定性調査と定量調査との違いとは?調査手法の種類や使い分け方を解説
定性調査は、インタビューや行動観察によって、日常の行動についての情報収集や商品の印象や使ってみた感想など、対象者の生の言葉や行動情報を主に収集する調査方法です。数値的な回答を得る定量調査と合わせて、市場調査の基本手法となっています。ここでは、定性調査と定量調査の違いから、調査方法の種類、どのように使い分ければよいかを解説します。
「定性調査」と「定量調査」との違いとは?
定性調査と定量調査の違いは、収集するデータの違いです。定性調査は言葉や文章、行動といった数値化できないデータ、定量調査は客観的な数字で表すことができるデータをそれぞれ収集します。 定性調査は、ユーザーの数値化できない意見や感情、行動などを調査します。人数も、1名から数十名程度を対象にすることが多く、定量調査では聞き取りきれない考えや日常の行動を深掘りして聞き出すことができます。 定量調査は、「はい/いいえ」のように調査結果を数値化しやすいように設計して調査をします。大人数に対して機械的に調査できることが特徴で、調査結果は統計学的に分析ができ、裏付けのあるデータとして用いることができます。 このように定性調査と定量調査は収集するデータが異なるため、どちらの調査方法がより目的に合っているかを見極める必要があります。
定性調査の目的と実施場面
定性調査は、対象者の感情や行動などを、言葉や文章、写真で収集します。そのため、「なぜ売れないのか」「なぜ好まれるのか」など「なぜ」を調査することに向いている調査方法です。原因把握や仮説の構築、検証などを目的としています。 例えば、自社製品の売上が伸び悩んでいるとすれば、
なぜ自社製品が売れないのか、原因把握をしたい
なぜ他社製品が好まれるのか、仮説構築をしたい
など、消費者の潜在ニーズを拾い上げたいときに効果的です。
定性調査の主な手法の種類
定性調査は、対象者と対面もしくはオンラインで実際に会話をする手法が取られることが多く、主な手法は以下の4つです。
デプスインタビュー
デプスインタビューは、1対1の対話形式で行う調査方法です。質問を重ねながら、じっくりと深掘りしていきます。1対1で話を聞くことで、他者の意見に影響されない、ユーザー個人の意見を聞くことができます。 ▼関連記事
グループインタビュー
グループインタビューでは、複数人に対してモデレーターを1人設置し、ディスカッション形式でインタビューをします。内容はモデレーターの力量に左右されますが、複数人の意見を同時に収集することができ、ユーザー同士の相互作用で新たな意見が出ることも期待できます。 ▼関連記事
エスノグラフィ(行動観察調査)
エスノグラフィはもともと、民俗学や文化人類学で用いられていた調査方法で、対象ユーザーの生活様式に長期間入り込んで調査をする手法です。マーケティングの分野では、対象ユーザーに同行し観察することで、対象者自身も無意識に行っている行動や言動を調査することができ、潜在ニーズの発見に役立ちます。
ワークショップ
複数人での共同作業の中で交わされる、会話や行動を通して調査を行う手法です。特に、自社サービスや商品を使ってワークショップを行うことで、主体的にサービス・商品について考えるため、愛着を持ってもらうきっかけにもなります。
定性調査のメリット
定性調査のメリットは、数値では表しきれない感情や行動を調査できることにあり、主に以下のようなことが挙げられます。
行動に至った経緯や背景、人となりを聞くことができる
調査したい仮説について、より深掘りすることができる
ユーザーの心理を把握することができる
新たなニーズを発見できる可能性がある
質問を重ねることで、潜在的な意見を引き出すことができる
会話の中で行われることが多く、定量調査に慣れていない担当者でも理解しやすい
定性調査のデメリットと注意点
定性調査では深掘りして意見を引き出すことができる反面、以下のようなデメリットがあります。
1回あたりのコストが大きく、大人数への調査には向かない
調査のための拘束時間が長いため、ユーザーの負担が大きい
数値情報を取得しないため、統計学的な調査結果を得たい場合は適さない
インタビューでの聞き取り内容はモデレーターのスキルに左右される
ユーザーの言動から本音を探る観察力が求められ、調査担当者の負担が大きい
上記のようなデメリットが考えられるため、適切なインタビューができるモデレーターを確保できるか、対象ユーザーの募集は可能かなど、調査を実施する前の確認が必要です。
定量調査の目的と実施場面
定量調査は、状況を数値的に把握したいときに用いられる調査方法です。仮説の検証や利用実態の把握、効果測定などを目的として用いられます。 例えば、
想定したニーズが合っているか検証したい
自社商品やサービスの認知度を調査したい
施策を経て、イメージが変わったかどうか調査したい
など、調査結果を数値的にまとめて、統計を取りたいときに有効です。
定量調査の主な手法の種類
定量調査はアンケートなど、数値として回答が得やすい手法が用いられることが多く、主な手法は以下の4つです。
インターネットアンケート(Webアンケート)
インターネット(Web)上のアンケートサイトなどでアンケートに回答してもらい、結果を収集する調査方法です。あらかじめ決定した対象者へ、アンケートサイトのURLを共有して回答を得る「クローズ型」と、公開されたWebページにアンケートを設置し、不特定多数から回答を募る「オープン型」があります。オンラインで完結するため、ユーザーにとって最も手軽で短時間で行える調査方法です。
ホームユーステスト
ホームユーステストは、商品をユーザーの家に送付し、指定した期間中に実際使用してもらい、回答を得る調査方法です。美容関連用品や健康食品などの調査でよく用いられます。ユーザーの実際の生活環境における使用感についての調査が実施できます。
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会場調査
会場調査は、対象者を特定の会場に集めて、商品を試してもらい、回答を得る調査方法です。ホームユーステストとは異なり、一定の環境を保った調査を行うことができます。また、リリース前の商品など、外部に持ち出したくないものをテストしたいときに向いています。 ホームユーステストや会場調査では、定性的な質問にも併せて回答してもらうことで、企業側で想定していなかったニーズの発見や、改良のヒントなどを得られる場合があります。
郵送調査
郵送調査は、アンケートを郵送し、返送してもらうことで回答を得る調査方法です。インターネットを普段利用しない層からも回答を得ることができ、幅広い年代のユーザーから回答を集めることができます。
定量調査のメリット
定量調査のメリットは、量・割合・金額など、数値的な回答を得ることができ、対象とする層の全体像を把握しやすいという点にあり、具体的には以下のようなことが挙げられます。
一度に大人数への調査が可能
手軽なため、対象ユーザーへの負担が少なく、データが集まりやすい
おおまかな全体像を見ることができ、世間一般の意見を把握できる
サンプル数が集まれば、統計的に裏付けのあるデータを得られる
他の分析の裏付けとして使用できる
結果を比較しやすい
定量調査のデメリットと注意点
定量調査は数値的なデータ収集に強い反面、以下のデメリットがあります。
回答の理由や、背景を深掘りできない
実施側にデータ分析のスキルが必要
仮説検証には有効だが、仮説の構築・発見には不向き
根拠のあるデータにするためには、多くのサンプル数が必要
以上のようなデメリットが考えられるため、調査を実施する際には、目的に合っているか、データ分析が可能かな体制があるかなどの確認が必要です。
定性調査と定量調査の使い分け方
定性調査と定量調査では、収集する回答に大きな違いがあるため、目的に沿った手法をとることが重要です。調査にあたって、課題は何なのか、得られた結果で何をしたいのか、調査設計時に決定しておきましょう。 【定性調査が適している場合】
商品やサービスの使用感、問題点を調査したい
仮説を立てるための意見を集めたい
コアなターゲットの意見を聞きたい
対象者にじっくりと深掘りして話を聞きたい
【定量調査が適している場合】
大衆や一般的な意見を調査したい
量、割合、金額など、数値的な調査をしたい
市場調査をしたい
客観的に証明したい
定性調査と定量調査の併用方法
定量調査と定性調査を併用することで、より詳細な調査を行うことができます。 例えば、
市場の全体像を数値で確認(定量調査)→ターゲットを明確にし、あてはまるユーザーを抜き出してインタビューを行う(定性調査)
一部のユーザーにインタビューを行い(定性調査)、意見から仮説を立てる→仮説をもとにアンケートを実施し、統計的な裏付けをとる(定量調査)
など、調査設計の時点で、目的に応じて調査手法の組み合わせ方を工夫することが重要です。
定性調査なら国内最大級のインタビュープラットフォーム『ユニーリサーチ』
ユニーリサーチは「従来のコストの10分の1以下、最短当日」でユーザーインタビューを可能にするセルフ型リサーチサービスです。定性調査の中でも特にオンラインデプスインタビューの実施に適しており、数万人規模の多様なユーザーにアプローチできるほか、事前設問によるスクリーニングで、条件のミスマッチを防止します。誰もが使いこなせるUIを意識し、「マニュアルを見なくてもインタビューまで実施できた」とのお声もいただいております。スタートアップ企業や、大企業の新規事業部門など、従来の調査サービスを利用できていなかった顧客層を中心に、ユーザーリサーチの機会提供を進めており、2024年6月時点で、登録企業2,000社、累計インタビュー数39,000件を達成しています。