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エスノグラフィとは?調査方法やマーケティングでの活用について解説

エスノグラフィとは?調査方法やマーケティングでの活用について解説

「エスノグラフィ」は、対象となるユーザーの生活様式に長期間入り込み、観察する調査方法です。もともとは民俗学や文化人類学で用いられてきた手法をマーケティングに応用しています。

対象ユーザーの普段の生活の中で行うことで、無意識にかかるバイアスの影響を軽減し、対象者自身も意識せずにとっている行動や、会話を調査することができます。そのため、潜在ニーズの発見や、ユーザーの行動の理由などを深堀りするのに適しています。

この記事では、エスノグラフィをマーケティングで活用する際の調査方法について解説します。

目次
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  1. エスノグラフィ(行動観察調査/ethnography)とは
  2. エスノグラフィとエスノグラフィーの違い(表記の違い)
  3. エスノグラフィと社会学・人類学の関係
  4. エスノグラフィの特徴
  5. エスノグラフィの目的
  6. エスノグラフィを活用した調査方法
  7. 訪問観察調査
  8. 日記調査
  9. エスノグラフィをマーケティングで活用するメリット
  10. 対象ユーザーの自然な行動を観察できる
  11. 潜在ニーズを発見できる
  12. 消費者の動機や行動原理を深掘りできる
  13. エスノグラフィ調査が向いていないケース
  14. エスノグラフィ調査の活用例
  15. 商品・サービス改善のヒント抽出
  16. 新しい利用シーンや価値提案の発見
  17. ユーザー理解の共有資料としての活用
  18. エスノグラフィ調査の基本的な方法
  19. 1. 調査設計
  20. 2. 調査対象の選定
  21. 3. 調査の実施
  22. 4. 調査結果の共有
  23. 5.調査結果の集計・分析
  24. エスノグラフィ調査結果のアウトプット形式
  25. エスノグラフィ調査時の注意点
  26. 対象ユーザーのプライバシーを守る
  27. 対象ユーザーの行動を注視する
  28. 調査結果の考察は思い込みで判断しない
  29. エスノグラフィ調査で成果が出にくくなる典型的な構造
  30. 観察結果が「発見」で止まってしまう
  31. 調査目的とアウトプットの関係が曖昧なまま進む
  32. インタビューや他の定性調査との役割整理が不十分
  33. インタビュー調査との違いと使い分け
  34. エスノグラフィ調査がおすすめの場合
  35. インタビュー調査がおすすめの場合
  36. エスノグラフィとインタビュー調査を組み合わせる調査設計例
  37. エスノグラフィ調査の対象ユーザーを探すなら『ユニーリサーチ』

エスノグラフィ(行動観察調査/ethnography)とは

「エスノグラフィ」とは、対象ユーザーと生活様式を共にすることで、ユーザーの行動や言動を直接観察する調査方法です。ユーザーの意識や行動の理由など、数字で表せないものを調査するので定性調査に当たります。

ユーザーと同じ生活様式に身を置くため、アンケートやインタビューでは把握しにくい無意識の行動や会話から、潜在的なニーズを発見しやすいという特徴があります。対象ユーザーをよく観察することで、顧客理解を深めることにもつながります。

▼「定性調査」についてのより詳しい記事はこちら

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エスノグラフィとエスノグラフィーの違い(表記の違い)

エスノグラフィについて調べていると、 「エスノグラフィ」と「エスノグラフィー」という2種類の表記を目にすることがありますが、これらが指している調査手法自体に違いはなく、表記の揺れによるものです。 もともと英語の ethnography は、日本語に訳される過程で

  • エスノグラフィ

  • エスノグラフィー

の両方が使われるようになりました。 学術分野や研究文献では「エスノグラフィー」と表記されることも多く、マーケティングやビジネスの文脈では、比較的「エスノグラフィ」と省略して表記されるケースが多く見られます。 どちらで検索しても、基本的には同じ調査手法を指していると理解して問題ありません。 本記事では、ビジネス・マーケティングの現場で一般的に用いられる表記にあわせて 「エスノグラフィ」という表記で統一しています。

エスノグラフィと社会学・人類学の関係

エスノグラフィは、人類学や文化人類学で用いられており、もともとはフィールドワークを通して他の文化を知るための方法でした。調査を通して人々の行動を現場で観察し、社会や文化をより深く理解しようというのが、文化人類学におけるエスノグラフィです。

現代ではマーケティングや消費者研究にも応用され、ユーザーの生活実態や消費行動を把握する手法として広く採用されています。

エスノグラフィの特徴

エスノグラフィの特徴は、対象ユーザーを直接観察し、同じ体験をしながら理解できることです。調査者が、対象ユーザーの生活空間や仕事場に帯同し、直接見たこと・感じたことを調査結果とします。数字や統計に頼らず、インタビューやメモを通して、対象ユーザーの感情や思考、行動を具体的に調べることができます。

エスノグラフィの目的

エスノグラフィは顧客理解を目的に行われることが多い調査です。調査中も、対象ユーザーの視点を重視し、この環境下で何を考え、どのような行動をしているかを理解することを目的としています。そのため、状況によって臨機応変に調査方針を変えられる柔軟さも重要です。

エスノグラフィを活用した調査方法

エスノグラフィを活用した調査方法は主に2種類あります。それぞれについて、解説します。

訪問観察調査

「訪問観察調査」は、調査者が対象ユーザーの自宅や職場を訪問して行う調査方法です。対象ユーザーの生活様式に入り込み、行動を共にすることで観察し、さまざまな気付きを得ることができます。

▼イベントレポート:消費者理解を深めるための「訪問調査」の実践方法

消費者理解を深める「訪問調査」意義や事前準備をプロが徹底解説by奥泉直子氏
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日記調査

「日記調査」は、対象ユーザーに日々の行動や感想を記録してもらい、その記録をもとに分析を行う方法です。調査者が直接観察することはできませんが、対象ユーザーが自ら行動を記録するため長期的な調査が可能で、時間経過による行動変化も捉えやすいのが特徴です。近年では、スマートフォンから提出できる調査もあります。

エスノグラフィをマーケティングで活用するメリット

エスノグラフィをマーケティングで活用する「エスノグラフィックマーケティング」の主なメリットを3つご紹介します。

対象ユーザーの自然な行動を観察できる

調査者が対象ユーザーの生活様式に入ることで、アンケートやインタビューでは引き出しにくい、ユーザーの本音や自然な行動を観察できます。特に、長期的に行われるエスノグラフィ調査では、ユーザーとの信頼関係を築きやすい傾向にあります。信頼を得ることで、よりリラックスした状態のユーザーを観察することができ、現実に即したデータを得やすくなります。

潜在ニーズを発見できる

エスノグラフィは、対象ユーザーを調査者が観察する形をとるため、ユーザー自身も気づいていない潜在ニーズの発見に適しています。そうした発見は、製品やサービスの開発に応用することができるため、調査結果から新しいアイディアが生まれる場合もあります。

消費者の動機や行動原理を深掘りできる

エスノグラフィは、対象ユーザーの生活や価値観、文化的な背景を観察しながら深く理解することができるため、純粋なデータ分析では得られない具体的な洞察が得られます。ユーザーが何を考え、その結果どのように行動しているのかを理解するのに適した調査といえるでしょう。

エスノグラフィ調査が向いていないケース

エスノグラフィ調査は多くの示唆を得られる一方で、すべての調査目的に適しているわけではありません。 目的や条件によっては、他の調査手法を選択した方が適切な場合もあります。

例えば、短期間で多数の意見を集めたい場合や、仮説の妥当性を数値で確認したい場合には、アンケート調査の方が効率的です。 また、調査対象となる行動が明確に定義されておらず、観察の範囲が広くなりすぎる場合も、十分な成果を得にくくなることがあります。

さらに、調査結果をすぐに施策へ反映する必要がある場合や、調査にかけられる期間・人員が限られている場合には、エスノグラフィ調査の特性が合わないことも考えられます。

このように、目的に応じて、別の調査手法を検討することも重要です。

エスノグラフィ調査の活用例

エスノグラフィ調査では得られた気づきをどのように活用するかが重要です。ここでは、マーケティングやプロダクト開発の現場で活用されることの多いアウトプット例をご紹介します。

商品・サービス改善のヒント抽出

ユーザーが実際にどのような環境で、どのような手順で商品やサービスを利用しているのかを観察することで、

  • 使いにくさ

  • 無意識に回避している行動

  • 本人も言語化していない不満

が見えてくることがあります。これらはUI改善や機能設計の見直しに活用されることが多いポイントです。

新しい利用シーンや価値提案の発見

エスノグラフィ調査では、想定していなかった使い方や代替行動が観察される場合があります。 そうした行動は、

  • 新しいターゲット設定

  • 別の価値訴求

  • 新規サービス企画

につながるヒントになることがあります。

ユーザー理解の共有資料としての活用

調査で得られた観察結果やエピソードは、社内の共通認識を揃えるための資料として活用することも多いです。

数値データだけでは伝わりにくい 「ユーザーがどんな状況で、何を考え、どのように行動しているのか」 を具体的に共有することで、関係者間の認識を揃えやすくなります。

エスノグラフィ調査の基本的な方法

ここからは、実際の調査方法について説明します。

流れとしては

  1. 調査設計

  2. 対象ユーザーの選定

  3. 調査実施

  4. 結果の共有

  5. 集計・分析

となります。それぞれについて詳しく見てみましょう。

1. 調査設計

まずは、調査設計を行います。調査の目的を具体的に設定し、目的に合った対象ユーザーはどんな人物かを検討します。また、どのようなデータを収集し、どのような分析を行うかを計画します。最終的に必要な時間を計算してスケジュールを確定します。

目的を設定する際には、仮説づくりの材料として事前にアンケート調査や、デスクトップリサーチ(WEB上で公開されている調査レポートなどからの情報収集)を行うのもおすすめです。

2. 調査対象の選定

次に、調査対象となるユーザーを選定します。選定には、専門の調査会社やオンラインサービスを利用する方法や社内メンバーの知人に声をかける方法などがあります。

ただし、知人に対する調査では、バイアスがかかってしまうことがあるため、専門の調査会社やオンラインサービスを利用して募集・選定するほうが公正な調査結果を得やすくなります。しかし、調査費用が高くなるというデメリットもあるため、全体の予算を踏まえて決定しましょう。

3. 調査の実施

いよいよ調査の実施です。実施前の準備として、調査メンバーの動きをまとめた表や、調査票、カメラなど、必要なものを用意しておきましょう。調査を実施する際は、対象ユーザーの自宅や職場に赴き、ユーザーの行動を観察します。必要に応じて音や写真、映像を記録し、気になる行動をした場合は適宜その場で理由を尋ねます。調査中は対象ユーザーの負担にならないように配慮し、行動を強制させることがないようにすることも大切です。

4. 調査結果の共有

得られた調査結果は関係するメンバー内で共有します。気になる行動や会話など、目的を達成するためのヒントになりそうな発見をまとめておくと良いでしょう。

5.調査結果の集計・分析

エスノグラフィで得られた観察データは、単純な数字ではないため、質的な分析のスキルが求められます。

分析方法としては、例えば ・収集した記録を、テーマやカテゴリーで分類し、共通する傾向を見つける ・データ全体から読み取れる行動パターンを見つける ・ほかの対象ユーザーと比較し、共通点や対立する点を見つける

などの方法があります。 得られた分析結果は、グラフなどを用いてまとめ、社内で共有します。共有したデータから、具体的なインサイトを抽出し、製品改善やサービス開発に役立てましょう。

エスノグラフィ調査結果のアウトプット形式

エスノグラフィ調査の結果は、数値データではなく、行動や発言、状況をもとにした質的な情報としてまとめられます。 そのため、アウトプットの形式も調査目的に応じて工夫されることが一般的です。

代表的なアウトプットとしては、行動観察の記録をもとにしたレポートや、ユーザーの行動パターンを整理した図表、写真や動画を用いた共有資料などがあります。これらは単なる事実の羅列だけではなく、「どのような前提や環境が行動に影響しているか」を整理した形でまとめられます。

また、調査結果はそのまま施策に落とし込むというよりも、仮説づくりや意思決定の材料として活用されるケースが多いのも特徴です。アウトプットの活用方法を事前に想定しておくことで、調査結果をより実務に活かしやすくなります。

エスノグラフィ調査時の注意点

エスノグラフィ調査を行う際は、以下の点に注意しましょう。

対象ユーザーのプライバシーを守る

エスノグラフィ調査では、対象ユーザーのプライベートな部分に関わるため、プライバシーの保護や倫理的な配慮が必要です。調査の目的や方法を十分に説明し、しっかりと同意を得てから調査を行うようにします。

また、調査中は普段の生活を阻害する行動はなるべく避け、リラックスした状態で臨んでもらえるように心がけましょう。

対象ユーザーの行動を注視する

対象ユーザーがどのような行動、言動をするのかを常に意識しましょう。例えば、ユーザーは商品購入時に自分が求める用途の商品がないとき、別の用途の商品で代用するという場合があります。そうした瞬間をしっかりと観察し、必要に応じて質問をすることで、既存商品の改善や新商品の開発につながるかもしれません。

調査結果の考察は思い込みで判断しない

調査者自身の思い込みが、情報の収集や分析に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。思い込みは調査結果の考察でも表れやすく、特定の行動や発言を過剰に一般化しようとしてしまう可能性もあります。対象ユーザー一人ひとりの生活様式や、行動、思考を考慮することが重要です。

エスノグラフィ調査で成果が出にくくなる典型的な構造

エスノグラフィ調査は、正しく設計・実施されれば多くの示唆を得られる一方で、「調査自体は行ったものの、活用につながらなかった」というケースも少なくありません。その背景には、いくつか共通した構造的な要因があります。

観察結果が「発見」で止まってしまう

エスノグラフィ調査では、印象的な行動や発言が多く得られますが、それらを「興味深い事例」として終わらせてしまうと、意思決定や施策には結びつきにくくなります。

行動の背後にある前提や文脈を整理し、「なぜその行動が起きているのか」という視点で構造化することが重要です。

調査目的とアウトプットの関係が曖昧なまま進む

調査開始時点で「どの意思決定に使うのか」「何を判断する材料にするのか」が明確でない場合、調査結果の活用先が定まらなくなる傾向があります。

結果として、調査レポートが共有されても、具体的なアクションにつながらないケースが生じます。

インタビューや他の定性調査との役割整理が不十分

エスノグラフィは万能な調査手法ではありません。行動の背景理解には適していますが、 意見の整理や評価の確認には別の手法が適する場合もあります。

他の定性調査とどのように組み合わせるかを整理しておくことで、エスノグラフィの価値をより活かしやすくなります。

インタビュー調査との違いと使い分け

インタビュー調査とエスノグラフィ調査は、どちらも質の高いデータを収集するための定性調査の手法ですが、その方法や目的にはいくつかの違いがあります。得たい情報の種類によってどちらの調査を行うかを決定しましょう。

エスノグラフィ調査がおすすめの場合

・特定の製品・サービスがどのように日常で使われているか、ユーザーの無意識な行動や価値観、背景を含めて把握したいとき、

・特定の文化や環境が行動に与えている影響を調査したいとき

・潜在的なニーズや無意識の行動パターンを発見したい場合

インタビュー調査がおすすめの場合

・あるテーマについて、ユーザーの具体的な意見や考え方を知りたいとき

・製品やサービスに対する具体的な評価や改善点を率直に聞きたいとき

・多くのユーザーを対象に調査を行いたいとき

▼「インタビュー調査についてのより詳しい記事はこちら

インタビュー調査とは?やり方と手順、手法の種類のメリット・デメリットを解説
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エスノグラフィとインタビュー調査を組み合わせる調査設計例

実務の現場では、エスノグラフィ調査とインタビュー調査を組み合わせて実施するケースも多く見られます。それぞれの特性を活かすことで、より立体的なユーザー理解が可能になります。

例えば、エスノグラフィ調査でユーザーの日常行動や利用シーンを観察し、そこで得られた気づきをもとにインタビュー調査を行うことで、行動の背景にある意図や判断基準を言語化することができます。

逆に、インタビュー調査で得られた仮説をもとに、実際の行動がどのように行われているかをエスノグラフィで確認する、という進め方も考えられます。

このように、調査手法を単独で捉えるのではなく、目的に応じて組み合わせて設計することが、ユーザーリサーチ全体の質を高めるポイントとなります。

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この記事を書いた人
ユニーリサーチ編集室
ユニーリサーチ編集室
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