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パネル調査とは?具体例やメリット・デメリット、進め方を解説

パネル調査とは?具体例やメリット・デメリット、進め方を解説

同じ対象者を継続的に追ってユーザーの意識や行動の変化を時系列で把握できる「パネル調査」は、単発調査では捉えにくい情報を継続的に把握できるのが強みです。 本記事では、パネル調査と他のアドホック調査・トラッキング調査・コホート調査との違いやメリット・デメリット、進め方や具体例などを解説します。

目次
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パネル調査とは?

「パネル調査」とは、同じ対象者(パネル)から継続的に情報を収集する調査方法です。時間の経過とともにユーザーの意識や行動がどのように変わるのかを把握できるため、ニーズの長期的な推移を見たい時や新商品の効果を確認したい時に活用されています。 例えば、新商品を発売してから1か月後、2か月後、半年後、といったタイミングでその評価や利用状況を調査することで、リピート購入の有無や満足度の変化を追いかけることができ、商品の改善点や今後のマーケティング施策を検討するための重要なデータを得ることができます。

なお、対象が消費者の場合には「消費者パネル調査」と呼ばれ、購入傾向や生活意識の変化を明らかにする調査として広く実施されています。

パネル調査の目的と指標

パネル調査の目的は、同じ対象者の意識や行動の変化を時系列で把握し、次の打ち手の判断材料にすることです。たとえば新商品の認知→試用→継続購入のどこに課題があるか、どの属性に変化が起きているかを確認します。特に重要なのは「どの指標を追うか」をあらかじめ整理することです。

例えば、認知度や購入意向、利用頻度、満足度などは多くの調査で基盤となる指標です。これらを固定して観測することで、短期的な反応だけでなく、長期的な推移を正しく評価できます。また、対象や期間に応じて「リピート率」や「ブランドイメージの変化」といった指標を選ぶことも有効です。

調査の方法と期間

パネル調査を行う際は、調査前にあらかじめ対象者(パネル)を募集しておきます。調査では、同じ質問項目を含むアンケートやインタビューを複数回にわたって行い、時間経過に伴う変化が見えるようにします。

  • 調査手法:オンライン、郵送、電話でのアンケートやインタビューなど

  • 調査頻度:月次・四半期ごと・半年ごと・年次など、目的に応じて設定

  • 調査期間:数か月~数年単位に及ぶこともある

調査期間が長期にわたるため、対象者とのコミュニケーションやインセンティブ(謝礼など)に考慮し、継続的に回答してもらう仕組みづくりが重要です。

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パネル調査と縦断調査の違いとは?他の調査方法との使い分け

パネル調査と縦断調査は混同されやすい用語で、実務では同義として扱われることもありますが、厳密には異なります。縦断調査は「時間の経過に沿って変化を観察する調査」の総称であり、その代表的な方法のひとつがパネル調査です。パネル調査は同じ対象者を繰り返し調べ、個人レベルの変化を把握できるのが特徴です。

縦断調査には、パネル調査のほかに、特定の世代や入社年など共通条件を持つ集団を追うコホート調査、毎回異なるサンプルで全体傾向や季節性の変化を確認するトレンド調査、同じ設問を繰り返し調べて市場全体の指標推移をモニタリングするトラッキング調査などがあります。なお、アドホック調査は縦断調査には含まれず、ある時点での状況を一度だけ把握する単発調査です。

目的が「同じ人の変化を丁寧に追う」のか、「社会全体の大きなトレンドを把握する」のか、「施策効果をモニターする」のか、「現時点を一度きりで確認する」のかによって、様々な種類の調査方法があります。

アドホック調査(単発調査)との違い

「アドホック調査(単発調査)」とは、その名の通り一度きりの単発での調査を指します。「アドホック(ad hoc)」は「(特定の目的に応じた)その場限りの」「暫定的な」といった意味です。 例えば、新商品発売前の市場調査や流行りのニーズを把握したいときなど、特定の時点で得られるデータが欲しい場合に利用されます。アドホック調査とパネル調査の主な違いは以下です。

  • アドホック調査:短期・単発で実施し、現時点のデータを収集する。

  • パネル調査:長期的に何度もデータを収集し、変化を追跡する。

目的が「現在のユーザー意識を知りたい」なのか、「ユーザー意識の変化や推移を中長期的に追いたい」のかによって、最適な調査手法は異なります。

トラッキング調査との違い

「トラッキング調査」とは、同一の調査内容を何度も繰り返し行う調査です。「トラッキング(Tracking)」は、「たどること」「追跡」などの意味があり、ここでは特定の対象の動きを追いかけて記録する行為を指します。 連続的に調査をする点がパネル調査と似ていますが、調査対象者を固定するかどうかが異なります。トラッキング調査では、指標(認知率、利用率など)を継続的に測定するものの、毎回同じ対象者とは限らないケースが多いです。

  • トラッキング調査:対象者は固定しない場合もある。高頻度で調査することも多い。

  • パネル調査:同じ対象者を長期間追跡する。月次など、ある程度の期間をおいて調査することが多い。

コホート調査との違い

「コホート調査」は、「ある共通の因子をもつ集団」=「コホート(cohort)」を長期で追跡する調査方法です。例えば、同じ年に大学を卒業した人々や、ある年に出生した子どもたちなど、時期や条件で区切ったグループを対象に追跡調査をします。コホート調査とパネル調査の違いは以下の通りです。

  • コホート調査:特定の因子を持つ区切られた集団を対象とし、長期的に調査する。

  • パネル調査:対象者は必ずしも特定の因子で区切る必要はなく、目的に沿って幅広く設定する。

トレンド調査との違い

トレンド調査は、各回で母集団を代表する別サンプルを抽出し、同じ質問を繰り返して全体傾向の推移を把握する調査です。毎回対象者を入れ替えるため、個人の変化は追えませんが、市場全体の普及度や意識の変化を効率的に確認できます。例えば、スマホ決済の利用率やSNSの利用動向など、社会全体の広がりや季節性の変化を知りたいときに有効です。

一方、パネル調査は同じ対象者を継続的に追うことで、「誰がどのタイミングで変わったのか」といった個人レベルの変化を把握できます。市場全体の大きなトレンドを知りたい場合はトレンド調査、施策の効果や個人の変化を丁寧に見たい場合はパネル調査が適しています。

トレンド調査とパネル調査の主な違いは以下です。

  • トレンド調査:毎回サンプルを入れ替え、全体傾向の推移を把握する。

  • パネル調査:同じ対象者を継続的に調べ、個人レベルの変化を把握する。

パネル調査の主な活用シーン

パネル調査は、同じ対象者の意識や行動を継続的に追跡できるため、マーケティングや事業戦略に幅広く活用できます。特に以下のような場面で有効です。

新商品・新規事業におけるニーズ把握

パネル調査を通じて、消費者の購買行動やニーズの変化を継続的に把握できます。新商品や新規事業の導入時には、認知度や満足度、利用意向の推移を追うことで、施策を打つタイミングやリピート購入の見込みを判断する材料として活用できます。

市場動向やトレンドの分析

商品の購入頻度や買い替えタイミング、ブランドスイッチの状況を把握することで、市場全体の動向や消費者傾向を理解できます。これにより、消費者ニーズが高まる時期に商品を投入したり、トレンドの変化に応じた施策を計画したりすることが可能です。

マーケティング戦略の改善と効果測定

パネル調査を活用すると、商品やブランドの認知度やイメージの変化を時系列で把握できます。施策の効果を確認し、訴求ポイントやターゲットの見直しに反映することで、マーケティング施策の改善にも役立ちます。継続的なデータの積み重ねにより、単発の調査では見えにくい課題や消費者の反応も把握でき、戦略判断の根拠として活用可能です。

パネル調査のメリット

パネル調査のメリット3つを解説します。

市場・消費者ニーズを時系列で把握できる

パネル調査の最大のメリットは、同じ対象者の意識・行動の変化を時系列で捉えられる点です。例えば、ある新商品の認知度や満足度が最初は低かったものの、口コミの効果で上昇していった、というような流れを具体的に把握できます。 このように連続したデータを情報収集することで、単発の調査では見えづらいトレンドや推移を分析することができます。

調査対象者を毎回募集せずに済む

アドホック調査では、調査ごとに対象者を募集する必要があります。一方、パネル調査では最初に決まった対象者に定期的に回答してもらうため、毎回の募集コストをかけずに継続することができ、効率的です。

毎回同じアンケート内容で効率的に実施できる

パネル調査では、同じまたは類似した調査票を何度も使うことが多いため、新たにアンケートを作成するコストが削減できます。調査ごとの回答結果を比較しやすく、分析しやすいのもメリットです。

パネル調査のデメリット

パネル調査のデメリット3つを解説します。

調査結果を得るまでに時間がかかる

パネル調査は、長期的なデータ収集を前提としているため、分析に必要なデータが十分に集まるまでにどうしても時間が必要になります。短期間で結果が欲しい場合には不向きな調査方法です。

調査対象者が途中で辞めることがある

パネル調査では、対象者が途中で回答を辞退するというリスクがあります。モチベーションや生活環境の変化など、さまざまな理由でのパネル離脱が起こり得ますが、対象者の数が減少するとデータの信頼性が損なわれてしまいます。そのため、インセンティブや連絡体制の整備による離脱防止の設計が重要になります。

アドホック調査などよりも時間とコストがかかる

同一対象者と長期的にコミュニケーションを取るパネル調査は、実施企業にとっても回答者にとっても負担が大きく、管理コストやインセンティブコストが多くなりやすい点もデメリットとして挙げられます。 アドホック調査では、単発の集計・分析で済みますが、パネル調査の場合は定期的な集計と対象者の管理が必要です。ただし、何度もアドホック調査を繰り返す予定がある場合は、パネル調査の方が効率的となる場合もあります。

パネルの摩耗(サンプルの脱落)要因と偏りを抑える対策方法

長期的にパネル調査を続けると、一部の回答者が離脱してしまいます。これを「パネルの摩耗(attrition)」と呼びます。主な要因には、①設問数が多く回答負担が大きい、②謝礼や連絡の方法が参加者に合わない、③引っ越しや出産などライフイベントで継続が難しくなる、④同じ設問の繰り返しによる調査疲労やモチベーションの低下、などがあります。

摩耗を抑えるためには、質問を必要最小限に絞って調査時間を短縮する、所要時間を事前に伝える、謝礼やインセンティブの内容を工夫する、結果を簡単にフィードバックして参加意欲を高めるといった工夫が有効です。 それでも離脱を完全に防ぐことは難しいため、回答の質を確保するために「この設問では3を選んでください」といったチェック質問を入れる、極端に短い回答時間を検出して除外するなどの仕組みも役立ちます。

運用面では同じ条件の参加者を追加募集したり、集計時に重み付け(ウェイト調整)を行ったりして偏りを小さくします。ウェイト調整はサンプル構成を母集団に近づける有効な方法ですが、極端にサンプルが少ない層は補正しきれないため、摩耗そのものを減らす工夫と組み合わせることが重要です。

パネル調査の活用方法

パネル調査は、同じ対象者から継続的にデータを取得できるため、施策評価や買い替え時期の算出などといった実務での活用方法があります。

施策の効果検証

施策の実施タイミングに合わせてパネル調査を行うことで、消費者の反応や行動変化を追跡できます。また、アンケートだけでは十分に深掘りできない場合は、期間終了後にインタビュー調査を追加することも有効です。追加調査によって、回答の背景や行動心理をより詳しく把握できます。

これにより、施策の効果を定量・定性の両面から評価し、次回施策への改善点を見つけやすくなります。

買い替え時期の推定

家具や家電などの耐久消費財では、買い替え予定やタイミングを定期的に聴取することで、平均的な買い替え期間の推移を把握できます。この情報は、商品開発や発売時期の計画に活用でき、マーケティング施策や販売戦略の精度向上につながります。

パネル調査の進め方

パネル調査を実施する時の進め方を解説します。

調査する目的を明確にする

パネル調査に限らず、調査を行う際には、まず「なぜ調査するのか」を明確にすることが最優先です。目的が明確であれば、調査の期間や対象、アンケート設計などを適切に行うことができます。

調査対象者と期間を設定する

目的が決まったら、どんな属性の人を、どのくらいの期間で追跡するかを決めます。年齢や性別、地域、職業、家族構成など、目的に合わせた条件を設定し、対象者を募集してパネルを作成します。 調査の期間や頻度は、製品・サービスのライフサイクルや、市場の変化スピードなどに合わせて決定しましょう。 ▼「属性」についてのより詳しい記事はこちら

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アンケートを作成、実施する

対象者と期間を設定したら、アンケートを作成し、調査を実施します。パネル調査で重要なのは、毎回のアンケートの質問を統一することです。同じ質問を繰り返すからこそ、時間経過に伴う変化を比較できるようになります。質問内容は基本的には固定し、必要に応じて新しい質問を追加しましょう。 また、回答の手間はなるべく少なくし、魅力的なインセンティブ(謝礼など)を提供することで回答率の向上を目指します。パネルの離脱を抑えて維持しながら、継続的にデータを収集していくのがパネル調査の成功のためには重要です。 ▼「アンケートの作り方」についてのより詳しい記事はこちら

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パネル調査を活用した具体例

パネル調査を活用する具体的な場面を2つ紹介します。

新商品のモニタリング

例えば、あるメーカーが新しい飲料を発売し、その評価のパネル調査を実施すると、各回で以下のような情報を収集できるでしょう。

  1. 発売直後:新商品の認知度・購入の動機・期待感など

  2. 3か月後~半年後:リピート購入率、味や価格への評価の変化

  3. 1年後:継続率や競合商品への乗り換え状況、改良の余地

このような調査で「購買意欲を左右する要素」や「徐々に離れてしまう原因」などの長期的な視点でのデータを得ることができます。

住宅に関するアンケート

住宅や不動産関連でもパネル調査は活用されます。例えば、マンション購入者を対象にした調査では、購入検討から契約、引っ越し後数年といった段階で、評価や不満点に関する情報を収集します。

  1. 契約直後:物件選びの基準、重要視する設備や立地条件

  2. 引っ越し直後:契約の決め手、物件に対する満足度

  3. 入居後1年以上:実際の住み心地、周辺環境への満足度

  4. 入居後数年:設備の老朽化やライフステージの変化による評価の変動

このようなパネル調査が、住み替えやリフォームの需要などのより深いインサイトを得るのに役立ちます。

パネル調査の注意点

パネル調査は、同じ対象者に長期間にわたってアンケートに答えてもらう形式のため、単発のアドホック調査よりも回答者の質と継続性が重要になります。ここでは、調査精度を高め、途中離脱を防ぐためのポイントを解説します。

短く答えやすい設問にする

パネル調査では、同じ対象者に繰り返し回答をお願いするため、設問の負担が蓄積しやすくなります。1問ごとに読みやすく答えやすい設問にすることで、途中で離脱するリスクを減らし回答の精度を維持できます。

  • 複雑で長い文章は避け、具体的でシンプルな表現にする

  • 回答が迷わず選べる選択肢や明確な質問文を設定する

  • 重要度の低い設問は削除し、必要な情報だけに絞る

こうした工夫により、回答者の負担を減らし、調査の信頼性を高めることができます。

調査対象者は多めに設定する

パネル調査では、期間中に一定数の回答者が離脱することを前提に、最初から余裕を持った人数を確保することが重要です。回答者が途中で減ると、分析に偏りが生じ、調査結果の精度が低下する可能性があります。

  • 属性ごとのバランスを維持するため、各層で少し多めに対象者を確保する

  • 途中離脱者への対応や謝礼のタイミングを工夫し、継続率を上げる

こうした工夫を行うことで、調査期間中でも安定した回答を確保できます。

さらに、信頼性の高いモニターパネルを持つサービスを活用すれば、より高精度なデータを得やすく、調査結果を施策や戦略に効果的に反映させることが可能です。

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