
ユーザビリティテストとは?調査のやり方や種類、評価項目について解説
WEBサイトやアプリケーションの改善のためによく用いられる「ユーザビリティテスト」は、ユーザーにとってどれだけ使いやすいかを評価するための調査手法です。この記事では、ユーザビリティテストの種類や実施方法、評価項目などについて解説します。
- ユーザビリティテストとは?
- ユーザビリティテストの目的と背景
- ユーザビリティテストを行うメリット
- ユーザビリティテストを行うデメリット
- ユーザーテストとユーザビリティテストの違い
- ヒューリスティック評価/エキスパートレビューとの違い
- ユーザビリティテストの種類
- 定性的ユーザビリティテストと定量的ユーザビリティテスト
- 観察型テスト
- アイトラッキングによる調査
- インタビューテスト
- タスクベーステスト
- アンケート調査
- 対面調査とオンライン調査
- ユーザビリティテストの評価項目と観点の例
- 操作の直感性や情報へのアクセスしやすさ
- 良質なコンテンツ
- 入力フォームの使いやすさ
- 使いやすさの指標(SUS)
- ユーザビリティテストの具体的なやり方
- 【STEP1】目的の明確化と目標、仮説の設定
- 【STEP2】テストシナリオとタスクの設定
- 【STEP3】質問事項と評価項目の作成
- 【STEP4】ユーザー募集
- 【STEP5】当日に向けた事前準備
- 【STEP6】パイロットテストの実施
- 【STEP7】テスト本番
- 【STEP8】データをまとめて評価分析・実施施策の優先度整理
- 【STEP9】改善されたか再びテストする
- ユーザビリティテストをする際の注意点
- 目的を明確にして取り組む
- 誘導するような調査をせずにデータで評価する
- 一度のテストで終わらない
- ユーザビリティテストの事例
- ユーザビリティテストには国内最大級のダイレクトリサーチサービス『ユニーリサーチ』
ユーザビリティテストとは?
「ユーザビリティテスト」とは、ユーザーが実際に製品やサービスを使用する際の「ユーザビリティ(使いやすさ)」を評価するための方法です。主にWEBサイトやアプリケーションの設計・改善に用いられ、ユーザーの行動を観察したり、意見を収集したりすることで、使用感や利便性を評価します。ユーザビリティテストによって、開発者はユーザー視点での課題を発見し、より良いサービスを提供するために役立てることができます。
ユーザビリティテストの目的と背景
ユーザビリティテストの主な目的は、製品やサービスのユーザビリティ(使いやすさ)を向上させることです。それがより良いユーザーエクスペリエンス(UX)の提供につながり、ひいてはユーザー満足度や成果の向上につながっていきます。 また、ユーザビリティ向上を目指す背景には、他社との差別化や、ユーザーによって異なる使用感や利便性に対するニーズへの適応が挙げられるでしょう。
ユーザビリティテストを行うメリット
ユーザビリティテストを行うことで、製作者だけでは気付きにくいユーザー視点での行動や心理を理解することができます。ユーザーがどのように製品を使用し、どこでつまずくかを観察することで、課題が明確になり、改善につなげることができます。 また、ユーザビリティテストの結果を社内やプロジェクト内で共有し、同じデータをもとに議論することで課題感をそろえることもできます。全員がユーザー視点を意識することで、よりユーザー中心の製品開発ができるでしょう。
ユーザビリティテストを行うデメリット
ユーザビリティテストは有効な手段ですが、いくつかのデメリットも存在します。
まず、参加者の募集や環境の準備に時間や費用がかかるため、迅速な改善を目指す場面では負担となることがあります。
また、少人数で実施することが多いため、結果が一部のユーザーの意見に偏りやすく、必ずしも全体像を正確に反映しているとは限りません。テストはオフィスや専用の会場で行われる場合が多く、実際にユーザーが自宅などで利用する状況とは異なるため、自然な使い方を十分に再現できない恐れもあります。こうした点を理解し、計画的に活用することが重要です。
ユーザーテストとユーザビリティテストの違い
「ユーザーテスト」と「ユーザビリティテスト」は似た言葉ですが、目的や実施方法に違いがあります。ユーザーテストは、製品がユーザーに受け入れられるかどうか確認するためのテストのことを言い、実際に操作できる製品やプロトタイプがないコンセプトの段階で行うこともあります。一方、ユーザビリティテストはユーザーに単に受け入れられるかどうかだけでなく、使用感や利便性を評価するためのテストであり、ユーザビリティやユーザーエクスペリエンスの向上を目指しています。 ただし、広い意味ではユーザビリティテストはユーザーテストの一部と言えますし、ユーザビリティテストと同じ意味合いで「ユーザーテスト」という言葉を用いている場合もあります。
▼「ユーザーテスト」についてのより詳しい記事はこちら

ヒューリスティック評価/エキスパートレビューとの違い
「ヒューリスティック評価」とは、ユーザビリティの専門家が「ヒューリスティックス(経験則に基づく評価基準)」に基づいてユーザビリティの課題を洗い出す手法です。「エキスパートレビュー」はそこからさらに専門家自身の経験や知識を元に幅広く課題を見つける手法です。
ヒューリスティック評価及びエキスパートレビューでは短時間で幅広い改善候補を抽出しやすいのがメリットですが、実際のユーザーの利用場面で起きるつまずきは見逃してしまう可能性があります。両方行う場合は、専門家による評価で主要な課題を早めに洗い出し、その後ユーザビリティテストで検証する、という進め方がおすすめです。
ユーザビリティテストの種類
ユーザビリティテストには、定性的なアプローチと定量的なアプローチがあります。また、具体的な調査方法も複数種類あります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、目的に応じた適切な方法を選択することが重要です。代表的なユーザビリティテストの種類について解説します。
定性的ユーザビリティテストと定量的ユーザビリティテスト
「定性的ユーザビリティテスト」は、ユーザーの行動や発言をよく観察し、定性的なデータを収集する方法です。インタビューや観察が主な手法で、ユーザーの製品を使用する際の思考プロセスや感情を深く探ることができます。 「定量的ユーザビリティテスト」は、ユーザーの行動を数値化し、統計的なデータを収集する方法です。具体的な手法としては、アイトラッキングやタスクベーステスト、アンケート調査などがあります。定量的なデータを基にした客観的な評価や比較が可能で、ユーザー行動の傾向やパターンを把握しやすくなります。
▼「定性調査と定量調査」についてのより詳しい記事はこちら


観察型テスト
「観察型テスト」は、ユーザーが実際に製品を使用する様子を観察し、自然な行動を記録する方法です。ユーザーが普段どのように製品を使っているかを知ることで、改善点を発見しやすくなります。観察者のバイアスを避けることが重要です。また、他のテストと組み合わせて行うこともできます。
アイトラッキングによる調査
「アイトラッキング」は、ユーザーの視線の動きを追跡し、どの部分に注目しているかを解析する方法です。アイトラッキングによる調査でユーザーがどの情報に興味を持っているか、視覚的な配置が適切かどうかを評価でき、WEBサイトやアプリのデザイン改善などに役立ちます。アイトラッカー(視線追跡装置)が必要で調査費用も高額になるため、手軽な調査には向いていません。
インタビューテスト
「インタビューテスト」は、ユーザーとの対面でのインタビューを通じて、使用感や意見を直接聞き取る方法です。ユーザーの生の声を聞くことで、具体的な改善点や新たなニーズを発見することができます。質問の設計や聞き取りの技術が重要です。
タスクベーステスト
「タスクベーステスト」は、あらかじめ設定した特定のタスクをユーザーに実行してもらう方法で、所要時間や成功率などの数値的な結果から課題を見つけます。タスクの設定がテストの成功に大きく影響します。
アンケート調査
「アンケート調査」は、多くのユーザーから幅広いデータを収集するための方法です。質問項目を設計し、ユーザーの評価や意見を数値化して分析します。
▼「アンケート調査」についてのより詳しい記事はこちら


対面調査とオンライン調査
ユーザビリティテストは対面で行うか、オンラインで行うかも重要な要素です。対面で行う時は、インタビュアーが直接ユーザーの反応を観察でき、詳細なフィードバックを得ることができます。一方、オンラインで行う場合は、遠方のユーザーを対象にしたテスト実施も可能ですし、ユーザーが普段生活している環境で実施することができます。
ユーザビリティテストの評価項目と観点の例
ユーザビリティテストは、評価項目を設定した上で行います。以下は、代表的な評価項目と観点の例です。
操作の直感性や情報へのアクセスしやすさ
操作の直感性や情報にスムーズにアクセスできるかどうかは、使いやすさに大きく関わる重要な評価項目です。ユーザーが迷わずに使えるシンプルで分かりやすい操作が求められます。
直感的に使いやすく、サイト内をスムーズに移動できるナビゲーションとなっているか、商品情報がわかりやすく整理されておりユーザーが知りたい情報にすぐに辿り着けるか、などが観点となるでしょう。
良質なコンテンツ
ユーザーが求める良質なコンテンツであるかも評価項目のひとつです。
可読性の高いわかりやすい構成と言葉づかいで、信頼できる情報を掲載するのはもちろん、ユーザーのニーズに合致したコンテンツとなっているかどうかも観点となるでしょう。
入力フォームの使いやすさ
入力フォームの使いやすさも大事な評価項目です。フォームが使いづらいことでユーザーが離脱してしまうこともあるため、コンバージョン率に大きく影響する要素となります。
ユーザーが入力作業をスムーズに行えるか、入力ミスやエラーの回数、入力完了までの所要時間などをチェックします。
使いやすさの指標(SUS)
SUS(System Usability Scale)は、10の短い設問に5段階で回答してもらい、決まった計算式にあてはめて0〜100点のSUSスコアで「全体としての使いやすさ」を表す指標です。観察に加えて数値の指標を併用すると、社内の判断がそろいやすくなるでしょう。
ユーザビリティテストの具体的なやり方
以下では、ユーザビリティテストの具体的なやり方について解説します。
【STEP1】目的の明確化と目標、仮説の設定
ユーザビリティテストの最初のステップは、テストの目的を明確にし、達成したい目標を設定することです。テストの方向性が明確になることで、効果的なテスト設計ができます。具体的な目標はテスト結果が良かったかどうかの評価基準にもつながります。 また、ユーザーが製品を使用する際にどう行動するか、ペルソナや過去のデータに基づいて仮説を立てることで、何を考慮してテストを行うべきかが明確になります。
【STEP2】テストシナリオとタスクの設定
どんな状況におけるユーザビリティを評価するか、調査の目的に沿って検討し、テストシナリオとタスクを設定します。例えば、自宅用のコーヒー豆を探していて(シナリオ)、3000円程度の商品を選び、クレジットカードで購入する(タスク)、といったシナリオとタスクを決め、調査時にユーザーに実行してもらいます。実際の使用環境に近い状況を設定することで、リアルなフィードバックを得ることできます。
同じ人が続けてタスクを行う場合、途中で操作に慣れて、後半のタスクの難易度の評価が甘くなることがあります。人によってタスク順を変える、似た内容を続けない、誘導的な表現を避けるの三点が基本の対策です。
【STEP3】質問事項と評価項目の作成
ユーザーの感想や評価を収集するための質問事項と評価項目を作成します。質問はこちらの仮説に誘導してしまわないよう、ユーザーに問いかける質問を中心にします。評価は数値化しやすいよう、5段階評価などで用意します。ユーザビリティのさまざまな側面について評価できるよう設計しましょう。
【STEP4】ユーザー募集
被験者となるユーザーの募集は、ユーザビリティテスト結果の信頼性を高めるために重要です。ターゲットとなるユーザー像を明確にし、適切な方法で募集を行いましょう。 募集方法としては、自社パネルや調査会社、マーケティング会社への依頼、オンラインのセルフ型リサーチサービスの活用があります。
1回のテストは5名程度を目安にすると、効率よく課題を把握しやすいとされています。ユーザー像が複数ある場合は、属性ごとに小規模で実施し、テスト→修正→再テストの短いサイクルを回すと、改善の意思決定が早まります。一度に大人数を集めるより、少人数で複数回に分けて確認する設計が実務では扱いやすいでしょう。
【STEP5】当日に向けた事前準備
事前準備として、テスト当日に必要な機材の用意や役割の担当者を決めます。以下が主に必要な準備です。
テスト機材: パソコンやタブレット、アイトラッキング装置など
インタビュアー: ユーザーの行動や反応を観察し、必要に応じて質問を行う
オブザーバー: テストの全体像を把握し、インタビュアーの補助を行う
テストガイド: シナリオやタスクの詳細、質問事項のリストなど、テストの進行をサポートする
ストップウォッチ: タスクの難易度やユーザーの効率性を評価するため、各タスクの時間を計測する
ICレコーダー: ユーザーとの会話やフィードバックを録音する
【STEP6】パイロットテストの実施
本番前にパイロットテスト(リハーサル)を行い、テストの流れや質問項目に問題がないかを確認します。テスト本番の精度を高めるため、パイロットテストの結果をもとに必要な改善を行います。
【STEP7】テスト本番
テスト本番はインタビュアーとオブザーバーが協力して進行し、必要なデータを収集します。
【STEP8】データをまとめて評価分析・実施施策の優先度整理
テスト結果をまとめて評価・分析し、実施施策の優先度を整理します。テスト中のタスク完了度合いや課題の発生頻度などデータをもとに、改善点や実施すべき施策の優先度を整理し、具体的な計画に落とし込みます。
見つかった課題は、深刻度(タスク達成への影響)と発生頻度(何人に起きたか)の二軸で整理すると、着手の順番を明確にしやすくなります。影響範囲(関係する画面・導線)や実装コストも計算し、短期・中期の改善計画に落とし込んでいきましょう。観察メモや録画の時間情報を紐づけると、メンバー内での根拠の共有がスムーズになります。
【STEP9】改善されたか再びテストする
改善施策を実施したあとは、再度ユーザビリティテストを行って効果を検証します。施策の有効性を確認し、新たな改善点を発見します。
ユーザビリティテストをする際の注意点
ユーザビリティテストを適切に行えば、ユーザーがどこで困っているのか、どんな改善が必要かを明らかにできます。ただ、やり方を間違えると正しい結果が得られず、改善につながらないこともあります。そこで、テストを行う際に注意すべき3つのポイントをご紹介します。
目的を明確にして取り組む
目的を明確にしないまま取り組まないようにしましょう。テストを始める前に、「何を知りたいのか」「どの部分を改善したいのか」をはっきりさせることが大切です。
たとえば、「購入ボタンが見つけにくいのでは?」という仮説があるなら、その部分を重点的に調べます。目的をあいまいにしたまま進めると、結局どこを改善すればいいのか分からないデータになってしまいます。明確な目的を決めてからテストに臨みましょう。
誘導するような調査をせずにデータで評価する
ユーザビリティテストでは、ユーザーが自然に行動する様子を見ることが重要です。
例えば、「このボタンを押してみてください」と先に教えてしまうと、本来の自然な行動が見えなくなります。その結果、実際には使いにくいのに「問題がなかった」と判断してしまう危険があります。テストを行う人は、あくまで観察者であり、評価はユーザーの行動データや反応に基づいて冷静に行う必要があります。
一度のテストで終わらない
1回のテストだけで「これで大丈夫」と判断するのは避けましょう。ユーザーによって感じ方や使い方は異なるため、1回だけでは偏った結果になる可能性があります。
また、改良を重ねるたびに新たな課題が出てくることも多々あります。改善を進めるごとに複数回テストを行い、ユーザーの反応を確認しましょう。すると、本当に使いやすい製品やサービスに近づけられるはずです。
ユーザビリティテストの事例
ユーザビリティテストの事例をご紹介します。
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