ユーザーインタビューの深掘り方法とは?心得&プロの生実演で徹底解剖by日本ウェブデザイン株式会社羽山祥樹氏
「ユーザーインタビューってどうやるんだろう?」「インタビューしているけど、深掘りできている気がしない」そんなお悩みはないでしょうか?そこで、使いやすいプロダクトを作る専門家、日本ウェブデザイン株式会社 代表取締役羽山氏をお招きし、ユーザーインタビューについての講義と生実演をしていただきました。本記事では、ユーザーインタビューを実施する前に「これだけは押さえて欲しい」という基礎のポイントを解説します。 なお、記事内では取り上げきれなかった生実演の様子は、以下よりご覧いただけます。リアルタイムでプロのインタビュー技術が見れる機会は多くありません。ぜひ合わせてご覧ください。 【無料】このイベントを動画で見る
スピーカー 羽山 祥樹氏 日本ウェブデザイン株式会社 代表取締役
ユーザーインタビューを成功させる上で重要な心得
ー羽山氏 ユーザーインタビュー初心者の中には「ユーザーに問うだけで答えを得られる」と考える方が稀にいらっしゃいます。ただ、ユーザーインタビューで得られた言葉が答えになることはまずありません。
僕が過去に経験した例で言うと、クレジットカードの利用意向に関するユーザーインタビューにおいて、ある方は「クレジットカードを使うと支払いが集約でき、家計の管理がしやすくなるため利用している」と答えました。一方で、別の方は「クレジットカードを使うと実態が見えず管理が難しくなるため利用していない」と答えたのです。
どちらも本質的なニーズは家計を上手に管理したいというものです。ところが、そのニーズが表層に出ると全く反対の意見を示しています。要するに、ユーザーインタビューの発言の表面だけを捉えていると答えには繋がらないのです。
分析なしに正しい答えは出ない
ー羽山氏 前述の通り、ユーザーインタビューを実施したからと言って、いきなり答えが出ると思わないようにしましょう。正しい答えは、ユーザーインタビューをした後に、定性分析をしっかりと行うことで手に入ります。
クレジットカードの例で言えば、答えは「使う・使わない」ではなく、「家計を上手に管理したい」です。ユーザーが何を言ったとしてもそれは、答えではありません。ぜひ、この点を意識してユーザーインタビューに臨んでください。
ユーザーインタビューの基本のテクニック
1.リサーチクエスチョンを立てる 2.ユーザーの発言だけを抽出する 3.インタビューガイドを作る |
ユーザーインタビューのテクニックは多岐にわたりますが、今回は重要な3つのポイントに絞ってご紹介します。
基本テクニック1. リサーチクエスチョンを立てる
リサーチクエスチョンとは、ユーザーインタビューを通して明らかにしたい命題を指します。リサーチクエスチョンを明確に定義せずにユーザーインタビューをしてしまうと「問いの答えは得られたものの、活かし方がわからない」といった、結果と目的がずれてしまうことがあります。
一方で、ユーザーインタビュー初心者の方は、リサーチクエスチョンの粒度が荒かったり細かすぎたりと、うまく定義できないことも多いことでしょう。その場合は以下のポイントを意識してみてください。
リサーチクエスチョンの立て方
リサーチクエスチョンは、自社が掲げる調査の目的ではなくユーザーがいる心理世界の全体を捉えるようなものとします。
例えば、資格取得用のアプリを改善する目的でユーザーインタビューを実施するとします。その際、アプリの使い心地を問う質問が思い浮かびがちです。しかし、それではユーザーから答えを得ようとするだけで、本質的なニーズに辿り着くことはできません。
このケースであれば、「資格を取得したいと思ったきっかけは何か」という、より上位にある問いを投げかけることで、プロダクトが提供すべき価値を明確にすることができます。
基本テクニック2. ユーザーの発言だけを抽出する
ー羽山氏 ユーザーインタビューで重要なことは、イエスやノーを聞くことではなく、ユーザーに豊かな発話をしてもらうことです。定性分析に使用できるのは、ユーザーの発言だけになるため、分析材料をいかに集めるのかが重要です。なお、気をつけないといけないのは、モデレーターが発言を誘導していないかという点です。
例えば、資格取得を推奨している企業に勤めている人を対象にユーザーインタビューで、資格をとったきっかけを問うとします。その際、モデレーターが「資格を取得することで報奨金が出るんですか?」とつい口にしてしまった場合、報奨金の話は分析に使用できなくなります。
これは、報奨金の話をモデレーター側からしてしまうことで、「報奨金の話をして欲しいんだな」とユーザーは感じ、誘導される形で報奨金の話を始めてしまうからです。これでは、本来聞きたい一番重要なきっかけのエピソードに辿り着けなくなってしまいます。
分析に使用できる豊かな発話をユーザーから促す方法
ー羽山氏 車がない時代にヘンリー・フォードが残したとされる名言の一つに、「もし私が顧客に何がほしいかを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬がほしい』と答えただろう。」※というものがあります。
※ヘンリー・フォードはこの発言をしていない、という説もある。
この際、リサーチャーが行うべきは「なぜ速い馬が欲しいのか」を問うことです。この問いにより、「目的地に着く前に荷物が腐る」などの意見が出たとすれば車より冷蔵庫が必要であると判断もできます。
このように、発言そのものに意味はないため、リサーチャーは発言を素直に受け取って結論に飛びついてはなりません。それに至る背景を掘り下げ次の分析フェーズに持っていくことが重要です。
基本テクニック3. インタビューガイドを作る
ー羽山氏
インタビューガイドとは、ユーザーインタビューのいわば台本のようなものです。1時間程度のユーザーインタビューでは、分析に利用できる発話を促すために「なぜ」を繰り返し深掘りをするため、問える質問の数は6〜10問程度が限界です。
そのため、インタビューガイドを細かく作り込むことで、限られた時間を有効的に活用できるようにします。
インタビューガイドの作り方
ー羽山氏
プロの調査会社のインタビューガイドは、そのまま読み上げればよいレベルで細かく書かれています。質問ごとに細かく分岐し、さながらゲームの攻略本のような体裁です。しかし、ユーザーインタビュー初心者で、緻密な設計にハードルがある場合は、6〜10問の簡易的なリスト形式のインタビューガイドを作成する形でも構いません。
リクルーティング・質問方向性の定め方
いきなりユーザーインタビューを実施すると言っても、インタビュー初心者の方は中々動きづらいことでしょう。リサーチ対象のリクルーティングや質問の方向性を定めるには様々な方法があります。今回は羽山氏が実践している2つの手段をご紹介します。
1. 簡易インタビューを実施する
ー羽山氏 ユーザーインタビューをするために、まず簡易インタビューをしてみましょう。身近に該当する人がいれば、ざっくばらんにインタビューをすることで、知見がない分野であっても、何を聞けばリサーチクエスチョンを得られるのかが見えてきます。
2. 先行研究を調べる
関連する先行研究を調べるのも有効です。簡易インタビューの結果、得られた気づきに対して、何がわかっている状況なのかを知ることができます。
また、簡易インタビューが実施できない状況であっても有効な手段です。ユーザーの生の声を聞けない環境の場合、インタビューの方向性が推測になってしまうことがあるでしょう。先行研究などであれば、どなたでもコストをかけずにインタビューの方向性を見出すことができます。
ライブでユーザーインタビューを実演
ご紹介した事前準備を踏まえて、羽山氏ご自身によるユーザーインタビュー生実演を以下からご覧いただけます。リサーチクエスチョンを「『推し活』をする人はいかにして『推し活』に熱中するようになるのか」に定め、約1時間にわたってユーザーインタビューを生実演していただきました。ぜひ、この機会にプロの深堀りテクニックに触れてみてください。
ユーザーインタビューの実施にお困りなら
ユーザーインタビュープラットフォーム「ユニーリサーチ」であれば、応募時にユーザーへ最大10問のスクリーニング設問の設定が可能です。
希望に合致しないユーザーとのマッチングを回避できることに加えて、インタビュー初心者の方であっても深堀るための下地作りにもお役立ていただけます。お支払いはインタビュー実施ごとの課金となるため、ユーザー募集は無料で何度でも実施可能です。
その他、ユーザーインタビューの実施を阻む様々な課題に対し豊富な機能でカバー。以下では、さらに詳しいサービス内容や利用事例をご紹介していますので、ぜひご覧ください。