユーザビリティテストの活用術!「B/43プラス」の機能開発事例に沿ってご紹介by株式会社スマートバンク×ユニーリサーチ イベントレポート
プロダクト開発において、UXデザインやUXリサーチを導入する場合にインタビューと並んで実施されることが多い、ユーザビリティテスト。実施の機会が増えてきた一方で、実際にチームで進める場合に「どのように進めれば良いのかわからない」と考える方もいらっしゃるでしょう。そこで、スマートバンクのUXリサーチャーである、瀧本はろか氏をお招きし、イベントを開催しました。本記事では「B/43プラス」の分析工程に沿って、ユーザビリティテストの活用術をご紹介します。 なお、以下から実際のイベント動画もご視聴いただけます。一部記事内で取り上げきれなかった部分もございますので、ぜひ合わせてご覧ください。 【無料】このイベントを動画で見る
スピーカー 瀧本 はろか氏 株式会社スマートバンク UXリサーチャー
ユーザービリティテストを実施した「B/43」のサービス紹介
ー瀧本氏 題材にある「B/43」は、Visaのプリペイドカードと家計簿アプリがセットになった新しい家計管理サービスです。毎月決めた予算をカードにチャージし支払いに利用することで、アプリ上にリアルタイムで利用明細が記録されて家計簿を自動作成します。Google Play ベスト オブ 2022「生活お役立ち部門」では大賞も受賞しています。 その中で今回は、「B/43プラス」というメンバーシッププランの実装に伴いユーザビリティテストを実施しました。
「B/43プラス(メンバーシッププラン)」の始動もユーザーの声から
ー瀧本氏 「B/43プラス」の機能についても、ユーザーに対するアンケートやインタビューを繰り返しサービスの仕様やUIを決定しています。従来の家計簿機能だけでは叶えられなかった、カテゴリのカスタマイズや将来の支出をあらかじめ準備する機能など、自分の生活スタイルに合わせて無理なく管理できるサポートを「B/43プラス」ではラインナップしています。 そして今回ご紹介するのが、リリースの3週間前より実施したユーザビリティテストです。
今回の調査の目的
ー瀧本氏 リリースを控えクリティカルな課題があるかを洗い出す目的でユーザビリティテストを実施しました。 この結果を踏まえリリース前に修正を実施したり、またはリリース時期を遅らせたりする判断も必要になります。そこでスマートバンクでは、リサーチャーを中心にPM・デザイナー・アプリエンジニアの4名を中心とした体制でユーザビリティテストを実施しました。
調査実施期間と流れ
ー瀧本氏 調査実施期間がリリースの3週間前からということもあり、開発中の機能もある状態でのユーザビリティテスト実施でした。 そのため、オフィスでの実機操作を伴うユーザー向けのテストにおいては実装済みの機能を対象に、開発中の機能についてはスマートバンク社員が日常使いを通してテストすることにしました。
ユーザービリティーテストの環境
ー瀧本氏 オフィスでの実機操作によるユーザビリティテスト環境は写真の通りです。オフラインでのユーザビリティテストはするものが多く、ハードルを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は社員がたまたま私物で持っていたリングライトと一般的なスマホカメラの組み合わせで撮影を行いました。 ポイントはオフライン調査の意義を最大限発揮できるよう、手元の操作と表情のどちらも録画するという点です。オンラインでも、顔の表情や実際の操作画面のミラーリングなどは可能ですが、手元の動きまでは把握しづらいので、実機操作ではぜひ手元も撮影してみてください。 なお、今回のユーザビリティテストではzoomで4名以外の社内メンバーにも同時中継しながら実施しています。
チームの役割分担
ー瀧本氏 我々はユーザビリティテストをリサーチャーだけで行い、後ほどチームに共有するという形は取っていません。他のメンバーと役割分担して実施することで、情報共有をリアルタイムに行いながらテストの結果判明した対応すべき改善点の認識を揃えていくことを狙っています。フローごとの役割分担としては次の通りです。
設計〜調査準備段階
ー瀧本氏 テストの設計時には、PMとリサーチャーでユーザビリティテストの目的を整理します。その上で、「スケジュールへの落とし込みはPMが担当」「テストの設計に関してはリサーチャーが担当」という要領で分担しました。ただ、どちらかしか担当しないというわけではなく、双方向に都度、コミュニケーションを取りながら進めているのが実情です。 併せてテスト用のプロトタイプも必要なため、デザイナーやエンジニアにもサポートをしてもらいます。なお機材準備の段階からデザイナーやエンジニアにも参加してもらうことで、テストの準備がどこまで進んでいるかといったことを共有できるように工夫しています。例えば実際のテストの当日の流れについても、ユーザーに案内するシナリオを読み合わせるなどして、できる限り具体的な手順まで共有を行いました。
実査〜分析段階
ー瀧本氏 実査については、モデレーターはリサーチャーが担当し、デザイナーやエンジニアはすぐ横に同席し、もしもの機材トラブルなどに備え待機してもらいました。 それ以外の社内メンバーについては、対象者がたくさんの目があることによって、緊張から普段通りの操作ができなくなってしまうのを避けるため、zoomでの同時中継の形式を取っています。
実査での振る舞い
ー瀧本氏 テストの様子を社内メンバーに同時中継をすることでその後の振り返りや議論が実施しやすくなります。リサーチャーが単独で調査を行なって、メンバーに録画を共有して後日調査の意見交換をするとなると、ライブだからこそ気づくことができるようなことに、気づきずらくなると考えています。 なお、実査の最中は、ユーザビリティ上の課題をリアルタイムでnotionなどのデータベースツールに書き出すようにします。加えて、課題に対しての「対応を行うのか」「対応する場合の内容や担当」まで記載していきます。
具体的な記録方法
ー瀧本氏 課題の具体的な記録は、notionに加えてFigJamなどのホワイトボードツールも利用します。ホワイトボードツールへあらかじめ操作画面の全てのキャプチャを用意し発話や気づきの付箋をつけ、データベースと紐付けすることによって振り返りをしやすくします。
実査終了後の振り返り
ー瀧本氏 ユーザビリティテストが終わった段階ですぐに修正ポイントの確認を実施します。 その際、合わせて修正ポイントの優先順位の重み付けも行います。優先順位の判断軸としては、ユーザー視点であれば発生頻度がありますが、その他にも開発における実装工数なども鑑みて実現可能かを判断します。 そして最後に修正方針を検討し施策の担当者まで決定します。これらを実査終了後に30分程度の時間を設け、とりまとめていきました。
立ち会いと直後の振り返りの重要性
ー瀧本氏 チームメンバー全員がテストに立ち会い、直後の振り返りを行うことで、実装のサイクルをショートカットすることができます。チームで一緒に進めることで、調査のまとめや共有にかかる時間を削減できるため、リサーチ完了と合わせて課題の洗い出しまでが終わっている状態に持っていけるのです。
スピーディに開発に繋げるための運営Tips
サービスのリリース直前は、最後の最後まで調整が入り日々情報がアップデートされていくと思います。そのため、少しでもスピーディに開発に繋げるためにも以下3点のTipsをぜひ意識してみてください。
1.実査の流れを全員でチェックする
ー瀧本氏 実査で対象者に実行してもらうタスクはリサーチャーだけが把握すればよいものではなく、チーム全体で理解します。タスクごとに対象者へお願いする操作をシナリオに沿って、全員で読み合わせてみてください。
2.配信環境チェックの時間を必ずとる
ー瀧本氏 配信環境のチェックもあらかじめ必ず行います。ユーザビリティテストにおいては、環境設定が非常に大切です。例えば、実機のスマートフォンの充電が切れないか、音声が拾えているか、表情や手元が確実に撮影できているか、などを確認します。
3.着手優先度や対応者についてエンジニアに連携しやすい形にする
ー瀧本氏 実査と並行して行う記録は、どのような文脈で改善をすることになったのかを的確に示すために、対象者の操作前後の発話と対応要否・内容・担当などの検討事項もセットにします。 なおその際は、notionのデータベースからfigjamを参照できるようにすることで、エンジニアやデザイナーが改善箇所をすぐに確認できるように工夫しています。
まとめ
ー瀧本氏 チームでユーザビリティテストを進める際には、調査が終了するタイミングでユーザー視点を土台に着手すべきことの優先順位や理由について共通認識を持てている状態が理想です。出てきた改善施策の担当者がすぐに着手しやすい状態を作ることで、限られた期間の中でもユーザビリティテストによって質の高い成果を生み出せるのではないでしょうか。 以下では、記事内でご紹介しきれなかった内容を含む、実際の講義動画もご覧になれます。ぜひ、合わせてご覧ください。
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